SL理論とは?リーダーシップの4つのスタイルと活用のポイントを解説

2024.03.09
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リーダーシップとは、簡単にいうと「組織やチームを目標達成まで導いていく力」のことです。これまでに世界中でさまざまな研究がなされ、多くのリーダーシップ理論が発表されています。

今回はそのなかから、代表的なリーダーシップ理論の1つである「SL理論」を紹介します。SL理論とはどのような考え方なのか、4つのリーダーシップスタイルと、SL理論を活用するメリットや、SL理論の問題点、活用するときのポイントについて、詳しく見ていきましょう

 

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SL理論とは

SL理論の「SL」とは、シチュエーショナル・リーダーシップ(Situational Leadership)の頭文字をとったものです。英単語の「Situational」には、「状況の」「場面の」などの意味があります。SL理論とは、状況(メンバーの成熟度)に合わせてリーダーシップのスタイルを変えることで、メンバーの能力を効果的に活用していくという理論です

詳しくはのちほど解説していますが、SL理論には「指示型リーダーシップ」「コーチ型リーダーシップ」「援助型リーダーシップ」「委任型リーダーシップ」という4つのリーダーシップのスタイルがあります。そして、状況を4つに分け、とるべきリーダーシップスタイルの変化をベル型の曲線で示しているのが大きな特徴です。

SL理論は、行動科学者のポール・ハーシー氏と、組織心理学者のケン・ブランチャード氏により、1977年に提唱されました。リーダーシップに関するテキストやビジネス書などでも紹介されることが多い、代表的なリーダーシップ理論の1つです。

条件適応理論とは

リーダーシップに関する理論にはさまざまなものがありますが、置かれた状況や環境によって発揮すべきリーダーシップのスタイルは変わるという考え方を、「条件適応理論」(または「コンティンジェンシー理論」)といいますSL理論は、この条件適応理論の1つです。

1940年代までは、リーダーになれるのは、生まれながらにして特性を持った人だけだと考えられていました(特性理論)。しかし、複数のリーダーを分析しても共通する特性を特定することはできず、1950年代以降は、リーダーは行動によってつくられるものだと考えられるようになります(行動論)。すると今度は、組織が大きく複雑になるにつれて、これまで優秀とされていたリーダーが、状況が変わるとうまくリーダーシップを発揮できなくなる現象が発生するようになりました。そして、1960年代後半からは、リーダーの行動だけでなく、状況や環境にも注目した理論が提唱されるようになっていったのです(条件適応理論)。

なお、リーダーシップとは何か、リーダーシップ研究の歴史や、代表的な理論については、以下の記事でも解説しています。

リーダーシップとは?定義や理論をわかりやすく紹介

SL理論の4つのリーダーシップスタイル

SL理論では、指示的行動と援助的行動の2軸を設けて、状況を4つに分けて考えます。そして、4つのリーダーシップスタイルを、状況に合わせて徐々に変化させながら発揮していくべきであるとしています

2つの軸】

  • 指示的行動……命令する、細かく指示を出す、チェックするなど、メンバーを監督すること。
  • 援助的行動……話を聞く、励ます、相談に乗るなど、メンバーをサポートすること。

4つの状況(メンバーの成熟度)】

S1

成熟度:低い(新入社員、他部署から異動してきた社員、新しい仕事に取り組む社員などが該当)

S2

成熟度:低~中程度(定型的な仕事には慣れてきたようなレベルが該当)

S3

成熟度:中~高程度(非定型的な仕事もある程度単独でこなせるようなレベルが該当)

S4

成熟度:高い(仕事の進め方などもほとんど任せることができるようなレベルが該当)

メンバーを育成したいときは、成熟度に合わせて、「指示型リーダーシップ → コーチ型リーダーシップ → 援助型リーダーシップ → 委任型リーダーシップ」と、徐々にリーダーシップのスタイルを変化させながら対応してきます。

では次に、その4つのリーダーシップスタイルについて、詳しく見ていきましょう。

S1:指示型リーダーシップ

メンバーの成熟度が低い場合には、指示型リーダーシップが適しています

メンバーは、まだ仕事をどのように進めていけばよいのかわからない状況ですので、リーダーは具体的な指示を与えて、細かく業務を管理します。援助的行動がまったくないわけではありませんが、圧倒的に指示的行動が多く、メンバーには応用は求めません。トップダウン型ともいえるリーダーシップスタイルです。

指示型リーダーシップは、基本的にはメンバーの成熟度が低いときに使います。しかし、緊急性が高い場面においては、一時的にS4の実力を持つメンバーに対しても、このスタイルで対応したほうがよい場合もあります

S2:コーチ型リーダーシップ

メンバーが仕事に少し慣れてきたら、指示型リーダーシップからコーチ型リーダーシップへと、徐々に対応を変化させていきます

コーチ型リーダーシップでは、基本的にはリーダーが考えや答えを用意します。そして、それを説明したあとで、メンバーからの意見や疑問を聞いて回答します。メンバーの考えを尊重して、自律的に動けるようになってもらうことを目指す段階です。コーチ型リーダーシップでは、指示的行動も援助的行動もどちらも多くなります。

コーチ型リーダーシップは、日常的な業務がこなせるようになってきた若手社員などに対して有効なリーダーシップスタイルです。しかし、業務内容や職場が変われば、成熟度も変わります。これらに変更があった場合は、S3や4の実力を持つメンバーに対しても、はじめはS2として対応したほうが、本人のストレスを減らせることもあるでしょう。

S3:援助型リーダーシップ

メンバーの成熟度がより高まり、日常的な業務以外のこともかなりこなせるようになってきたら、コーチ型リーダーシップから援助型リーダーシップへ、少しずつ対応を変えていきます

援助型リーダーシップでは、メンバーの自立的な行動を重視するため、指示的行動はかなり少なくなります。リーダーはメンバーの相談に乗ったり、サポートにまわったりすることで、メンバーの成長を促します。何かを決めるような場面でも、まずはメンバーに案を出してもらい、それをリーダーがチェックして、考えを合わせて決めていきます

S4:委任型リーダーシップ

メンバーの自立性が高まってきたら、援助型リーダーシップから委任型リーダーシップへ、徐々にスタイルを変化させていきます

委任型リーダーシップでは、業務の目的のみを共有して、やり方はすべてメンバーに任せます。この段階では、リーダーは指示的行動、援助的行動ともにかなり少なくなります。最小限のリーダーシップのみを発揮して、メンバーのひとり立ちを目指すスタイルです。

SL理論とPM理論の違い

リーダーシップに関する理論は非常に多く存在していますが、なかでもSL理論と比較されることが多いのが、「PM理論」です

PM理論は、1966年に社会心理学者の三隅二不二(みすみ じゅうじ)氏により提唱された理論です。

PM理論では、縦軸P (Performance:課題達成機能)と、横軸M(Maintenance:集団維持機能)でマトリックス化し、リーダーシップのスタイルを4つに分類しています。

P (課題達成機能)とは、リーダーが持つ「業務面の能力」のことです。たとえば、目標を設定する、その達成に向けた計画を立てる、進捗を管理するといった、成果を上げるための行動を指します。M(集団維持機能)とは、リーダーが持つ「チームの良い状態を保つ能力」のことです。たとえば、メンバーの意見を取り入れる、相談に乗る、積極的に声をかけるなど、良好な人間関係の構築につながる行動を指します。

4つのリーダーシップのスタイルは、アルファベットが大文字であればその機能が高く、小文字であれば低いことを示しています

  • PM型:理想的なリーダー。メンバーをまとめ、全員で成果を上げることができる。
  • Pm型:成果型のリーダー。成果は上げられるが、メンバーをうまくまとめられない。
  • pM型:チームワークを重視するリーダー。メンバーをまとめることはできるが、なかなか成果につながらない。
  • pm型:未熟なリーダー。成果を上げることも、メンバーをまとめることも苦手。

先ほど、リーダーシップ研究の歴史を簡単にご紹介しましたが、PM理論はリーダーの行動に着目した「行動論」の1つです。一方、SL理論は、リーダーが置かれた状況にも注目した「条件適応理論」に含まれます

また、PM理論では「PM型」を理想的なリーダーとし、リーダーは基本的にはこれを目指すべきとしています。一方、SL理論は、最適なリーダーシップのスタイルは状況によって変わるとしており、ベル型の曲線が示すように、4つのリーダーシップスタイルを徐々に変化させていくべきとしています。

マトリックス図でリーダーシップのスタイルを4つに分類しているという点は似ていますが、この2つはまったく異なる理論です。なお、PM理論については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

PM理論とは?リーダーシップ理論の内容・活用方法を紹介

SL理論を活用するメリット

SL理論は、メンバーの成熟度に合わせて、指示の出し方や援助の仕方を変えます。そのため、メンバーの成長度合いに合わせたマネジメントが行えるようになるため、メンバーの能力が向上しやすいというメリットがあります。人材育成に活用する場合は、「指示型リーダーシップ → コーチ型リーダーシップ → 援助型リーダーシップ → 委任型リーダーシップ」と順に少しずつ対応を変えていくことで、メンバーを着実に成長させることができるでしょう。

ただ、これにも例外はあります。先ほどお伝えしたように、緊急性が高い場面や、業務内容や職場が変わったばかりのメンバーに対しては、S1もしくはS2として対応するのが望ましい場合もありますSL理論を活用するときは、メンバーの成熟度以外の状況、環境などにも意識を向けるようにしましょう。

また、SL理論を活用して、メンバーそれぞれに合わせた対応をとることで、メンバーは「リーダーは自分のことを理解してくれている」と感じられるようになります。その結果として、メンバーの仕事に対するモチベーションやエンゲージメントの向上、さらには生産性の向上も期待できるかもしれません。

SL理論の問題点

リーダーシップに関する多くのテキストやビジネス書などで紹介されているSL理論ですが、実は根拠の乏しさが指摘されている理論でもあります

SL理論の提唱者の一人であるポール・ハーシー氏の代表的な著作、「Management of Organizational BehaviorUtilizaing Human Resources」では、重版されるごとに加筆修正が施されるなど、改変も非常に多い理論なのです。SL理論の大きな特徴であるベル型の曲線も、最初からあったわけではありません。これが登場したのは、上記著作の3版からでした。また、曲線が滑らかなカーブではなく、ベル型という独特な形をしているため、妥当性の検証も難しいといわれています。

参考:SL理論の妥当性の再検証(名古屋大学 犬塚 篤)|J-STAGE(PDF)

SL理論を活用するときのポイント

最後に、SL理論を活用するときのポイントを紹介します。

メンバーの成熟度を正しく判定する

SL理論は、状況(メンバーの成熟度)に合わせてリーダーシップのスタイルを変えていくものなので、メンバーの成熟度をどれだけ正しく判定できるかで、効果的に活用できるかどうかが変わってきます。そして、これを誰が評価するのかという点も、問題点として指摘されています。おそらく、リーダー自身が評価することが多くなるでしょう。メンバーを評価する際は、できるだけ主観が入らないように注意してください。

また、成熟度は「担当業務の範囲でどのレベルに該当するか」で判定するのもポイントです。たとえば、任されている業務はスキルレベルS2程度の内容であっても、その範囲においては不測の事態にも対応できるような場合は、S2として対応すると、「そんなに細かく指示を出してくれなくても、わかっているよ」と、メンバーが不快に感じてしまうことがあります。このような場合は、メンバーのスキルレベルとしてはS2かもしれませんが、もう少し指示的行動を減らして援助的行動を増やしたほうが、成長を促すことができるでしょう。逆に、レベルS4相当のスキルを持つ人でも、業務が変わればS2の対応が必要になることもあります

そして、単に業務がこなせるというだけでなく、高い目標を設定しようとする姿勢や、責任を持つ意思と能力なども重視するようにしましょう。

メンバーと信頼関係を構築する

メンバーの成熟度を正しく判定するためには、リーダーがメンバーのことをきちんと理解している必要があります。これには、日々のコミュニケーションが欠かせません。メンバーの育成や相互理解の促進、ストレスケアなどのために、定期的に1on1ミーティングや面談を実施している企業もあるでしょう。しかし、このような機会を設けても、信頼関係が築けていなければ、メンバーは本音で話すことができません。日頃からリーダーのほうから積極的にコミュニケーションをとることを心がけましょう

リーダーシップスタイルは徐々に変化させる

先ほど紹介した図のとおり、SL理論では、リーダーシップスタイルの変化がベル型の曲線で示されています。急にスタイルを変えるのではなく、指示的行動と援助的行動のバランスを少しずつ変化させていくのがポイントです

リーダーには無理なく実践させる

SL理論を活用するとなると、リーダーはメンバーごとに対応を変えなければならなくなります。これを、自分の業務もこなしながら行わなくてはならないため、負担が大きくなる可能性が考えられます。キャパオーバーになってしまえば、業務に影響が出たり、体調を崩してしまったりすることもあるかもしれません。

はじめからSL理論のすべてを活用するのではなく、リーダーにはSL理論というものを知ってもらったうえで、可能な範囲でメンバーに合わせた対応を意識してみてもらう程度でよいのではないでしょうか

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まとめ

リーダーシップの条件適応理論の1つ、SL理論について解説しました。メンバーの成熟度に合わせて、4つのリーダーシップのスタイルを少しずつ変えていくことで、メンバーを着実に成長させていくことができるでしょう。ただ、一時的にS1S2の対応が求められることもありますので、状況に応じて対応できるようになることが重要です。

SL理論を有効に活用できるかどうかは、メンバーの成熟度を正しく見極められるかどうかで変わってくるといっても過言ではありません。メンバーを評価する際は、主観が入らないように注意し、担当業務の範囲内におけるレベルを見極めるようにしましょう。

参考:「図解入門ビジネス最新リーダーシップの基本と実践がよーくわかる本」(著者:杉山浩一 / 出版社:秀和システム / 発売:2009年)

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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