ケーススタディとは?実施するメリットや進め方、注意点を解説

  • 学習法

ケーススタディとは、実践的なスキルを身につけるための学習方法の1つで、企業研修や医療・介護の現場、教育の現場など、幅広い分野で活用されています。

本記事では、ケーススタディとはどういったものなのか、ケースメソッドとの違いも含めて、わかりやすく解説します。さらに、ビジネスにおけるケーススタディの具体的な進め方、ケーススタディのメリットと、実施する際の注意点、ケーススタディを取り入れた試験や面接についても紹介します。

 

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ケーススタディとは

英単語のケース(case)には「事例」や「実例」、スタディ(study)には「学習」や「研究」などの意味があります。ケーススタディとは、実際に起こった事例を分析・検討して、解決策を探るという学習方法です日本語では「事例研究」とも呼ばれています。

ケーススタディは、過去に実際に起きたことを疑似体験できるため、座学だけでは習得が難しい問題解決力や対応力、洞察力といった実践的なスキルを養うことができます。また、事例を細かく分析することで、成功・失敗するときの傾向や法則を知ることができ、同じミスやトラブルが発生するのを防ぐこともできるでしょう。

分野別のケーススタディ

ケーススタディは、企業研修だけでなく、医療や看護、教育の現場でも活用されています。分野ごとに、ケーススタディがどのように行われているのかを詳しく見てみましょう。

ビジネスでのケーススタディ

ビジネスにおけるケーススタディは、新人研修やリーダー・管理職向けの研修など、企業研修のなかで行われることが多いです。過去に実際に企業が直面した事例を疑似体験できるため、対応力やリスク回避、アイデアを生み出す力、部下への指示の出し方、業務を効率化する方法など、座学だけでは習得が難しいスキルを高めることができます。

また、経営大学院でもケーススタディが行われています。経営大学院とは、経営やビジネスに関する知識を体系的に学び、経営学修士(MBAMaster of Business Administration)を取得できるビジネススクールのことをいいます。経営大学院のケーススタディでは、ビジネスの場での意思決定を問うような事例が取り上げられることが多いです。

ビジネスにおけるケーススタディは、提示された情報と、すでに自分自身が持っている知識とを組み合わせて、いかに素早く適切な判断を下せるかが重要です。

医療・介護でのケーススタディ

医療の現場では、医師や看護師といった専門職が集まり、ケーススタディが行われています実際の患者の症例を取り上げて、どうケアすべきかを検討するというもので、「症例検討会」と呼ばれることもあります。一人の患者の症例について検討するケーススタディだけでなく、複数の患者の症例を比較するケーススタディも行われています。たとえば、「同じ治療を施した三名の患者の回復のペースが違うのはなぜか」というようなケースです。

介護の現場でも、医療の現場と同じく、介護福祉士やケアマネージャーなどが集まってケーススタディを行うことがあります。医療や介護におけるケーススタディは、1つの職種で集まって行うこともあれば、多業種で集まってディスカッションをすることもあります。

教育でのケーススタディ

教育の現場では、教員や管理職がケーススタディを行うことがあります。教員のケーススタディは、実際の授業や学生に対しての指導の事例から、教育や指導の改善方法を考えるというものが多いです。管理職のケーススタディは、教育の現場で実際に起こった事故やトラブルなどの事例を取り上げ、解決策や再発防止策を検討します。

また、ケーススタディは大学の授業にも取り入れられています。大学の授業で行われるケーススタディは、学部学科と関連のある業界で働いている人や卒業生を講師として招き、実際の事例をもとに講義をしてもらうという形が多いです。講師の話を聞くだけでなく、ディスカッションをしたり、グループでビジネスモデルを練って発表したりすることもあります。

ケーススタディとケースメソッドの違い

ケーススタディと似ている言葉に、ケースメソッドがあります。ケースメソッドとは、実際の事例を調査・分析して、ディスカッションを通して解決策を導き出すというものです。ケーススタディとケースメソッドは、どちらも事例をもとに解決策を探るという点は共通していますが、それぞれ異なる特徴があります。

まずは、ケーススタディは「座学」が、ケースメソッドは「ディスカッション」がメインであるということ。ケーススタディは、事例に関する資料は教える側で用意し、学習者は教員や講師の解説を聞きながら学びます。対してケースメソッドは、事例の調査や分析は学習者が自ら行い、教員や講師とディスカッションしながら解決策を考えます。ケーススタディは受動的、ケースメソッドは能動的な学びであるといえるでしょう。

また、ケーススタディには「結論」(実際にどう対応したか、その後どうなったのかなど)がありますが、ケースメソッドにはありません。ケースメソッドは、学習者に当事者の視点で事例について考え、自分なりの答えを出してもらうことで、分析力、ロジカルシンキング、意思決定力といった実践的なスキルを身につけてもらうことを目的としています。

しかし、ケーススタディでもディスカッションが行われることもあるので、この2つを明確に区別するのは難しいともいえます。

 

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ビジネスにおけるケーススタディのメリット

ここからは、ビジネスにおけるケーススタディについて詳しく解説していきます。まずは、ケーススタディを行うメリットを紹介します。

実践的なスキルが身につく

座学で新たに学んだ理論や知識は、頭では理解できても、実際にそれらがどのように役に立つのかがイメージしにくい場合もあります。ケーススタディは、実際に起こった事例を分析して最適な解決方法を考えるので、問題解決力や分析力、実践力など、座学だけでは得ることが難しいスキルを養うことができます。これらの実践的なスキルは、特にマネジメント層には不可欠なスキルといえます。

また、新人研修にケーススタディを取り入れることで、新入社員が「これから自分がどんな仕事をしていくのか」というイメージもしやすくなるでしょう。

スムーズに問題を解決できるようになる

問題解決力や意思決定力を高めるには、新たな知識や理論を学ぶだけでなく、経験を積むことが重要です。ケーススタディを行うことで、これまで自分が経験したことのないような事例を疑似体験することができます。ケーススタディで多くの事例を疑似体験しておくことで、実際に現場で不測の事態やトラブルが発生した場合でも、落ち着いて的確な対応ができるようになるでしょう

また、社員一人ひとりのスキルが向上すれば、チームや組織全体の問題解決力や対応力の向上も期待できます。ケーススタディを繰り返し行うことで、何か問題が発生したときも、社員同士で協力してスムーズに問題を解決できるようになるでしょう。

事故やトラブルのリスクを回避できる

ケーススタディで過去の失敗事例を学ぶことで、事故やトラブル、ミス、クレームなど、同じようなことが起こるのを防ぐことができます。自分ではリスクと認識していなかったことが原因で、事故やトラブルが発生することもあります。ケーススタディで失敗事例を学び、企業に脅威を与えるリスクにはどのようなものがあるのかを知っておくことで、失敗につながるリスクを避けることができるようになります

素早く的確な意思決定につながる

ビジネスの場では、意思決定をしなければならない場面が多くあります。意思決定力は、現代のビジネスパーソンに求められるスキルの1つです。特に管理職には、高い意思決定力が欠かせません。管理職が的確な意思決定ができなければ、ほかの社員が動くことができず業務効率が低下したり、せっかくの機会やチャンスを逃してしまったりすることもあるかもしれません。

また、グローバル化やIT化などにより、ビジネス環境は速いスピードで変化し続けており、この変化の速さについていくために、意思決定にもスピード感が求められる時代となっています。実際の事例を多く学ぶことで、成功・失敗するときの傾向や法則を知ることができ、素早く的確な意思決定ができるようになるでしょう

新たなアイデアが生まれることもある

先ほどお伝えしたように、ケーススタディには、実際にどう対応したか、その後どうなったのかといった「結論」が用意されています。しかし、成功事例を学ぶ場合であっても、その結論が最適であるとは限りません。自分自身で「もっとより良い対応はないのか」と追及したり、講師やほかの社員とディスカッションするなかで、新たな気づきが得られたりすることもあるでしょう。ケーススタディを行うことで、社員一人ひとりの発想力も鍛えられるため、新たなアイデアの創出も期待できます

ビジネスにおけるケーススタディの進め方

次に、ビジネスにおけるケーススタディの進め方です。ビジネスでケーススタディを行う場合は、基本的には以下のような流れで進めていきます。

  1. 事例とテーマを決める
  2. 事例を正しく把握し、分析する
  3. 結論を導き出す
  4. 結論を共有し、全員で振り返る

企業研修の1つのプログラムとしてだけでなく、複数人のグループや一人でも行うことが可能です。具体的にどのように進めていくのか、ステップごとに詳しく見てみましょう。

1.事例とテーマを決める

まずは、ケーススタディで取り上げる事例を決めます。企業研修の1つのプログラムとして実施する場合は、あらかじめ研修の担当者が、自社の過去の事例から取り上げるものを選んでおきます。企業研修ではなく、チームや個人でケーススタディを行う場合は、社員が自ら事例を探します。自分の過去のビジネス経験だけでなく、書籍や新聞、インターネットなどから参考になりそうな事例を採用しても構いません。

取り上げる事例が決まったら、次はテーマを決めます。テーマとは、その事例をもとに「何をするか」ということです。たとえば、「問題の解決策を考える」「新しいアイデアを提案する」などです。

事例とテーマが決まったら、参加者が理解できるように資料なども用意しましょう。

2.事例を正しく把握し、分析する

事例とテーマを決め、資料などの用意もできたら、さっそくケーススタディを始めていきましょう。まずは、参加者に対して事例を提示します。参加者は資料などを読み込み、提示された事例を正しく把握し、細かく分析していきます。資料などにほしい情報が書かれていない場合は、合理的推論で補ったり、質問が認められていれば主催者側に質問をしたりして補いましょう。

3.結論を導き出す

事例の把握と分析ができたら、考えをまとめて、テーマに対する自分なりの結論を出します。まずは思いつくだけ答えを書き出し、そのなかからより有効なものに絞っていくと、結論がまとまりやすいでしょう。

4.結論を共有する

結論が出たら、参加者全員で結論を共有します。グループに分かれてディスカッションを行い、グループとしての結論を出してもらうのも良いでしょう。結論を共有することで、一人ひとり意見や考え方が違うことや、アイデアの出し方などを学ぶことができます。

最後に、実際はどう対応したか、その後はどうなったのかを確認します。取り上げた事例が成功事例であれば、実際の対応と同じ結論を出した人・グループが正解となりますが、先ほどもお伝えしたように、成功事例だからといってそれが最適な対応とは限りません。ケーススタディは、結論の良し悪しを評価することよりも、参加者に「学び」を得てもらい、問題解決力や発想力などのスキル向上につなげることが重要です。

また、一人でケーススタディを行う場合は、紙やパソコンに結論をまとめてみましょう。何らかの形でアウトプットすることで、思考が整理されます。

ケーススタディを実施する際の注意点

ケーススタディを行うことで、さまざまなメリットが得られることがわかりました。しかし、ケーススタディには注意点(デメリット)もあります。ケーススタディを実施する際は、次の2つの注意点を覚えておいてください。

唯一の「答え」が得られるわけではない

繰り返しになりますが、成功事例の場合であっても、その対応が最適な対応とは限りません。過去にはその対応でうまくいったのだとしても、時代や環境が変化したことで、過去の事例をそのまま当てはめてもうまくいかないケースもあります。

また、社内でケーススタディを行う場合は、専門家から指導を受けられるわけでもないので、「結局どういう対応がベストなのか」「何が正解なのか」というように、参加者に消化不良的なものが残る可能性もあるでしょう。

ケーススタディを行う目的は企業によってさまざまですが、疑似体験を通して問題解決力や意思決定力を高めてもらうために行われることが多いです参加者に疑問や不満が残らないよう、あらかじめケーススタディを行う目的を伝えておくと良いでしょう。

古い事例は役に立たない可能性がある

ケーススタディは、過去の事例から問題の解決方法や対処法を学ぶものですが、事例が古いものだと、あまり役に立たない可能性があります。逆に、誤った対応や判断をする原因になってしまうこともあるかもしれません。

環境がめまぐるしく変化する現代は、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの英単語の頭文字をとったもので、変化が激しく将来の予測が困難な状況を意味しています。グローバル化やIT技術の進歩により、古い知識やノウハウ、過去の成功体験が通用しないケースも増えているのです。

そのため、ケーススタディを実施する際は、取り上げる事例はなるべく新しいものを選び、あくまでその時点での結果であると認識して取り組むことが重要です

ケーススタディは試験や面接にも活用できる

ケーススタディは、採用面接や管理職昇格試験にも活用されています。たとえば、採用面接の場合は、候補者を複数のグループに分け、1つの事例についてディスカッションしてもらい、そのなかで候補者がどのような発言をしていたかなどを評価するというものです。

また、過去に起こったインシデントを取り上げる「インシデントプロセス法」というケーススタディがあります。このインシデントプロセス法を取り入れた採用面接は、「インシデントプロセス面接」とも呼ばれており、リーダーやマネジメント候補の人材を採用する際によく用いられています。

インシデントプロセス法については、以下の記事で詳しく紹介しています。

インシデントプロセス法とは?メリット・デメリット、事例研究の進め方を紹介

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1.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

過去の事例をから問題の解決方法や対処法を学ぶケーススタディを実施することで、これまでに自分が経験したことがない業務やトラブルなどを疑似体験することができます。問題解決力や対応力、分析力といった実践的なスキルの向上が期待できるでしょう。

ケーススタディは、唯一の「答え」が得られるものではありません。また、時代や環境が変われば求められる対応も変わるため、古い事例だとあまり役に立たない可能性があります。ケーススタディを行う際はなるべく新しい事例を選び、継続して実施して、ノウハウをアップデートしていくことが重要です。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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