組織開発とは?進め方や役立つ手法・フレームワークを紹介

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近年、日本企業の間で「組織開発」という概念が注目を集めています。人材開発に加えて、組織開発で組織全体にアプローチしていくことで、時代の変化にも負けない強い組織をつくることができるでしょう。

本記事では、まず組織開発とは何かについて、人材開発との違いも交えてわかりやすく解説します。そして、組織開発が必要とされる理由、具体的な進め方、組織開発に役立つ手法・フレームワークも紹介します。

 

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組織開発とは

組織開発にはさまざまな定義がありますが、簡単にいうと、組織の効果や健全性をより高めるための働きかけ、またはその手法や理論のことです英語では「Organization Development」と呼ばれているもので、これを略して「OD」と表現されることもあります。組織開発は、アメリカで誕生し、NTLNational Training Laboratories)を中心に発展してきた概念です。

組織開発は、組織をより良いものに変えていくための取り組みであり、組織全体を介入の対象とするものですが、常に組織全体に働きかけるのではありません。職場、部門、企業など、状況に応じてさまざまな範囲を対象とし、働きかける側面も、制度、仕組み、メンバーの関係性、風土など多岐に渡ります。

具体的な進め方はのちほど詳しく紹介していますが、まずは組織の現状を可視化し、組織のメンバー同士で課題やありたい姿について話し合って、何をしていくのかを決めていきます

組織開発と人材開発の違い

人材開発とは、その名のとおり個人の能力を開発することをいいます。企業であれば、社員一人ひとりに最大限に能力を発揮できるようになってもらうために、教育を行ったり、キャリアを支援したりします。英語では「Human Resource Development」と呼ばれるもので、これを略して「HRD」と表現されることもあります

組織開発と人材開発は、どちらも組織をより良くして成長させることを目的としたものですが、対象範囲が異なります。人材開発の対象は、個人です。一方、組織開発は、組織全体を対象とします。しかし、前項でもお伝えしたように、常に組織全体に働きかけるわけではありません。人間関係的な問題に働きかける場合でも、個人を対象にすることもあれば、個人間やグループ、グループ間といった範囲を対象とすることもあります

参考:組織開発(OD)とは何か?(中山和彦) – 南山大学機関リポジトリ

 

 

組織開発

人材開発

アプローチの例

改善活動、オフサイトミーティングなど

教育、キャリア支援など

アプローチの対象

さまざまな範囲を対象とする

個人

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組織開発が必要とされる背景

かつて、日本では「ODブーム」と呼ばれるほど組織開発が注目されていた時代がありました。その後、ブームはいったん落ち着きましたが、近年再び組織開発が求められるようになってきています。なぜ、日本企業において組織開発が再注目されるようになったのでしょうか。その背景には、大きく3つの理由があると考えられます。

ビジネス環境の変化

現代は「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれるほど、あらゆるものが速いスピードで変化し続けています。「VUCA」は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの英単語の頭文字を取った造語で、環境が目まぐるしく変わり、将来の予測が困難である状況を意味しています。

変化し続けるビジネス環境に対応し、激しい競争を勝ち抜いていくためには、組織やチーム単位で素早く考え、行動を決定する必要があります。そのため、個人ではなく組織全体に働きかける組織開発が注目されているのです。

また、ICTの発展や働き方の多様化により直接コミュニケーションをとる機会が減ったことや、成果主義の導入により、昔に比べると社員同士の関係も希薄になりつつあるといわれています。そのため、コミュニケーションを活性化させるための手段としても、組織開発が注目されるようになっているのではないでしょうか。

働く人の価値観の多様化

グローバル化や女性の活躍推進、働き方の多様化などにより、企業に年齢や性別、人種、国籍、障害の有無、価値観、キャリアに対する考え方などもさまざまな人材が集まるようになりました。多様な人材を受け入れ、一人ひとりが持てる力を最大限に発揮できるような社会の実現を目指す「ダイバーシティ&インクルージョン」に取り組む企業も増えています

しかし、従来のような画一的な視点での組織運営や人材育成では、これを実現するのが難しい部分があります。ダイバーシティ&インクルージョンを実現するには、社員全員を企業が求める一定のレベルまで引き上げるのではなく、一人ひとりの強みを伸ばし、それを十分に発揮できるような環境を整える必要があります。同じ形のブロックを積み上げていくのではなく、大きさも形も異なるブロックを上手に組み合わせていくようなイメージで、強い組織をつくっていくのが、ダイバーシティ&インクルージョンといえるでしょう。組織開発は、これを促進するためのアプローチ方法としても注目されています

人材の獲得競争の激化

少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口が減少しており、人手不足が深刻な課題となっています。また、働く人のニーズも多様化しており、給与や条件よりも「やりがいを感じられるか」「成長できるか」という点を重視する人も増えています。ウォンテッドリー株式会社が2022年に実施した「コロナ禍における転職と副業に関する調査」では、転職時に重視する項目として最も多いのが「仕事内容のやりがい」(60%)、次いで「自己成長」(46%)という結果が出ています。

参考:ウォンテッドリー、コロナ禍の転職と副業に関する調査結果を発表 | Wantedly

人材の獲得競争が激化するなかで、企業が求める人材を採用するためには、人材に「選ばれる」企業になる必要があります。働く人が魅力を感じるような、強く、明るい組織をつくるためのアプローチ方法として、組織開発が注目されているのです

組織開発の進め方

組織開発の手順をおおまかにまとめると、次のような流れになります。

1つずつ、詳しく見てみましょう。

1.目的や方針を明確にする

まずは、何の目的のために組織開発に取り組むのか、どのように取り組んでいくのかなどを明確にして、関係者との間で合意します関係者とは、社内外のコンサルタントやプロジェクトオーナー、事務局などです。

2.現状把握と対話

次に、現状を把握するために、アンケート調査やヒアリングなどにより、事実ベースの情報を集めます。そして、得られたデータを分析し、その結果について関係者間で話し合い、問題点や課題を明確にしていきます。これが「診断型組織開発」と呼ばれる手法です。まずリサーチを行うことで、組織の現状を幅広く客観的に把握できます。また、アクションを実行した後に、効果を測定しやすいというメリットもあります。

または、組織開発には、現状把握を目的としたリサーチを行わない「対話型組織開発」という手法もあります。参加者同士で対話を繰り返し、現状把握と課題、組織のありたい姿を明確にしていくというものです。「対話型組織開発」は、ゴールがわかりにくい、成果を測定しにくいというデメリットはありますが、深い対話が行われやすく、参加者がモチベーションも維持しやすいという特徴があります。近年特に注目されているのは、この「対話型組織開発」です。

3.アクションプランを策定し、実行する

次に、目指す組織像を明確にして、その実現に向けたアクションプランを立てていきます。ここで、具体的な目標(組織開発を行った結果としてどのような成果を得たいか)も設定しましょう。

企業の存続のためには、ビジネス成果を生み出さなければなりませんが、組織や人の成長なくして、ビジネス成果は生まれません。そのため、目標は「組織や人」と「ビジネス」の2つの軸で考えることが重要です。

組織の課題や取り組む部署によって目標は変わってきますが、たとえば「組織や人」であれば、「社員に主体的に行動できるようになってもらう」「企業理念やビジョンを浸透させる」など、「ビジネス」であれば、「売上を向上させる」(営業)、「商品開発のコストを削減する」(開発)などが挙げられます。目標が決まったら、それを達成するために誰が何をするのか、具体的な計画に落とし込んでいきましょう

アクションプランが固まったら、計画どおりに実行します。

4.効果検証、終結

計画を実行した後は、目的や目標を達成できたかどうか、組織開発の効果を検証します。このとき、定量と定性の両側面から評価することが重要です。

目的や目標を達成できた場合は、組織開発としては終結となりますが、活動はその後も続けていきます。未達成の場合は、1つ前のステップに戻り、目標やアクションプランを見直し、再度実行することになります。

組織開発に役立つ手法・フレームワーク

組織開発に役立つ手法やフレームワークとしては、次のようなものがあります。

  • サーベイ・フィードバック
  • AIAppreciative Inquiry
  • ミッション・ビジョン・バリュー
  • コーチング
  • フューチャーサーチ
  • ワールドカフェ

1つずつ、詳しく見てみましょう。

サーベイ・フィードバック

サーベイ・フィードバックとは、メンバーを対象にした調査を実施し、その結果を管理者やメンバー本人にフィードバックして、組織を改善していくというものです。調査の具体例としては、従業員満足度調査や、エンゲージメントサーベイなどが挙げられます。

調査を行うことで、組織や人の状態が可視化され、現在の課題が見えてきます。得られた結果を経営層や人事部だけで利用するのではなく、現場にフィードバックすることで、メンバーも主体的に解決策を立案するようになり、組織の活性化が期待できます

サーベイ・フィードバックは、「診断型組織開発」の代表的なアプローチ方法です。

AIAppreciative Inquiry

AIとは、アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)の略称ですポジティブな問いにより、個人や組織の真価や強みを発見し、それらを最大限に活用できる仕組みを生み出そうとすることをいいます。

AIでは、まず何について話し合うのか(アファーマティブ・トピック)を決めてから、次の4ステップで対話を進め、可能性を広げていきます。これを、「4Dプロセス」といいます。

  1. 発見(Discover)……過去や現在について話し合い、成功体験などから個人や組織の強み、価値を見つけ、共有する。
  2. 夢(Dream)……発見(Discover)で共有した内容をもとに、組織のありたい姿を描く。
  3. 設計(Design)……夢(Dream)に向かって何をするかをデザインする。
  4. 実行(Destiny)……設計(Design)に基づき、実行する。一度実行しただけで終わらずに、持続的に取り組む。

AIは、「対話型組織開発」の代表的なアプローチ方法です。

ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション・ビジョン・バリューとは、企業理念を構成する3つの要素のことです。それぞれの頭文字を取って「MVV」と表現されることもあります。

  • ミッション(Mission)……企業の使命や存在意義、そのビジネスを行う理由など。
  • ビジョン(Vision)……企業が将来あるべき姿、中長期的な目標。
  • バリュー(Value)……ミッションやビジョンを達成するためにとる行動、大切にする価値観など。

5W1Hで表すなら、ミッションは「Why(なぜ、それをするのか)」、ビジョンは「What(何を実現したいのか)」、バリューは「How(どのように達成するのか)」にあたります。

この3つを策定することで、メンバーの取るべき行動が明確になり、組織として一体感が生まれます

コーチング

コーチングとは、対話により相手の可能性や能力を引き出し、相手が自ら目標を達成できるようにサポートするコミュニケーションの取り方のことです。企業においては、人材育成の手法として広く用いられています。部下を育成する際、答えを教えたり、具体的なアドバイスを与えたりするのではなく、部下の話にしっかりと耳を傾け、適切に質問を投げかけたりすることで、自己成長を促します

コーチングを行うことで、上司と部下の間に信頼関係が構築されます。コミュニケーションが活性化し、業務がより円滑に進むようになるでしょう。また、コーチングにより部下の自発性や自律性を引き出せるので、リーダーシップの開発にもつながります。

チームとしてまとまりがない、メンバーの当事者意識が低いというような課題は、メンバー個人の協調性や信頼性、リーダーシップなどが不足していることが原因である可能性が考えられます。これらを解決し、組織を活性化させる方法としても、コーチングは注目されています

フューチャーサーチ

フューチャーサーチとは、あるテーマに関係するステークホルダーが一堂に会して、より良い未来について話し合うというものです。このように、できるだけ多くの関係者を集めて行われる大規模な対話を、ホールシステム・アプローチといいます。フューチャーサーチは、このホールシステム・アプローチの代表的な手法の1つです。

流れを簡単に説明すると、まず参加者全員で過去と現在を広い視点から捉え直し、状況を共有します。そのうえで理想的な未来を描き、共通の価値観を明確化して、参加者の自己責任でアクションプランを作成していきます。この流れを、一般的には3日間程度かけて行います。全体の参加者は6070名ほどで、8名ほどのグループに分かれて話し合いが進められることが多いです。

利害関係の異なるステークホルダーを一堂に集めて話し合いを行うことで、多様な視点からテーマ全体を把握できるようになります

ワールドカフェ

ワールドカフェとは、カフェのようにリラックスできる雰囲気のなかで、少人数のグループに分かれて、自由な対話を行うことをいいます。ワールドカフェも、ホールシステム・アプローチの代表的な手法の1つです。

少人数で、いつもと違う雰囲気のなかで話し合うことで、参加者は自分の本音を話しやすくなります。参加者同士の相互理解も深まり、つながりの強化も期待できます。また、少人数で話し合うため、一人ひとりの発言の機会が多く、意見交換や知識の共有が活発に行えるという点もメリットです。途中でメンバーをシャッフルすることで、より多くの意見や知識を集めることができます。

ワールドカフェは、23時間程度あれば実施できます。参加人数は16人以上が望ましいとされており、1つのグループは4人程度が目安です。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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まとめ

組織開発とは、組織の効果や健全性を高めるために、組織全体に働きかけることをいいます。ただ、常に組織全体に働きかけるのではなく、課題や状況に応じてさまざまな範囲を対象とします。

一度はブームが落ち着いた組織開発ですが、近年は環境の変化に強い組織をつくるため、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するため、採用力を強化するためのアプローチ方法として、再注目されるようになっています。本記事で基本的な進め方は紹介しましたが、組織開発にはさまざまな手法があるため、外部の専門家の力を借りながら進めていくケースが多いです。社内に組織開発の経験者がいない場合は、まずはコンサルタントなどに相談されることをおすすめします。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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