行動変容とは?ステージモデル・アプローチ方法・ポイントを紹介

  • 組織・人材開発

研修後の受講者の満足度が高くても、その後の「行動変容」につながっていないようであれば、それは「良い研修」とはいえません。

本記事では、まず行動変容の意味や、行動変容が難しい理由を紹介します。そして、「行動変容ステージモデル」という理論や、社員の行動変容を促すアプローチ方法、行動変容を実現するポイント、行動変容を計測する方法についても、わかりやすく解説します。

 

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行動変容とは

行動変容とは、文字どおり人の行動が変わることを意味しますビジネスシーンでは、人材育成において使われることが多い言葉です。

人材育成における行動変容とは、研修や教育を行った後に、育成対象の社員の行動に変化が現れることを指します。ただ、研修や教育を行った直後だけ行動が変わるのは、行動変容とはいいません。行動変容とは、行動を変えて、それを習慣的にできるようになることです。

研修や教育を通して知識やスキル、ノウハウを伝えても、その後社員の行動が変わらなければ、成長は期待できません。研修や教育を行う際は、「社員の行動変容」を目的として、実施した後に「どのような行動をとれるようになってほしいのか」を明確にしたうえで、プログラムを設計することが大切です。

行動変容を妨げる2つのバイアス

これまでの習慣を変えるのは決して簡単なことではありません。なぜならば、私たちは誰しも、「現状維持バイアス」と「同調バイアス」というものを持っているからです。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、変化するよりも現状を維持しようとする傾向のことです人は、「得をすること」よりも「損をしないこと」を重視しがちだといわれています。そのため、「損をするかもしれないから、何もしないほうが安全だ」「損をしたくないから、何も変えたくない」という気持ちになりやすいのです。また、これまで続けてきたことに対しての安心感や信頼から、なかなか行動を変えられないという場合もあるでしょう。

この現状維持バイアスを外すためには、まず現状維持バイアスというものの存在を、社員に知ってもらわなければなりません。現状維持バイアスとは何か、現状維持のままだとどんなデメリットがあるのか、逆に現状を打破することでどんなメリットがあるのかを、社員に伝えてみましょう。

同調バイアス

同調バイアスとは、周りに合わせて、自分も他の人と同じ行動をとってしまう心理のことです。協調性につながるため、悪いことばかりではありませんが、この同調バイアスによって、社員の成長が阻害されることがあります。たとえば、

  • 行動を変えたいと思っているが、周りの反応が気になってできない
  • 研修後に行動を変えたら周りにそのことを指摘され、居心地が悪くなり元の自分に戻ってしまう

というようなケースです。

個人差はあるものの、このような同調バイアスは誰のなかにもあります。そのため、社員の行動変容を実現するためには、周囲の協力が欠かせません。上司や同僚、チームメンバーなどにも人材育成の目的を共有して、社員が「変わりたい」という気持ちのままに行動できる雰囲気をつくることが大切です。

 

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行動変容ステージモデルとは

人の行動はいきなり変わるものではなく、以下の5つの段階を経て変化していくとされています。これが、「行動変容ステージモデル」と呼ばれるものです。

この「行動変容ステージモデル」は、1980年代前半に、禁煙の研究から生まれた健康理論ですが、人材育成にも当てはまるといえます。人の行動はどのように変わっていくのか、行動を変えるためにどのような働きかけが必要なのか、それぞれの段階を詳しく見ていきましょう。

1.無関心期

無関心期は、6ヵ月以内に行動を変えようと思っていない状態です。何が問題なのか気づいていない、または、気づいてはいるものの興味がありません。行動はしたけれど、失敗してくじけてしまった場合も、無関心期に含まれます。

この時期の働きかけとしては、現状のままだとどのようなリスクがあるのか、行動を変えることのメリット、会社として期待していることなどを伝えると、社員の「変えたい」という気持ちや意欲を引き出すことができるでしょう。

2.関心期

関心期は、6ヵ月以内に行動を変えたいと思ってはいるものの、まだ行動には移せていない状態です。具体的に何をすべきかわからない、または、行動することでデメリットが生じないか不安に感じているような場合です。

本人は課題を認識できており、行動を変える意思もありますので、現実的に取り組むことが可能な計画を用意してあげることで、モチベーションを引き出すことができるでしょう。また、行動を変えない自分をネガティブに、行動を変えた自分をポジティブにイメージしてもらうことも大切です。無関心期同様に、現状を維持することのリスクと、行動を変えるメリットを伝えて動機づけをすると、次の準備期に移行していけるでしょう。

3.準備期

準備期は、1ヵ月以内に行動を変えたいという明白な意思を持っており、小さなことならばいつでも始められるような状態です

ただ、まだ行動は起こしていませんので、「自分ならできる」という自信を持ってもらえるような働きかけが必要になります。具体的には、実施することが可能な計画を立て、小さな目標を設定すると、スムーズに行動に移せるようになるでしょう。

そして、行動を変え、それを続けていくためには、周囲から理解と協力を得ることも大切です。これから行動を変えると宣言することを促し、周知させることがポイントになります。

4.実行期

実行期は、行動を変えたけれど、まだ習慣にはできていないという状態です。行動を変えて6ヵ月未満なら、この実行期に当てはまるとされています。

行動を変えても、すぐには効果やメリットを実感できないことも多いため、モチベーションが下がって、前のステージに「逆戻り」してしまうこともあります。実行期以降は、この「逆戻り」を防ぎ、新しい行動を定着させるための働きかけが必要になります。具体的には、変化に対するフィードバックを与える、周囲の協力を得て行動しやすい環境をつくる、行動を継続していることに対して褒美を与えるなどです。

5.維持期

維持期は、行動を変えて6ヵ月以上その行動を継続できている状態です。この頃になると、本人も行動を変えたことによる効果やメリットを実感できており、今後続けていくことにも自信を持てています。

新しい行動が定着したといえる時期ですが、「逆戻り」しないとは言い切れません。そのため、実行期と同じような働きかけを続ける必要があります。

参考:行動変容ステージモデル | e-ヘルスネット(厚生労働省)

研修で行動変容を促すアプローチ方法

研修後に社員に行動を変えてもらうためには、まずは「424の法則」を意識して研修を設計することが大切です。「424の法則」とは、2007年に、アメリカのウエストミシガン大学のロバート・ブリンカーホフ教授が発表したもので、効果がない研修の原因がどこにあるのかという割合を示しています。その割合は、「研修前:研修中:研修後=424」であるとされています。

研修の効果を高め、行動変容を促すには、研修そのものだけでなく、前後の働きかけが重要なのです。ここからは、研修前、研修中、研修後に分けて、具体的なアプローチ方法を紹介していきます。

研修前(無関心期~関心期)

研修前は、先ほど紹介した「行動変容ステージモデル」でいうと、無関心期にあたります。行動を変化させる必要性を感じていない状態ですので、まずは研修の前に、受講者に現在の課題を認識してもらい、行動を変化させるメリットを感じてもらいましょう。そうすることで、関心期の状態で研修に挑んでもらうことができます。

具体的なアプローチ

まずは、研修の受講者に、研修の目的と目標、行動変容の必要性、行動を変化させないことのリスクなどを伝えます。あわせて、直属の上司から、研修からどのようなことを学んでほしいのか、研修後に期待することなどを伝えると、研修を「自分ごと」に感じてもらうことができるでしょう。

また、事前に受講者にヒアリングやアンケートを行い、学びたいことを把握しておくと、研修の内容も受講者のニーズに合わせて工夫できます。

研修中(関心期~準備期)

行動を変えるための準備を整えてもらうのが研修です。研修そのものは、「行動変容ステージモデル」でいうと、関心期から準備期にあたります。必要な知識やスキルをインプットしてもらうだけでなく、グループワークやロールプレイングなどアウトプットの機会を設けると、「自分ならうまくできる」という自信がつくので、学んだことを研修後に実行しやすくなるでしょう

具体的なアプローチ

アウトプットの機会を設ける以外にも、研修のなかでできることはあります。たとえば、研修の冒頭で研修の目的と目標を改めて共有したり、受講者に今回の研修に対する意気込みを発表してもらったりすることで、受講者の研修に対する意欲を引き出せるでしょう。また、最後に振り返りを行い、今後の行動目標を設定して、それを発表する機会を設けると、研修で学んだことを現場で実行しやすくなります。

研修後(準備期~実行期~維持期)

研修で学んだことを実行するのは現場なので、研修後に準備期→実行期→維持期とスムーズに移行してもらうには、現場で一緒に働く上司や同僚、チームメンバーの協力が欠かせません。あらかじめ研修の目的や目標を共有して、協力を仰いでおきましょう。

具体的なアプローチ

具体的なアプローチとしては、まず研修後に、受講者に「研修で何を学んだか」と「それを業務でどのように活かそうと思っているか」を、直属の上司に報告してもらうという方法があります。こうすることで、受講者は「報告どおり実行しなければ」という気持ちになり、学んだことをスムーズに実行できるようになります。

そして、上司は普段の業務のなかで受講者をよく観察し、行動を変えることができていれば褒める、適切なタイミングでフィードバックを与えるなどして、学びの定着をサポートしましょう。

また、初回の研修から一定の期間が過ぎたタイミングで、フォローアップ研修を行うのもおすすめです。あえて職場から離れた場所で、研修という形で振り返りの機会を設けることで、受講者は自分自身を客観的に把握できます。学びを活かせていることを実感できれば、モチベーションも高まるので、「逆戻り」の防止にもつながるでしょう。

なお、フォローアップ研修については、以下の記事でも詳しく解説しています。

フォローアップ研修とは?実施するメリット・効果を高めるポイント・事例を紹介

社員の行動変容を実現するポイント

次に、社員の行動変容を実現するために大切なポイントを紹介します。

具体的な行動目標を設定してもらう

行動変容を実現するには、研修や教育を受ける社員に、具体的な目標を持ってもらうことが大切です。先ほどもお伝えしたとおり、研修の最後に今後の行動目標を設定してもらうと、学んだことをスムーズに実行できるようになるでしょう。

なお、行動目標は、効果を計測しやすいように、あいまいな表現は避け、数値を含めるのが望ましいです。たとえば、「毎日早く出社することを心掛ける」ではなく、「始業時間15分前に出社して、その日やるべきことを確認する」というように、具体的な行動に落とし込みます。

また、いきなり高い目標を設定すると続けることが苦しくなりますので、ハードルを上げすぎないことも大切です。

社内コミュニケーションを活性化させる

研修や教育を行った直後は行動を変えることができたとしても、それを習慣にするというのは、なかなか難しいものです。「逆戻り」を防ぐためには、フィードバックを与えたり、行動しやすい環境をつくったりといった、周囲のサポートが欠かせません。普段から良好な人間関係を構築できていると、こうしたサポートを得やすくなるので、「逆戻り」が起きにくくなります。

そのために、社内コミュニケーションを活性化させましょう。具体的には、メンター制度や1on1を導入する、社内SNSやコミュニケーションツールを活用するといった施策が考えられます。

社内コミュニケーションを活性化させることで、行動を変化させたことについて悩みや不安が生まれたときも、上司や同僚に気軽に相談できるようになり、行動が継続しやすくなるでしょう。

強制や命令はしない

上司が命令をすれば、強制的に行動を変えることができますが、それでは新しい行動を習慣化させることは難しいでしょう行動変容を実現するためには、あくまでも社員が「主体的に」行動することが大切です。

そのためには、特に無関心期と関心期での動機づけが重要になります。現状を維持することのリスク、行動を変えるメリットを伝え、主体性を引き出しましょう。

行動変容を計測する方法

研修を実施した後は、その効果を計測し、次につなげていくことが重要です。では、社員が行動変容を実現できているかどうか計測する方法には、どのようなものがあるのでしょうか。

行動チェックリスト

行動チェックリストとは、研修前と研修後の行動を比較し、行動を変えることができているかどうかを評価するためのものです。具体的な行動をいくつか並べて、それらの項目について、本人と上司それぞれが評価を記入する欄を設けます。項目は研修の内容や、企業が何を重視するかによっても変わってきますが、たとえば新入社員研修であれば、「尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けができているか」「自分から積極的に報告・連絡・相談ができているか」などです。

行動チェックリストによる評価は、研修の直後ではなく、数ヵ月経ったタイミングで実施するのがおすすめです。

研修後のアンケート

研修の直後にアンケートを実施することで、受講者の研修の内容に対する満足度や理解度、改善点などを把握できます。また、研修後一定期間が過ぎたタイミングでフォローアップアンケートを実施すれば、行動変容を実現できているかどうかを評価できるだけでなく、研修で学んだことを実務で実践する必要性を、受講者に再認識してもらうこともできるでしょう。

上司や先輩社員へのヒアリングやアンケート

研修を実施した後、一定期間が過ぎたタイミングで、受講者と一緒に働いている上司や先輩社員に、ヒアリングやアンケートを実施するのも1つの方法です。いつも近くで見ている上司や先輩社員の意見を聞くことで、研修後、受講者に具体的にどのような変化が表れているかを、正確に把握することができるでしょう。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

行動変容とは、これまでの行動を変えて、それが習慣的にできるようになることを意味します。「行動変容ステージモデル」では、人の行動は、5つのステージを経て変わっていくとされています。いきなりこれまでの習慣を変えることは簡単ではありませんので、人材育成は長い目で取り組むことが大切です。

また、行動変容を実現するためには、研修そのものだけでなく、前後の働きかけが重要です。研修を設計する際は「424の法則」を意識し、周囲にも協力を仰ぎながら、職場全体で社員の育成に取り組んでいきましょう。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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