マクレガーのX理論/Y理論とは?概要からビジネスシーンにおける活用法まで解説

  • 組織・人材開発

マクレガーのX理論/Y理論は、マズローの欲求段階説を参考にした、人間観・動機づけに関わる2つの対立的な理論です。人のモチベーション向上に関わる理論の1つといわれています。

組織の発展に欠かせない従業員のモチベーション向上は、どのように進めていけるのでしょうか。当記事では、マクレガーのX理論/Y理論について詳しく解説します

 

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マクレガーのX理論/Y理論とは

「マクレガーのX理論/Y理論」とは、アメリカの心理・経営学者「ダグラス・マクレガー(Douglas M. McGregor)」によって提唱された、人間観・動機づけに関わる2つの対立的な理論のことです。これらの理論は、「マズロー(A. H.Maslow)」の「欲求段階説」を基に提唱されました。

「マクレガーのX理論/Y理論」を基にしたマネジメント手法は、社員のモチベーションアップに有効であるとされており、現在も注目されている理論です。以下ではX理論とY理論について詳しく解説します。

  • X理論とは

X理論は、マズローの欲求段階説における低次欲求(生理的欲求や安全と安心の欲求)を比較的多く持つ人間の行動モデルです。「人間は怠け者で、強制されたり命令されたりしなければ仕事をしない」というような性悪説に基づいた理論だとされています。

つまり、命令や強制で管理し、目標が達成できなければ処罰するというマネジメント手法です。北風と太陽なら、「北風」だといえるでしょう。

Y理論とは

Y理論はマズローの欲求段階説における高次欲求(所属と愛の欲求・承認の欲求・自己実現の欲求)を比較的多く持つ人間の行動モデルです。「生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で責任を受け入れ、自ら進んで責任を取ろうとする」というような性善説に基づいた理論だとされています。

魅力的な目標と責任を与え続けることによって従業員を動かしていく、「統合と自己統制」によるマネジメント手法です。北風と太陽なら「太陽」だといえます。

X理論とY理論を組み合わせたZ理論

X理論とY理論の良いところを組み合わせたものが『Z理論』です。アメリカの経済学者であるウィリアム・オオウチ(William G. Ouchi)が提唱しました。

X理論とY理論は、その特性から「悪で怠惰なのか」「善で働き者なのか」といった対立する極端な分類です。これに対し、Z理論は「平等で親密」という温かな雰囲気が「個人を動かし、細かな監視がなくても自発的に行動する」ものとされています。そして「企業としての体制が整っていれば、自然と社員のモチベーションはアップする」という理論です。

Z理論は、X理論とY理論の「いいとこ取り」をしている理論といわれています。しかし、「信頼関係」や「親密さ」が悪い方向に常態化してしまうと、昇給や昇進における人種差別や性差別、文化的に異質な人材の排除などにつながるため、多様化が進む現代では特に注意が必要です。

 

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マズローの欲求階層説

続いて、X理論とY理論の基礎であるマズローの「欲求階層説」について紹介します。マズローの欲求階層説は、1954年にアメリカの心理学者アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)氏が提唱した説です。

マズローの欲求階層説は、人間がどのような内発的動機で行動するのかを説明する理論である、5つの階層で構成されています。以下のようなピラミッド型の構造が特徴です。

ただし、基本的に欲求の階層は不動のものではないことに注意しましょう。ピラミッド型ではあるものの、次の欲求が現れる前に、前の欲求が100%満たされている必要はありません。

参考:マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈(廣瀨・菱沼・印東, 2009, p9)

①  生理的欲求

生理的欲求は、ピラミッドのなかで最も下に位置する階層の欲求です。人間が生きるために必要な「食事をしたい」「睡眠を取りたい」などの誰もが持っている生理的な欲求のことです。マズローは、まず人間は生理的な欲求を満たしていないと、より高いレベルの欲求を持てないと言及しています。

たとえば、大災害が発生して食べものが得られない状況になったとき、コンビニや店舗での窃盗や、空き巣などの被害が増える傾向があります。生理的な欲求が満たされない段階では、安全と安心の欲求を持つことはできないと証明できる例といえるでしょう。

参考:物資不足で被災地の盗難増加 ガソリンや食品など被害 – 東日本大震災(朝日新聞)

②  安全と安心の欲求

安全と安心の欲求は、生理的欲求の次に低次な欲求です「身体的・経済的に安全・安心した環境で働きたい」という欲求が、人の行動を支配するようになります。

生きていくうえで最低限の賃金を得られ、危害を加えられることなく働ける環境があることは大切なことです。

たとえば、低賃金で生活が苦しかったり失業してしまったりした場合、人はまず経済的な基盤を確保するために行動することでしょう。また、現在の環境が基本的な生計が立てられており、適正な賃金が保証されている状態であれば、その状態を維持しようと努めるはずです。

③  所属と愛の欲求

所属と愛の欲求は、社会的欲求ともいわれます「組織に所属して安心感を得たい」「組織から受け入れられている安心感を得たい」という欲求です。生きるうえで最低限の欲求が「生理的欲求」と「安全と安心の欲求」だとすると、組織と自分にフォーカスした、プラスアルファの欲求段階といえるでしょう。

マズローによると、人間は社会的集団のなかで、所属感や受け入れられている安心感を求める傾向があるとしています。つまり、規模を問わず集団の一員であると感じられることが重要です。

社会に受け入れられている所属欲求が満たされていない場合、人によってはうつ病を発症する可能性があります。精神的に安定するために必要な欲求だといえるでしょう。

④  承認の欲求

承認の欲求は、組織に所属した感覚を得た(所属と愛の欲求が満たされた)次の段階の欲求になります所属する集団のなかで、「他者から高く評価されたい」「自尊心を満足させたい」といった欲求です。

マズローは、承認の欲求には以下の2種類があると言及しています。

低いレベルの承認の欲求:他者から高く評価されたい、認められたいという相対的な自分自身の位置づけに言及した欲求

高いレベルの承認の欲求:自分に自信を持ちたい、自身を高く評価したいという自分自身に対する承認の欲求

人によっては、低いレベルの承認の欲求が満たされるだけで満足できる場合があります。しかし高いレベルの承認の欲求を持ち始めると、いくら他者から評価されていても、自分で自分を評価できないと満足できなくなってしまうでしょう。マズローは、どのような人であれ、自尊心を持つことが大切だと言及しています。

たとえば、自分を評価し、自身の仕事に誇りが持てるようになると、自発的により良い方法を模索したり新たな情報をインプットしたりと、さらに高いレベルの仕事を目指すようになります。自尊心を満足させることで、より高次な欲求の段階へシフトできるでしょう。

⑤  自己実現の欲求

自己実現の欲求は、「自分にしかできないことを成し遂げたい」「自分で決めてやり遂げたい」という、自分自身の理想に近づけようとする最も高次な欲求ですスポーツ選手として活躍したい、世界的に有名なピアニストになりたいなど、自分の能力を活かして成長し続けたいという欲求で、第一階層から第四階層までの欲求を満たしたうえでないと実現できないとされています。

自己実現の欲求は、「自分の生き方と向き合わなければ満たせない」欲求です。自分の人生観や価値観に基づいて、「自分らしく生きたい」と願う欲求だといえるでしょう。

マクレガーのX理論/Y理論を活用するメリット

マクレガーのX理論/Y理論を活用するメリットとは、なんでしょうか。基本的にはX理論とY理論の良いところを組み合わせて活用することが良いとされていますが、以下ではそれぞれのメリットをX理論とY理論に分けて解説します。

①    X理論を活用するメリット

X理論は、人間は基本的に怠惰で動機づけが必要であるものと仮定した理論です。X理論に基づいてアプローチすることで、管理者は強力な指導と厳格な監督を通じて、効果的に部下を管理できるでしょう。特に、危険な作業環境や緊急の状況では、X理論に基づいた厳格な管理が必要です。

また、X理論では成果物の重要性を強調します。成果が達成されることが重視されるので、目標達成に集中できる環境が整えられるというメリットがあります。

②    Y理論を活用するメリット

Y理論は、人間が内発的に動機づけられ、自己実現を求める存在であると仮定した理論です。Y理論に基づいてアプローチすることで、社員はより自由に働き、成長する機会を持ちやすくなります

またY理論によるアプローチで、社員の創造性とイノベーションを引き出せる可能性があります。自由な環境で働くことで、新しいアイデアやアプローチが生まれやすくなるでしょう。さらには社員が自己管理できるという前提なので、上司による過度な監督が不要になる点もメリットです。

Y理論を採用する組織は、社員のニーズや目標を考慮し、働きやすい環境を提供する傾向があります。これにより、従業員の満足度が向上し、離職率が低下する可能性があります。

マクレガーのX理論の活用方法

マクレガーのX理論は、マネジメントの場面や人事制度などの施策において効果的に活用できます。

ただし、X理論とY理論は極端な分類のため、どちらかに偏って活用してもうまくいきません。基本的にはY理論を軸とし、バランスよくX理論を取り入れるとよいでしょう。

以下では、マクレガーのX理論の活用法を紹介します。

①  業務に慣れていない部下への指導

新入社員への指導や、業務に慣れていない人への指導などの、業務の抜け漏れが発生することが想定される場面においては、X理論でのアプローチをおすすめします。細かい管理・指導を行う場合は、ヒューマンエラーを回避することが大切です。「人間は怠け者で、強制されたり命令されたりしなければ仕事をしない」といったX理論に基づいたアプローチによって、慢心することなく仕事に臨めるでしょう。

また、機密情報を扱う業務や高所での肉体労働など、個人の管理ではリスクが大きい場合にX理論が有効です。大きなリスクがともなう場面は、X理論に基づいた厳密なルール運用によるマネジメントを実施しましょう。

②  ガバナンス強化

ガバナンス強化においても、X理論によるアプローチをおすすめします。ガバナンス強化とは、法律などに違反した行動を起こさないよう企業内で仕組みや規則を作り、管理体制を整備することです。

たとえば、セクハラやパワハラ、顧客情報の漏洩などの問題は、X理論に基づいて重いペナルティを科します。ガバナンスの強化を目的とする制度や施策を実行する際に、X理論は最適です。

マクレガーのY理論の活用方法

Y理論は、主にモチベーションやエンゲージメントの向上に活用できます。以下では、マクレガーのY理論の活用方法について詳しく紹介します。

①  モチベーションの向上

経験がある部下のモチベーション向上を図る場合は、Y理論でのアプローチが有効です

「テレワーク導入時の場合、仕事中はずっとZoomをつないでおく」などの監視をするような指導は、経験がある部下には逆効果といえます。部下の内発的動機に働きかけるような指導をしましょう。たとえば「後輩指導をしてもらいたい」と新たな仕事を任せて、今後のキャリアプランと現在の担当している業務を照らし合わせ、話を聞きながら進めるといった指導が効果的です。

Y理論に基づいたマネジメント手法は、魅力ある目標と責任を与え続けることによって従業員を動かしていくため、モチベーションの向上が期待できます。

②  エンゲージメントの向上

Y理論に基づいたアプローチは、社員のエンゲージメント(企業に対する愛着心)の向上にも有効です

エンゲージメントが低下すると、離職者が増えます。離職者が増えることで従業員のモチベーションが下がり、企業の業績全体に影響する可能性があるでしょう。

そこで、「組織に貢献したい」「認められたい」という社員の意識を引き出し、満たしていくY理論に基づいたアプローチを活用すれば、社員のエンゲージメントを向上させられます。たとえば、今後の組織のビジョンを、全社員の意見をヒアリングしてから査定し、社員に「自分は会社から必要とされている」といった意識を引き出す方法などが挙げられるでしょう。

なお、エンゲージメントについては以下の記事で詳しく紹介しています。

エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味や重要性を解説 

モチベーションに関するその他の理論

モチベーションに関わる理論は、マクレガーのX理論/Y理論だけではありません。以下では、ハーズバーグの二要因論について紹介します。

①ハーズバーグの二要因論とは

ハーズバーグの二要因論は、臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)が提唱した、職務への満足や不満足を引き起こす要因に関する理論です

ハーズバーグによると、人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではないとしています。つまり、「満足」に関わる要因(動機づけ要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるということです。

②ハーズバーグの二要因論が提唱された背景

1959年にハーズバーグとピッツバーグ心理学研究所が行った調査における分析結果によると、人の欲求には種類が2つあり、それぞれ人間の行動に異なった作用を及ぼすことがわかりました

たとえば、人間が仕事に満足を感じるとき、その人の関心は仕事そのものに向いています。それに対して、人間が仕事に不満を感じるときは、その人の関心は自分たちの作業環境に向いていることが多いといえるでしょう。ハーズバーグは前者を「動機づけ要因」、後者を「衛生要因」と名づけました。

③ 「動機付け要因」とは

「動機づけ要因」とは、人間が仕事に満足を感じる要因のことです。具体的に仕事の満足に関わるのは、「達成すること」や「承認されること」、そして「仕事そのもの」「責任」「昇進」などです

これらが満たされていると満足感が得られます。しかし、欠けていても職務に対してとりわけ不満足を感じるわけではありません。仕事の満足に関わる要因はすべて、仕事そのものに関心があるといえるでしょう。

このように動機づけ要因は、マズローの欲求段階説でいうと「自己実現の欲求」「承認の欲求」のほか、「所属と愛の欲求」の一部に当たる欲求を満たすものといわれています。

なお、内発動機づけについては以下の記事で詳しく紹介しています。

内発的動機づけとは?従業員のモチベーションを高める方法を紹介

④「衛生要因」とは

「衛生要因」は、人が仕事に不満を感じるときの要因です仕事の不満足に関わるのは、「会社の政策と管理方式」「監督」「給与」「対人関係」「作業条件」などの、作業環境にあるとされています。

このような作業環境が悪いと、職務不満足を引き起こします。しかし、作業環境がどんなに良くても直接満足につながるわけではありません。

「衛生要因」はマズローの欲求段階説では、「生理的欲求」「安全・安定欲求」と「所属と愛の欲求」の一部の欲求を満たすものだといえるでしょう。

参考:動機づけに関する一考察(石田恒夫)

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います。

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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まとめ

マクレガーのX理論/Y理論とは、人間観・動機づけに関わる2つの対立的な理論のことです。人のモチベーションに関わる理論の1つで、マズローの欲求段階説を参考にしています。

X理論とY理論は極端な分類のため、どちらかに偏って活用してもうまくいきません。Y理論を基本とし、X理論をバランスよく取り入れつつ、状況に応じて活用しましょう。

 

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この記事の著者

藤 琴乃

フリーランスのWebライター。大学卒業後はバレエダンサーや法人営業、Web編集職、Webディレクター職を経験。記事作成に限らず、企画立案やオウンドメディアの立ち上げ、オンライン事務など幅広い仕事に携わっています。

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