ビールゲームとは?実施方法や研修に活用するときのポイントを解説

  • 研修ノウハウ

50年以上も前に開発され、今もなお世界中で活用されている、「ビールゲーム」というビジネスゲームがあります。ゲームを取り入れた研修を実施したいと考えているなら、ビールゲームも候補に入れてみてはいかがでしょうか。

本記事では、ビールゲームとはどのようなビジネスゲームなのか、実施方法やルール、ビールゲームで学べること、研修に活用するときのポイントを解説します

受講者が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で実践できる知識・スキルを習得
⇒受講者のスキルアップとチームビルディングをはかる「あそぶ社員研修 総合資料」を無料で受け取る

⇒「コミュニケーション研修」の資料を無料で受け取る

ビールゲームとは

ビールゲーム(Beer Game)は、1960年代にマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院で開発された、経営シミュレーションゲームです。システム・ダイナミクスを学ぶツールとして生まれました。サプライチェーン・マネジメントや在庫管理、システム思考などを学べるゲームとしても知られています。

ビールゲームの「ビール」は、お酒のビールのことです。しかし、実際にビールを飲みながら楽しむゲームというわけではありません。ビールは、工場で製造されたあと、代理店、小売店へと運ばれ、最終的に私たち消費者が購入します。ビールゲームは、この一連の流れを体験できるゲームとなっています。サプライチェーン全体のコストを最適化できたチームが勝利です。

最初は「冷蔵庫」の製造から消費者の手にわたるまでの流れを体験できるゲームだったそうですが、親しみやすいビールに変更されたといいます。参加者のなかに未成年の人がいる場合は、「リンゴジュースゲーム」などに名称を変えて実施されることもあるようです。

ビールゲームの実施方法

ビールゲームには、リアル(対面)版とオンライン版があります。研修などでビールゲームを実施したいと考えているなら、ビールゲームを取り扱っている研修会社を探して依頼しましょう。

リアル版は、専用のゲームキットさえ用意すれば、研修会社に依頼しなくても実施はできます。ただ、正しく実施されていないケースも少なくないようです。効果的に実施するためには、研修会社に依頼することをおすすめします。

所要時間は研修会社によってさまざまですが、リアル版は振り返りまで含めて3時間程度、オンライン版はリアル版より時間が短く1時間~2.5時間程度が目安ではないでしょうか。しかし、オンライン版でも4時間ほどかけて行う研修もありますので、自社に合う研修会社を探してみてください。

ビールゲームのルール

ビールゲームは、1グループ4人~8人で実施します。このゲームには、工場・一次卸・二次卸・小売の4つの役割がありますので、それぞれ1名~2名ずつ担当します。

細かいルールの説明は省略しますが、各メンバーがすることは、毎週の需要を予測して、「ビールを何ケース発注するのか」という意思決定を行うだけです。非常にシンプルなゲームといえるでしょう。しかし、ゲーム中はメンバー間のコミュニケーションや情報共有は制限されています(研修会社によって異なる場合もあります)。全体の状況を把握するのが難しいため、需給ギャップが生まれてしまうのです。最終的に、在庫コスト・受注残コストを抑え、サプライチェーン全体を最適化できたチームが勝利です。

ターンをどれくらい繰り返すかは研修会社によって異なりますが、35ターンくらい行うと、注文の波や在庫の変化といったシステムの動きが十分に確認できるでしょう(もっと多く、50ターン程実施するケースもあります)。

ビールゲームで学べること

ビールゲームからは、さまざまなことを学ぶことができます。ここでは、以下の4つについて詳しく解説します。

  • システム思考
  • 「全体最適」を考えることの重要性
  • コミュニケーション・情報共有の大切さ
  • 意思決定プロセスの重要性

システム思考

システム思考とは、「システム」として物事の全体をとらえ、本質を理解しようとする思考法をいいます。目の前にあることだけに注目するのではなく、各要素のつながり、相互作用なども把握したうえで、問題の解決方法を探すというものです。

「システム」と聞くと、機械的なものをイメージされる方が多いかもしれませんが、英単語のシステム(system)には、「体系」や「組織」「制度」といった意味もあります。つまりシステムとは、何かの「まとまり」や「仕組み」そのものを指す言葉といえます。

ビールゲームでは、工場・一次卸・二次卸・小売の各役割が相互に作用しており、1つの「システム」として機能していることを体験しながら学ぶことができます。

なお、システム思考については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

システム思考とは?代表的なツール「氷山モデル」を詳しく解説

「全体最適」を考えることの重要性

たとえば、ビールゲームでは以下のような問題が発生することがあります。

小売店で需要が少し増えた。小売店は「需要がさらに伸びる」と予測し、ビールを多めに注文した。

→小売店からの注文を見た卸売業者は、「市場での需要が伸びている」と判断し、在庫を多めに用意することにした。

→上記の情報を受けた工場は、将来の需要に応えられるよう生産量を増やすことにした。

→結果、サプライチェーン全体が需要以上の在庫を抱えることになってしまった。

それぞれが目の前の状況だけで判断した結果、誰かが大きなミスをしたわけでもないのに、全体として非効率な結果になってしまうことがあります。

これは、ビジネスにおいてもよくあることです。たとえば、部門の目標を達成することばかりを追求した結果、不要な在庫を抱えてしまったり、余分なコストが発生したりすることがあります。

ビジネスでは、部分最適ではなく全体最適を考え、行動することが求められます。ビールゲームでは、その重要性を体験しながら学ぶことができます。

コミュニケーション・情報共有の大切さ

ビールゲームは、ゲーム中はメンバー間のコミュニケーション・情報共有が制限されているため、各メンバーの予測や情報が、すぐには他のメンバーに届きません。各々が自分の視点で状況を把握・予測し、判断するしかないのです。

実際のビジネスにおいても、「部門間で情報が共有されていない」「自分が聞いていた指示とは違う」といったことはよく起こります。ビールゲームを通して、コミュニケーションや、情報を素早く・正確に共有することの重要性を学ぶことができるでしょう。

意思決定プロセスの重要性

ビールゲームを体験してみると、「自分の意思決定が全体にどのような影響を与えるのか」を考えさせられます。たとえば、「在庫切れになったら困るから、“とりあえず”多めに注文しておこう」とすると、先ほど紹介したように、結果としてサプライチェーン全体で多くの在庫を抱えることになる可能性もあります。企業としては、全体の状況を見通したうえで判断する意思決定プロセスを確立できていることが望ましいといえます。ビールゲームは、意思決定プロセスについて考えたり、見直したりするきっかけにもなるでしょう。

また、ビールゲームを通して「自分の意思決定が周りに影響を与える」ことを知ることで、個人レベルでは、普段からちょっとした意思決定に気を遣えるようになるといった効果も期待できるでしょう。

ビールゲームを研修に活用するときのポイント

ビールゲームを研修に取り入れる際は、以下のポイントを押さえることで、学習の効果を高められるでしょう。

  • コミュニケーション促進を目的にしない
  • ゲーム実施後に振り返りの時間を設ける
  • 講義を組み合わせる

1つずつ、詳しく解説します。

コミュニケーション促進を目的にしない

最近は、ビジネスゲームを取り入れた研修も増えています。研修にビジネスゲームを取り入れることで、参加者同士のコミュニケーション活性化や、交流を促進できるといったメリットもありますが、ビールゲームはこれらを目的に取り入れることはおすすめしません。なぜなら、お伝えしたようにビールゲームはコミュニケーションや情報共有に制限があり、ゲーム中は基本的に無言となるためです。

ただ、ビールゲームを通してコミュニケーションや情報共有の重要性を学んだ結果、普段のビジネスのなかでのコミュニケーションが改善される可能性はあります。

いずれにしても、ビールゲームを通して「何を学んでほしいのか」を明確にしたうえで取り入れるようにしましょう。

ゲーム実施後に振り返りの時間を設ける

学習の効果を高めるためには、ビールゲームを実施したあとに振り返りの時間を設けることも重要です。ゲーム実施したあとは、グループのメンバー同士で以下の点などを振り返ってもらいましょう。

  • 「全体最適」で考えることができていたか
  • コストをより抑えるためには、どのような判断・行動が必要だったか
  • 自分の意思決定が他のメンバーにどのような影響を与えていたか など

メンバー同士で振り返ってもらうだけでなく、ファシリテーターからフィードバックを与えることも忘れないようにしましょう。

講義やワークを組み合わせる

研修でビールゲームを実施するなら、関連する講義・ワークを組み合わせると学びが深まります。テーマとしては、たとえば「システム思考」や「在庫管理について」などが考えられます。

プログラムの順番としては、まずビールゲームを実施して、そのあとで講義・ワークを実施するという流れがおすすめです。参加者はビールゲームで一連のプロセスを「体験」をしているため、その後の講義やワークの内容を理解しやすくなるでしょう。

まとめ

1960年代に開発された経営シミュレーションゲーム、ビールゲームをご紹介しました。サプライチェーン・マネジメントや在庫管理、システム思考などを学ぶツールとして、世界中で活用されているゲームです。研修にゲームを取り入れたいと考えているなら、ビールゲームも検討してみてはいかがでしょうか。

ビールゲームはオープンソースとして提供されていますが、効果的に実施するには研修会社に依頼するのがおすすめです。ゲームを実施するだけでなく、振り返りの時間を設け、関連する講義・ワークと組み合わせると、学びを深められるでしょう。

 

「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
⇒あそぶ社員研修 総合資料を受け取る

⇒コミュニケーション研修の資料を無料で受け取る

 

以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

⇒ 合意形成・アサーティブコミュニケーション研修の資料を無料で受け取る

 

2.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

⇒ PDCA研修の資料を無料で受け取る

 

3.戦略思考研修

戦略思考研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、労働力や資本を使って事業を設立し、利益を稼ぐことを目指します。

学びのポイント

  • 不確実な状況のなかで自チームにとって最適な行動方針を考え、実行していく
  • 戦略を決めるために与えられた手段のなかでどの情報を取得していくかの優先順位決めが求められる

⇒ 戦略思考研修の資料を無料で受け取る

 

4.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

⇒ コミュニケーション研修の資料を無料で受け取る

 

5.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる

⇒ ロジカルシンキング研修の資料を無料で受け取る

 

6.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

⇒ クリティカルシンキング研修の資料を無料で受け取る

 

7.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、自分らしいリーダーシップを学べる

⇒ リーダーシップ研修の資料を無料で受け取る

 

8.ビジネスマナー研修

ビジネスマナー研修のアクティビティ「ビジトレ」では、実践形式・クイズ形式のアクティビティを通して、ビジネスマナーを楽しく学びます。

学びのポイント

  • 堅い内容になりがちなビジネスマナー研修にゲーム形式を取り入れることで、受講者が没入して学べる
  • 名刺交換や報連相などを実行し、動作・マナーに慣れることで、翌日から実践できるようになる

⇒ ビジネスマナー研修の資料を無料で受け取る

 

9.防災研修

防災研修のアクティビティ「先が見えない防災訓練からの脱出」では、チームで協力して、防災のアイテムや知識を使用しながら謎解きゲームのクリアを目指します。

学びのポイント

  • 謎解きの答えが災害時のNG行動にまつわる内容となっており、解説時になぜ行なってはいけないかもセットで学ぶ
  • 被災時は様々な情報が飛び交うため、情報を取得する際にどのようにすれば惑わされないかを学ぶ

⇒ 防災研修の資料を無料で受け取る

 

10.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

⇒ OODA LOOP研修の資料を無料で受け取る

 

⇒ その他の研修はこちら

⇒ お客様の声はこちら

この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

あそぶ社員研修は、企業の研修担当者向けのお役立ち情報を発信するメディアです。研修に関するノウハウ、組織・人材開発の手法、ビジネススキルなどをわかりやすく紹介します。

よく読まれている記事