カッツモデルとは?スキル・構成要素・人材育成に活用する方法を紹介

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多くの企業で人材育成や人事評価に活用されている、「カッツモデル」という考え方があります。

本記事では、このカッツモデルについて、詳しく解説していきますカッツモデルとはどのような理論なのか、カッツモデルを構成する3つの階層と、マネジメント層に必要とされる3つのスキル、カッツモデルを活用する方法と、活用することで期待できる効果、さらに、「ドラッカーモデル」というカッツモデルと似た理論についても、簡単に紹介します。

 

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カッツモデルとは

カッツモデルとは、ハーバード大学教授のロバート・カッツ氏が、1955年に発表した論文「スキル・アプローチによる優秀な管理者への道(原題: Skills of an effective administrator )」のなかで提唱した理論です

それまでは、優秀なマネージャーになれるかどうかは、その人が生まれ持った才能や素質で決まると考えられていました。そのようななかでロバート・カッツ氏は、マネージャーの優秀さは「スキル」によって決まると主張したのです。

ロバート・カッツ氏は、マネージャーやリーダーに求められるスキルは「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つで、「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の階層ごとに、スキルの重要度が以下のように変化すると述べています。

 

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カッツモデルを構成する階層3

ここからは、カッツモデルの理論をより詳しく解説していきます。まずは、カッツモデルを構成するマネジメントの3つの階層「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」それぞれに、どのような人材が当てはまるのかを見ていきましょう。

トップマネジメント

トップマネジメント層には、経営者や幹部クラスが該当します。具体的には、最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)、会長、社長、副社長などのように、組織全体の方針を決めたり、最終的な意思決定を行ったりする立場の人たちです。

トップマネジメント層の主な役割は、組織全体の管理と運営です。そのため、現場に直接指示を出したり、自身が作業したりすることはあまりありません。

ミドルマネジメント

ミドルマネジメント層には、中間管理職クラスが該当します。具体的には、部長や課長、エリアマネージャー、支店長、工場長などのように、現場で業務をこなすメンバーをまとめる立場にある人たちです。

ミドルマネジメント層の主な役割は、トップマネジメント層が決定した組織の目的や目標、方針などを現場に浸透させ、これらを実現するためにメンバーをリードしていくことです。このほかに、自分が担当する範囲における意思決定の責任や、ほかの部署との調整、メンバーの動機付けや育成、評価などを行う役割も担っています。

ロワーマネジメント

ロワーマネジメント層には、監督者層が該当します。具体的には、主任や係長、チーフ、プロジェクトリーダーやチームリーダーなどのように、現場で実際に指揮をとる立場の人たちです。

ロワーマネジメント層の主な役割は、業務の管理です。ほかのメンバーを監督しつつ、マネージャー自身も業務を行います。3つ階層のなかで、最も現場に近い存在であるといえるでしょう。

カッツモデルを構成するスキル3

次に、マネジメント層に求められる3つのスキル、「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」について、詳しく解説していきます。

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルは、日本語では「概念化能力」とも呼ばれているスキルです。ロバート・カッツ氏は、コンセプチュアルスキルを「企業を総合的にとらえることができる能力」としています。

わかりやすく表すなら、企業が「最終的に目指す姿や戦略などを構築する力」といえるでしょう。もっと具体的にいうなら、組織にはさまざまな機能がありますが、それらがどのくらい相互に依存し合っているのか、そのなかの1つに変化が生じたとき、全体にどのような影響が及ぶかを正しく認識することや、自社の事業と産業、地域社会などとの関係を明確に描くことができる力が、コンセプチュアルスキルです。

コンセプチュアルスキルは、カッツモデルではトップマネジメント層において特に重要であるとされています。また、組織の将来を担うミドルマネジメント層にも、徐々に求められるようになってくるスキルです。

参考:管理職に求められる「マネジメント」、管理職が執るべき行動の在り方について – 内閣府(PDF)

コンセプチュアルスキルの構成要素

コンセプチュアルスキルの構成要素にはさまざまな定義がありますが、以下の3つは必須の要素といえるでしょう。

ロジカルシンキング

物事をモレ・重複なく体系的に整理し、筋道を立てて最適な答えを導き出す思考法。「論理的思考法」とも呼ばれる。

クリティカルシンキング

常識や前提条件を疑い、物事の本質を見極めようとする思考法。「批判的思考」とも呼ばれる。

ラテラルシンキング

既存の理論や固定観念にとらわれず、さまざまな視点から物事を見て、自由に発想を広げていくという思考法。「水平思考」とも呼ばれる。

そのほかにも、コンセプチュアルスキルには以下のような要素が含まれるとされることが多いです。

多面的視野

視野が広いということ。ただいろいろな視点から物事を見るだけではなく、多角的に分析する力も求められる。

柔軟性

状況の変化に素早く適応できることや、予期せぬ問題が発生しても臨機応変に対応・判断できるといった性質。

受容性

自分と異なる考えや価値観を受け入れることができる性質。

知的好奇心

物事に強い興味・関心を持ち、「もっと知りたい」と思う気持ち。

探究心

わからないことについて理解を深め、その本質を見極めようとする心。

応用力

すでに持っている知識やスキルを、新たな事柄や問題の解決などに役立てる力。

洞察力

物事の本質を見抜く力。目に見える表面的な部分だけでなく、その裏側にある部分までも見抜いていくことをいう。

俯瞰力

高いところから物事を見て、その全体像を捉えることができる力。主観的(自分の視点)でも客観的(第三者の視点)でもなく、フラットに全体を見る力ともいえる。

チャレンジ精神

新しいことや苦手なこと、難易度の高い問題や課題にも、積極的に挑戦しようとする姿勢。

先見性

将来の状況や、この先起こりうる出来事を予測する力。

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルは、日本語では「対人関係能力」とも呼ばれているスキルです。具体的には、チーム全員で協力できる雰囲気をつくる力や、自身と各メンバーとの間に信頼関係を構築する力、メンバー同士で良好な人間関係を構築できるようサポートする力などです。また、マネージャー自身もグループの一員として手際よく仕事をすることも、ヒューマンスキルに含まれるでしょう。簡単に表すと、「全員で協力して成果を上げられるチームをつくる力」といえるかもしれません。

ヒューマンスキルは、トップマネジメント層とロワーマネジメント層をつなぐ役割を担うミドルマネジメント層に特に求められるスキルですが、カッツモデルではすべての階層において重要とされています。

ヒューマンスキルの構成要素

ヒューマンスキルには、以下のような要素が含まれます。

コミュニケーション能力

他者と意思疎通をスムーズに行い、良好な関係を構築する力。

リーダーシップ力

周りに良い影響を与えて、メンバーをまとめて目標達成まで率いていく力。

ヒアリング能力

相手の話をしっかりと「聴く」力。相手が伝えたいことを引き出す力も含まれる。

ネゴシエーション能力

交渉や折衝をスムーズに進め、お互いが納得できる結果を導き出す力。

プレゼンテーション能力

自分のアイデアや提案をうまく説明し、相手に理解してもらう力。相手が必要としている情報を的確に伝えることが求められる。

コーチング能力

相手のやる気や能力を引き出し、自ら目標を達成できるように促すコミュニケーション技術。

ファシリテーション能力

会議やミーティングをスムーズに進める力。司会進行だけでなく、メンバーから意見を引き出したり、多様な意見をまとめ合意を形成したりすることも求められる。

向上心

より高い目標を掲げ、その達成を目指して努力する心や姿勢。

テクニカルスキル

テクニカルスキルは、日本語では「業務遂行能力」と呼ばれているスキルです。文字通り、業務を遂行するため必要になる知識やスキルのことをいいます。

テクニカルスキルは、現場でほかのメンバーとともに業務をこなすロワーマネジメント層において特に重要なスキルです。カッツモデルでは、階層が上がるほどテクニカルスキルの重要度は低くなっていきます。

テクニカルスキルの種類

テクニカルスキルは、「汎用スキル」「専門スキル」「特化スキル」の3種類に分けられます。具体的にどのようなスキルが求められるかは、業界や職種によって異なります。

汎用スキル

さまざまな職種で求められる基礎的なビジネススキル。

(例:ビジネスマナー、基本的なパソコンスキル、PDCAサイクルを回す力、ロジカルシンキング など)

専門スキル

業界や職種によって必要となる専門的な知識やスキル。

(営業職の場合:商品知識、プレゼンテーションスキル、関係構築力 など)

特化スキル

ある分野に特化した、専門スキルよりもさらにプロフェッショナル性が高いスキル。

(開発部門の場合:特定のプログラミング言語やアルゴリズム、セキュリティなどに関する深い知識)

カッツモデルの活用方法

ここまで、カッツモデルの考え方を詳しく解説してきました。では、カッツモデルは、人材育成にどのように活用することができるのでしょうか。ここからは、その方法を紹介していきます。

ステップ1:階層ごとに求めるスキルを定義する

まずは、カッツモデルをもとに、自社のマネジメント層を「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3つに分けましょう。そして、階層ごとにどのようなスキルを求めるのかを明確にします。実務面だけでなく、精神面を含めさまざまな面から細かく分析しましょう。

事業内容や文化が違えば、マネジメント層に必要なスキルも変わるはずなので、まずは自社にとって必要なスキルをしっかり定義することが大切です。そうすることで、どのような教育や研修を行うべきかが見えてきます。また、どのようなスキルが必要なのかを明確に示すことで、人事評価の納得度も高めることができるでしょう。

ステップ2:階層ごとに研修を実施する

求めるスキルを明確にできたら、それらを習得してもらうために、階層ごとに研修を行います

研修の内容は、定義したスキルによっても変わってきますが、たとえばトップマネジメント層を対象とする研修なら、経営力の向上や、「トップ」としての意識を持ってもらえるような内容とすることで、コンセプチュアルスキルを高めることができるでしょう。

ミドルマネジメント層は、トップマネジメント層と現場をつないだり、メンバーの育成や動機付けを行ったりする役割がありますので、リーダーシップやコミュニケーションスキルの向上につながる研修や、ハラスメント防止研修などがおすすめです。

メンバーとともに業務にあたるロワーマネジメント層を対象とする研修は、業務の効率や質の向上につながるような実践的な内容にすると良いでしょう。

階層ごとに、おすすめの研修テーマをまとめてみました。

トップマネジメント層
(コンセプチュアルスキル)

  • インクルージョン研修
  • ダイバーシティ研修
  • ワークライフバランス研修
  • 女性活躍推進研修
  • クリティカルシンキング研修
  • 戦略思考研修

ミドルマネジメント層
(ヒューマンスキル)

  • リーダーシップ研修
  • ラインケア研修
  • ストレスマネジメント研修
  • リーダーコミュニケーション研修
  • 交渉術・ネゴシエーション研修
  • コーチング研修
  • ハラスメントを避ける指導法研修

ロワーマネジメント層
(テクニカルスキル)

  • 業務改善研修
  • 事務作業向上研修
  • ビジネスマナー研修
  • PDCA研修
  • ビジネス文章研修

カッツモデルを活用することで得られる効果

カッツモデルを人材育成に活用することで、自社にどのようなスキルを持った人材が必要なのか、そして、現状どの部分が不足しているのかといった点が明確になります。そのため、具体的にどのような教育・研修を実施すべきか、どのようにして不足部分を補うかといった対策なども検討しやすくなるでしょう。

また、階層ごとに求めるスキルを定義することで、「求める人材」に対する経営層・人事側と現場との認識のズレも起きにくくなります。

さらに、従業員としても、企業から目指すべきマネージャー・リーダー像を明確に示してもらうことで、自分に足りない部分や、それを補うためにやるべきことを理解しやすくなります。よって、自己啓発を促す効果も期待できるでしょう。

コンセプチュアルスキルを重視した「ドラッカーモデル」とは

「マネジメントの父」と呼ばれるピーター・F・ドラッカー氏も、ビジネスに求められるスキルのモデルを提唱しています。これが、「ドラッカーモデル」と呼ばれるものです。

ドラッカーモデルでは、カッツモデルの3つの階層の下に、さらに「ナレッジワーカー(知識労働者)」という階層が追加されています。そして、カッツモデルでは階層が上がるにつれてコンセプチュアルスキルの重要度が高まっていきますが、ドラッカーモデルではこの位置に「マネジメントスキル」が置かれています。そして、コンセプチュアルスキルはすべての階層において重要なスキルとされているのが、ドラッカーモデルの大きな特徴です。目まぐるしく変化するビジネス環境に対応するために、最近はドラッカーモデルを人材育成に取り入れて、すべての従業員にコンセプチュアルスキルを習得させることに力を入れる企業も増えています。

階層ごとに求めるスキルを定義することで、自社に必要な人材や足りない部分が明確になります。効率よく、効果的な教育・研修を行うために、人材育成にカッツモデルやドラッカーモデルを活用してみてはいかがでしょうか。

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クリティカルシンキングとは?ロジカルシンキングとの関係や実践方法を紹介

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    • クリティカルシンキング

近年注目されている思考法の1つに、「クリティカルシンキング」があります。クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングを実践するためにも欠かせません。

本記事では、クリティカルシンキングとはどのような思考法なのか、ロジカルシンキングとの関係も含めて、わかりやすく解説します。さらに、クリティカルシンキングが必要とされている理由、実践するメリット、実践方法と鍛え方も紹介します。

 

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クリティカルシンキングとは

英単語のクリティカル(critical)には、「批判的な」の意味があり、クリティカルシンキングを直訳すると「批判的思考」となりますクリティカルシンキングの定義にはさまざまなものがありますが、簡単に表すと、「疑うことで物事の本質を見極め、正しい答えを導き出そうとすること」といえるでしょう。

人は、誰でも「無意識の思い込み」や「思考の癖」というものを持っています。これらに気づくことができないと、思考は限定されたものになるため、適切な答えは導き出せないでしょう。客観的に物事を分析するためには、「自分が正しいと思っていることは本当に正しいのだろうか?」と疑ってみることが大切なのです

また、現代には非常に多くの情報が溢れていますが、なかには信頼性に欠ける情報や、デタラメな情報もあります。「これは信じられる情報だろうか?」と疑うことで、正しい情報を取捨選択し、適切に物事を判断できるようになります。

さらに、クリティカルシンキングは、問題や課題の解決方法を考えるときや、新しいアイデアを生み出したいときにも役立ちます。ビジネスパーソンなら、身につけておきたい思考法です。

クリティカルシンキングとは創造的なものである

「批判的」や「疑う」と聞くと、否定したり粗探しをしたりといったイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、クリティカルシンキングにおける「批判」とは、そのように物事の欠点を探すということではありませんあらゆる前提や常識に対して、「なぜ?」「本当に?」と疑問を持ってみることを意味します

そして、疑った結果、それが間違いだとわかったら、改善案や代替案を提案するところまで行うのがクリティカルシンキングです。クリティカルシンキングは、本来は創造的なものであるため、「クリティコ・クリエイティブ・シンキング」と呼ばれることもあります。

参考:「クリティカル・シンキング実践ワークブック」(著者:中野明 出版社:秀和システム 発売:2009年)

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの関係

クリティカルシンキングと比較されることが多い思考法に、ロジカルシンキングがあります。

ロジカルシンキングとは、物事をモレ・重複なく整理して、筋道を立てて論理的に考えることをいいます。ロジカルシンキングは、ただ筋道を立てて考えるだけでなく、その筋道が適切かどうか分析・評価する必要もあるため、自分で組み立てた論理を疑う態度が欠かせません。クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングの精度を上げるための思考法ともいえます。

クリティカルシンキングにもロジカルシンキングにも多様な定義があり、2つはまったく異なる思考法だと紹介されることもありますが、分離するのは難しいのではないでしょうか。

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いや、それぞれのメリット、注意点などについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

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クリティカルシンキングが必要な理由

組織や人は、常に多くの問題や課題に悩まされています。問題や課題に直面すると、「以前このような方法で乗り越えたことがあるから、今回も同じ方法でやってみよう」と考えてしまいがちですが、ビジネス環境は目まぐるしく変化し続けており、過去の成功体験が通用しない場面も増えています。このようななかで、物事の本質を正しく見極め、柔軟な発想で解決策を見出す方法として、クリティカルシンキングが求められているのです

また、先ほどお伝えしたように、現代は多くの情報で溢れています。正しい情報を見極め、それらを客観的に分析するためにも、クリティカルシンキングは欠かせない思考法といえます。

さらに、近年はダイバーシティの推進により、年齢や性別、国籍、価値観、考え方も多様な人材と協働しなければならない場面が増えてきました。仕事を円滑に進めていくためには、他者の視点で物事を考えるスキルが欠かせません。クリティカルシンキングは、多角的な視点を養うのにも役立つため、近年特に重要視されるようになってきたのではないでしょうか。

クリティカルシンキングを実践するメリット

次に、クリティカルシンキングで物事を考えることで、どのようなメリットがあるのかを紹介してきます。

より正しい判断が下せるようになる

当たり前や常識だと思っていたことを、「本当にそうなのか?」疑ってみることで、物事を客観的にとらえられるようになります。また、その疑問を解消するためには、データや情報を集めて仮説を証明しなければなりません。クリティカルシンキングで考えることで、物事の本質を見極められるようになり、データや情報を基により適切な判断が下せるようになるでしょう。

矛盾点や不足している部分を見つけやすくなる

クリティカルシンキングは、まず「疑う」ことから始めるので、矛盾点や不足している部分を見つけやすくなります。その結果、提案された問題解決策をより良いものにできたり、リスク回避につながったりすることもあるでしょう。

新たなアイデアが生まれることがある

クリティカルシンキングで考えることで、物事を多面的にとらえられるようになります。「対応策はこれしかない」と思っていた問題や課題に対しても、違った選択肢が見つかることもあるかもしれません。クリティカルシンキングは、新たなアイデアを生み出したいときにも適している思考法です

話し合いがスムーズに進むようになる

クリティカルシンキングは、データや情報を基に答えを導き出すため、自分の意見の説得力が増します。相手に矛盾点や問題を指摘されても、感情的にならずに論理的な返しができるようになるため、話し合いや交渉も、今よりスムーズに進められるようになるでしょう

また、クリティカルシンキングで出した答えには、データや情報などの根拠があるため、相手の納得も得やすくなります。その結果として、解決策を提示してから実際に行動に移すまでのスピードも速くなることが期待できるでしょう。

クリティカルシンキングの実践方法

ここらかは、クリティカルシンキングの基本的な手順を紹介します。クリティカルシンキングは、以下の3ステップで進めていきます。

  1. 課題と目的を設定する
  2. 分析する
  3. 仮説を検討し、意思決定を行う

1つずつ、詳しく見ていきましょう。

1.課題と目的を設定する

はじめに、どのような課題に取り組むのか、何を目的にクリティカルシンキングを行うのかを明確にしましょう複数人で1つの課題に取り組むのなら、まずはこの部分をしっかり確認して、共通認識を形成することが重要です

クリティカルシンキングは、あらゆる前提を疑い、物事を多面的に考えていくので、分析を進めていくうちに本来の課題から逸れてしまったり、目的を見失ってしまったりすることがあります。はじめに課題と目的を明確にしておき、常にこれを意識しながら進めていくことが大切です。

2.分析する

次に、目的を達成するために何を分析すればよいのか、必要な要素を列挙していきます。そして、「現状分析にはSWOT分析(※)を使おう」というように、各要素をどのようなツールを使って分析するかを決めていきます。クリティカルシンキングで物事を考えられるかどうかは、この思考手順の全体設計をうまく行えるかどうかで決まるともいえます。これには、ある程度経験も必要です。

思考手順を設計できたら、各要素を決定したツールで分析していきます。もし、作業を進めるなかで、そのツールが不適切であることに気づいたら、別のツールを検討しましょう。

SWOT分析とは……外部環境と内部環境を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4つの項目に分けて整理し、現状を分析する方法。ロジカルシンキングにおいてもよく用いられるフレームワーク。

3.仮説を検討し、意思決定を行う

最後に、分析結果から仮説を立てて、その仮説が正しいのかどうかを批判的に検討していきます。もし、仮説が証明できなければ、思考手順の全体設計か、立案した仮説のどちらかが間違っているということなので、再度見直してみましょう

そして、仮説を証明できたら、何をするべきなのか、それをどのようなやり方で進めていくのかなど、具体的なアクションプランを決めていきます。決定したアクションプランを確実に実行するために、進捗管理の方法や評価基準も考えておくとよいでしょう。

参考:「図解入門ビジネスクリティカル・シンキングがよーくわかる本」(著者:今井信行 / 出版社:秀和システム / 発売:2012年)

クリティカルシンキングの鍛え方

ここからは、クリティカルシンキングを鍛える方法を紹介します。

前提を疑う癖をつける

クリティカルシンキングは、あらゆる前提や常識を「疑う」ことから始めるものです日常のなかで、自分や相手が「無意識に思い込んでいること」や「偏った見方をしていること」を見つけたら、一度疑ってみましょう

これらの見つけ方としては、「あいまいな表現を探す」という方法があります。あいまいな表現とは、たとえば「多い / 少ない」「うまくいく / うまくいかない」「急 / 不急」などが挙げられます。会話のなかでこのような表現を見つけたら、その根拠を考えてみましょう。これを積み重ねていくことで、疑う力が鍛えられます。

【あいまいな表現の例】

  • 「急に変更されても対応できないよ」
    →どのくらい前なら「急」じゃないのだろうか?
  • 「こうすれば多くの場合うまくいくよ」
    →「多く」とは具体的にどのくらいだろう?「うまくいく」とはどのような状態を指すのだろうか?

思考の癖や偏りに気づく

クリティカルシンキングもロジカルシンキングも、まずは常識や固定観念を取り払って、頭のなかをクリアにすることが重要です。これらにとらわれたままでは、正しい答えを導き出すのが難しくなります。

自分の思考の癖や偏りに気づくために、オズボーンのチェックリストという発想法を活用してみるのもおすすめです。オズボーンのチェックリストとは、アメリカの実業家、アレックス・F・オズボーン氏が生み出した発想法で、次の9つの視点からアイデアを考えていきます。

  1. 転用:別の使い道はないか?
  2. 応用:似たようなもの、真似できそうなものはないか?
  3. 変更:色や動き、様式、型などを変えることはできないか?
  4. 拡大:より大きくできないか?
  5. 縮小:より小さくできないか?
  6. 代用:ほかのもので代用することはできないか?
  7. 置換:入れ替えてみたらどうだろうか?
  8. 逆転:前後、左右、役割などを逆にしてみたらどうだろうか?
  9. 結合:組み合わせたり、混ぜてみたりするのはどうだろうか?

十分検討したうえで「答えはこれしかない」と思える場合でも、オズボーンのチェックリストに当てはめて考えると、別の答えが見つかることがあります

データや情報を重視する

クリティカルシンキングは、あらゆる前提や常識を疑い、関連するデータや情報を集めて分析して、正しい答えを導き出そうとするものです。普段から、主観的に判断するのではなく、データや情報を基に判断することを意識しましょう

そして、収集したデータや情報が「本当に正しいのか?」と疑ってみること、しっかりとウラを取ることも大切です。すべてのデータや情報を鵜呑みにせずに、正しい情報を見極めたうえで整理、分析できるようになりましょう。データや情報の整理、分類、加工、分析といったことができるようになると、より正確な判断が下せるようになります。また、現代は新しい情報が次から次に出てきますので、常に新しい情報をキャッチしようとアンテナを張っておくことも重要です。

本から学ぶ

クリティカルシンキングに関する本は非常に多く出版されているので、本から学ぶのも1つの方法です。ただ、クリティカルシンキングにはさまざまな定義があり、本に書かれているのはその著者の主張なので、批判的に読むことを意識しましょう。

【おすすめの本】

  • 「クリティカル・シンキング実践ワークブック」(著者:中野明 / 出版社:秀和システム / 発売:2009年)
  • 「図解入門ビジネスクリティカル・シンキングがよーくわかる本」(著者:今井信行 出版社:秀和システム / 発売:2012年)
  • 「改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング」(著者:グロービス経営大学院 出版社:ダイヤモンド社 / 発売:2014年)
  • 「クリティカル・リーディング入門 人文系のための読書レッスン」(著者:大出敦 / 出版社:慶應義塾大学出版会 / 発売:2015年)

【企業事例】クリティカルシンキング研修を実施した例

最近は、クリティカルシンキングを習得できる研修を提供している研修会社もあります。そのような研修を受講するのも、クリティカルシンキングを鍛える方法の1つです。最後に、株式会社IKUSAが提供する「あそぶ社員研修」を実施いただいた事例を紹介します。

  • 業種:製造業

東洋製罐株式会社様のチームビルディングを目的とした研修で、クリティカルシンキングを学べる「混乱する捜査会議からの脱出」を実施いただきました。「混乱する捜査会議からの脱出」は、チームで協力して証拠品や証言を集め、それらを整理・分析して事件の真相を究明する推理ゲームです。

当日は、ファシリテーターのフォローもあり、参加者全員が謎解きに取り組めていたようでした。参加いただいた方からは、「同期との仲が深められた」「チームで協力する大切さを学べた」などの声をいただき、研修の本来の目的であるチームビルディングも達成できたようです。当日の様子については、以下の記事で詳しく紹介しています。

また、株式会社IKUSAでは、この「混乱する捜査会議からの脱出」と、クリティカルシンキングに関する講義・グループワークを組み合わせた研修も提供しています。お気軽にお問合せください。

【クリティカルシンキングを基礎から学ぶ】あそぶ社員研修

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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2.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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3.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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4.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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まとめ

自社にとってどのようなマネージャーやリーダーが必要なのかが明確になると、人材育成の取り組みや研修の内容を検討しやすくなります。まずは自社のマネジメント層をカッツモデルの3つの階層に分け、あらゆる面から分析して、必要なスキルを定義するところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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