交流分析とは?4つの基本理論と「人生の立場」について解説

2023.11.22

職場の雰囲気や人間関係が悪くなると、情報の伝達や意思疎通が十分にできず、業務がスムーズに進まなくなったり、ミスやトラブルが発生してしまったりすることがあります。また、社員が大きなストレスを感じて、心身に不調をきたすこともあるかもしれません。

そこで今回は、職場の人コミュニケーション活性化やメンタルヘルス対策に役立つ「交流分析」を、わかりやすく解説します。交流分析とは何か、基本的な概念である「ストローク」、4つの基本理論と「人生の立場」について、詳しく見ていきましょう。

 

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交流分析とは

交流分析とは、アメリカの精神科医のエリック・バーン氏により、1950年代半ばに開発された心理学理論、およびそれに基づく心理療法です。正式名称は「Transactional Analysis」で、略して「TA」と呼ばれることもあります。精神分析をベースに、人間性心理学を取り入れて開発された交流分析は、「精神分析の口語版」ともいわれています。交流分析を学ぶと、日々のコミュニケーションが変わります。人間関係の改善や、自己実現に役立つでしょう。

交流分析は、もともとは治療のための心理療法でした。しかし現在では、教育やビジネス、医療、介護、子育てなど、幅広い分野で活用されています。職場では、コミュニケーション活性化や、メンタルヘルス対策としても役立てられています

まずは「ストローク」を理解しよう

交流分析の基本的な概念に、「ストローク」というものがあります。ストロークとは、交流分析心理学のなかのコミュニケーション理論のことで、簡単に表すと「他者とのかかわり」のことをいいます。たとえば、撫でる、抱きしめるといった触れ合いや、言動や表情、態度などです。子どもの頃は、抱っこや頬ずりなどの身体的なストロークが多いですが、成長とともに、表情や態度などの精神的なストロークが多くなっていきます。

厚生労働省のメンタルヘルスに関するポータルサイト「こころの耳」では、ストロークは“「あなたという存在を認めているよ」という存在認知のメッセージ”であり、人格を形成する“心の栄養”であると表現されています。

参考:15分でわかるはじめての交流分析1 – こころの耳(厚生労働省)(PDF)

これまでにどのようなストロークを受け取ってきたか、そしてそれをどのように感じ取ってきたかによって、個性や人生観、生き方も決まっていくというのが、交流分析の考え方です。

ストロークには、「肯定的ストローク」と「否定的ストローク」の2種類があります。

肯定的ストローク

「肯定的ストローク」とは、心が軽くなったり、あたたかい気持ちになったりするストロークのことをいいます。たとえば、「あなたのことが大好き」「あなたがいてくれて本当によかった」などです。人は、このような自分の存在そのものに対して無条件に与えられる肯定的ストロークを求めています。無条件の肯定的ストロークを受け取ると、自分で自分の価値を認識できるようになり、前向きな気持ちになって、自信も湧いてくるのです。

肯定的ストロークのなかには、「テストで学年一位になるなんて、すごいじゃない」のように、行動や結果に対して与えられる条件付きのストロークもあります。条件付きの肯定的ストロークは、相手から「次回もがんばろう」というやる気やモチベーションを引き出すことができますが、伝え方によっては、「成績が良くないと褒めてもらえない」「次回順位が下がったらどうしよう」などと、相手が自信を無くしてしまうこともあります。特に、子どもの頃に親から条件付きのストロークばかりを与えられると、自分を好きになれなかったり、反抗的になったりする可能性もあるといわれています。

否定的ストローク

「否定的ストローク」とは、心が不快になるストロークのことをいいます。たとえば、「あなたのことが嫌い」「あなたって、いてもいなくても変わらないね」などです。このような、相手の存在自体を否定するような無条件の否定的ストロークを与えてしまうと、相手は自分に価値を感じられなくなり、自信を無くしてしまいます。その結果、心身の不調につながることもあるのです。

また、「あのような失礼な対応をしたらダメじゃないか」など、行動や結果に対する条件付きのストロークもあります。相手が間違っているとき、条件付きの否定的ストロークを適切に伝えれば、「教育的ストローク」になります。「さっきの対応は失礼だったのか。次からは気をつけないと」という気づきを与え、相手を成長させることができるでしょう。

交流分析のゴールは「自律性」の確立

交流分析の提唱者であるエリック・バーン氏は、交流分析のゴールは「自律性」だと述べています。私たちは、成長するなかでさまざまな思考や感情、行動を身につけますが、それらには偏りがあります。自律性とは、その偏りに気づき、他人のせいにせず、以下の3つの能力を自由に発揮できるようになることを意味します。

  • 気づき……先入観にとらわれず、自分の五感を使って感じ取る。
  • 自発性……状況に合わせて自我状態をコントロールし、適切に対応する。
  • 親密さ……相手と心を開き合って、感じていることや望んでいることを共有する。

自律性を確立できると、周囲の人と良好な人間関係を築けるようになります。また、自分が望む生き方や、自己実現にもつながります。

交流分析における4つの基本理論

交流分析には、4つの基本的な理論があります。

  1. 構造分析
  2. やりとり分析
  3. ゲーム分析
  4. 脚本分析

ここからは、この4つの基本理論について、1つずつ詳しく解説します。

1.構造分析

構造分析とは、簡単にいうと個人の性格の傾向を分析することです。エリック・バーン氏は、人の心を三層構造で表しています。これを、「自我状態」といいます。自我状態の成り立ちと、自我状態を測定するための「エゴグラム」について、詳しく見てみましょう。

自我状態の成り立ち

自我状態は、「P」{A}「C」の三層構造となっています。

  • P:親(Parent
    親や養育者のような考え方や行動。厳しく律する、優しくサポートする、受け入れるなど。
  • A:大人(Adult
    現実に冷静に対応できる。計画を立てて行動する、知見や経験に基づいた判断を下すなど。
  • C:子ども(Child
    子どもように感じたまま行動する部分。自由にふるまう、親の顔色を見て行動を変えるなど。

さらに、自我状態には5つの機能があります。

支配的な親(Critical Parents

「~しなさい」「~すべきだ」など、ルールや秩序を守るよう求める。

養育的な親(Nurturing Parents

「よくできました」など、優しく支援する。

大人(Adult

現実を観察し、冷静に判断する。

自由な子ども(Free Child

「それ、欲しい!」「嫌だ!」など、心のままに自分を表現する。

順応した子ども(Adapted Child

親や上司に素直に従ったり、自分を抑えこんだりする。

自分にも他人にも厳しい人、おせっかいな人、困難な状況のなかでも冷静でいられる人、いつも明るい人、控えめで我慢強い人など、世のなかにはいろいろな人がいます。自我状態のはたらきは一人ひとり違うため、人の個性も違うのです。そして、5つの自我状態のバランスは、これまで受け取ってきたストロークによって決まります

また、同じ人でも、その時の状況や接する相手によって、自我状態は変わりますその時、その場所に合わせて、適切な自我状態で対応できるようになることが重要です。

エゴグラムで自我状態を測定する

エゴグラムとは、自我状態の5つの機能のバランスを図表化できる性格診断テストのことです。いくつかの質問に答えることで、自分の性格特性と行動パターンを把握できます。交流分析理論に基づいて、ジョン・M・デュセイ氏が考案したものです。

さまざまなエゴグラムがありますが、日本では「東大式エゴグラム」(TEG:Tokyo University Egogram)が広く知られています。質問は53問で、すべて「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3つの選択肢から選んで回答します。「新版TEG3」には、オンライン版(CAT版)、検査用紙、マーク式用紙の3種類があります。

参考:新版TEGⓇ3 – 株式会社 金子書房

エゴグラムは、ビジネスの現場では、各種研修ツールとして用いられているほか、リーダシップやマネジメント開発、コミュニケーションスキルの向上、組織の現状分析などにも活用されています。

2.やりとり分析

やりとり分析とは、自分と相手とのやりとり(コミュニケーション)のパターンを自我状態モデルで分析して、心地よいやりとりに変化させるというものです。やりとりのパターンは、以下の3つに分けられます。

  • 相補的なやりとり
  • 交差的なやりとり
  • 裏面的なやりとり

1つずつ、詳しく見てみましょう。

相補的なやりとり

相補的なやりとりとは、お互いに求めている返答が返ってくるようなコミュニケーションです

(例)

上司「明日は何か予定が入っていますか?」

部下「明日は13時から〇〇社様との打ち合わせが入っています。」

上司「資料はできていますか?」

部下「今日中には仕上がりますので、明日の朝一番でチェックをお願いできますでしょうか。」

上司「はい、わかりました。」

しかし、相補的なやりとりがいつも心地よいとは限りません。たとえば、次のようなケースです。

(例)

部下「明日の〇〇社様との打ち合わせに同席していただけないでしょうか。」

上司「急に言われても……。なんでもっと早く相談しないのですか。」

部下「申し訳ありません。お願いできないでしょうか。」

上司「前にも同じことがありましたよね? まったく……あなたはいつも段取りが悪いですね。」

このような心地よくないやりとりが生まれてしまった時は、気持ちを抑えて冷静に返したり、相手が予想していないような一言を返してみたりして、会話を切り替えてみましょう

交差的なやりとり

交差的なやりとりとは、想定していた答えとは別の答えが返ってくるようなコミュニケーションです

たとえば、上司に「〇〇社の担当者様が、来週の打ち合わせに△△さん(上司)も同席してほしいとのことです。」伝えたとします。想定できる答えとしては、「わかりました、スケジュールを調整します」「来週はちょっと忙しいので、日程を相談できませんか?」などですが、「一緒に仕事をしているのだから、私のスケジュールに余裕がないことくらいわかりますよね?」や、「どうしていつも一人でまとめられないのですか?」など、否定的なストロークが返ってくることがあります。

このような交差的なやりとりが生まれると、自分も相手も不快な気持ちになります。そのやりとりがきっかけとなり、人間関係がこじれてしまうこともあるかもしれません。

裏面的なやりとり

裏面的なやりとりとは、言葉に裏があるようなコミュニケーションです

たとえば、大きな成果を上げた同僚に対して、「すごいね、いつも努力しているからだよ。私も見習わなくちゃ」と、表向きはポジティブな言葉を投げかけているのに、心のなかでは「たまたま運が良かっただけだろう」と、馬鹿にしたり、妬んだりするようなケースです。または、同僚は心からそう思って発言してくれているのに、「本当はそのようなこと思っていないくせに」と疑ってしまうのも、裏面的なやりとりに当てはまります。

このようなコミュニケーションでは、自分も相手も疑心暗鬼になってしまい、その場の空気も悪くなってしまいます

3.ゲーム分析

相手が不快な気持ちになることがわかるのに、毎回同じ発言や行動をしてしまうことがありませんか。そして、相手もそれをわかったうえであなたの発言や行動に乗っかってくるため、お互いに嫌な気持ちで終わるのです。このように、同じ人と何度も良くないやりとりを繰り返してしまうという状態を、交流分析ではゲーム(心理ゲーム)といいます

人は誰でも、無意識にストロークを求めています。孤独になるより、否定的なものでも良いからストロークが欲しいと思ってしまうため、ストローク不足になるとゲームが発生しやすくなります。

ゲームというものを理解して分析できるようになれば、仕掛けられても乗らない、不快にならない返しをするといったことができるようになります。

4.脚本分析

「人生には脚本がある」というのが交流分析の考え方です。脚本は、ストロークの受け方や感じ方で決まっていきます。原型は学童期頃にできあがるといわれていますが、その後の発達が止まるわけではありません。脚本分析とは、ストロークの出し方や受け方を変えて、理想の脚本に書き換えようとするものです

ストロークは、ブーメランのように自分に返ってくるといわれています。こちらが無条件の肯定的ストロークや教育的ストロークを出すようになると、自然と周囲からも同様のストロークを出してもらえるようになり、その場所全体が明るくなるのです。まずは自分のストロークの出し方の傾向を知り、どう変えればストロークの輪が広がるか、考えてみてください。

4つの「人生の立場」

人は、周囲の人とのかかわりを通して、自分や自分以外の人、世のなか、人生に対する感じ方やとらえ方を身につけます。交流分析では、これを「人生の立場」と呼んでおり、以下の4種類に分類しています

  1. 私はOK、あなたもOK
    自分のことも、相手のことも肯定して受け入れます。
  2. 私はOKでない、あなたはOK
    自分に自信がなく、消極的です。ストレスをためやすい傾向があります。
  3. 私はOK、あなたはOKでない
    相手を否定したり、自分ばかり前に出ようとしたりします。
  4. 私はOKでない、あなたもOKでない
    焦りや虚しさから、人とかかわることを避けるようになったり、逆ギレしてしまったりすることもあります。

交流分析が目指すのは、「私はOK、あなたもOK」です。

「人生の立場」を意識するとコミュニケーションが変わる

「人生の立場」には、4つともに思考や行動、感情のパターンがあります。たとえば、「私はOKでない、あなたはOK」の人と、「私はOK、あなたはOKでない」の人とでは、非難する側とされる側の関係になりやすいといえます。自分が「私はOK、あなたはOKでない」である自覚がないと、気づかないうちにパワーハラスメントになっていることもあるかもしれません。

また、普段は「私はOK、あなたもOK」の人でも、ストレスがかかると、そのほかの立場になることもあります。自分がどのような場面で、どのパターンになりやすいのかを知っておくと、意識的に「私はOK、あなたもOK」に戻れるようになるでしょう。

参考:15分でわかるはじめての交流分析2 – こころの耳(厚生労働省)(PDF)

まとめ

エリック・バーン氏により開発された交流分析について解説しました。交流分析は、もともとは治療のための心理療法として発展してきたものですが、今では幅広い分野で活用されており、ビジネスの現場では、コミュニケーション活性化やメンタルヘルス対策にも役立てられています。

過去と他人は変えることはできませんが、現在の自分と将来は変えることができます。交流分析で自分の性格特性や行動パターン、ストロークの出し方の傾向などを知り、コミュニケーションの取り方を変えていくことで、今よりも周囲と良好な関係を築けるようになるでしょう。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

あらたこまち

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