感情知能(EQ)とは?構成要素や高める方法を紹介
- 組織・人材開発

日本においても、研修や人材育成に感情知能(EQ)の概念を取り入れる企業が増えています。従業員の感情知能が高まることで、生産性の向上や離職防止など、企業としてもさまざまな効果が得られるといわれています。
本記事では、感情知能とは何か、感情知能を高めることで企業が得られるメリット、感情知能の構成要素、個人が感情知能を高める方法と、従業員の感情知能を高めるために企業ができることを紹介します。
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感情知能(EQ)とは
感情知能とは、「自分や周りの人の感情を理解し、上手くコントロールして思考や行動に活かす力を測る指標」のことです。英語では、Emotional Intelligence Quotientと呼ばれています。
感情知能は、英語の名称を略して「EQ」、または「EI」とされることもあります。この2つの略語の違いとしては、「EI」は前述の能力そのものを、「EQ」はそれを測る指標を指す言葉として用いられることが多いです。
また、本記事では「感情知能」と呼びますが、「感情的知性(指数)」や「心の知能指数」と訳されることもあります。
EQとIQの違い
EQと関連する言葉に、「IQ」があります。IQとは、Intelligence Quotientの略称で、日本語では「知能指数」と呼ばれます。頭の回転の速さや、問題解決力、記憶力、分析力などの知的能力を数値化したものです。これに対して感情知能(EQ)は、感情を認識する力、制御する力、共感力、社会的スキルなどの能力、またはその高さを示す指標を意味します。
1995年にアメリカの『タイム』誌が感情知能の特集を組んだ際に、IQに対してEQと表現したために、EQの略称が広く知られるようになりました。
感情知能が注目されるようになった背景
世界で感情知能が注目されるようになったのは、アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマン氏が、1995年に『Emotional Intelligence』という書籍を出版したのがきっかけです。日本でも、翌1996年に『EQ こころの知能指数』というタイトルで出版されました。ダニエル・ゴールマン氏はこの書籍の中で、感情知能を定義し、リーダーにとっての重要性を唱えています。これがきっかけで、リーダーが成功するために重要な能力として注目されるようになりました。
また、2016年には世界経済フォーラムが必要なビジネススキルの一つとして感情知能を挙げたことで、世界のトップレベルの経営者たちからも注目されるようになります。さらに近年は、働き方の多様化、デジタル化やAIによる自動化が進む中で、改めて人間力が求められるようになってきています。このような中で、ビジネスで成功するために重要なものとして、感情知能の注目度も高まっています。
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感情知能を高めるメリット
感情知能は後天的に高めることが可能とされており、感情知能を活用できる人材の育成に取り組む企業も増えています。従業員の感情知能を高めることで、具体的には以下のようなメリットが期待できるでしょう。
- エンゲージメントが高まり、生産性が向上する。
- ヒューマンエラーを防げる。
- 従業員の離職を防げる(従業員が「ここは自分の居場所だ」と感じられるようになる)。
- 顧客に共感することで、顧客満足度が向上する。
- 従業員が達成感や成長感を得られるようになり、従業員満足度が向上する。
- 変革意識が醸成され、変革に向けて行動するようになる。
参考:感情知能(EQ)活用の勧め – 東レ経営研究所(PDF)
また、対人関係が良好になる、ストレス耐性が高まる、ポジティブに考えられるようになる、思考や行動の柔軟性が高まる、より高いパフォーマンスを発揮できるようになるなど、従業員個人にとってもさまざまなメリットがあるといわれています。
感情知能の構成要素
感情知能がどのようなものなのかをより深く理解するために、ここからは、感情知能の構成要素を紹介します。感情知能の構成要素は、『EQ こころの知能指数』の著者であるダニエル・ゴールマン氏の他に、ジョン・メイヤー氏とピーター・サロベイ氏という2人の心理学者によっても定義されています。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
ダニエル・ゴールマン氏による定義
ダニエル・ゴールマン氏は、著書『EQ こころの知能指数』の中で、感情知能は以下の5つの能力から構成されると述べています。
1.自己認識 | 自分自身のことを正しく認識する能力。自分の感情や強み・弱み、価値、目標、周りに与える影響など。 |
2.自己制御 | 自分の感情や衝動をおさえてコントロールする能力。 |
3.動機付け | 目標に向けてモチベーションを持てる・保てる、自分だけでなく周りにも達成感を与えられる能力。 |
4.共感性 | 他人の気持ちを察することができる、思いやりがある。 |
5.ソーシャルスキル | 他人とコミュニケーションをとり、人間関係を調節する能力。 |
また、ダニエル・ゴールマン氏は感情知能が低い人の特徴として、思いやりがない、他人の気持ちを理解できない、感情をコントロールできない、ストレスからすぐに逃げてしまうなどを挙げています。
6種類のリーダーシップ
ダニエル・ゴールマン氏は、2000年にEQに基づくリーダーシップスタイルも提唱しています。スタイルは以下の通り6種類ありますが、優れたリーダーはどれか一つのスタイルに依存するのではなく、状況の変化に応じてリーダーシップのスタイルを変えていると述べています。
- 強圧型……メンバーに強い命令や指示を出し、即座に従うことを求めるスタイル。
- 権威主義型……ビジョンの実現に向けてメンバーを動かしていくスタイル。
- 親和型……メンバーの感情やチームの人間関係、雰囲気を重視するスタイル。
- 民主主義型……メンバーの意見を取り入れて合意を形成するスタイル。
- 先導型……リーダー自身が手本となることで、メンバーに早急に成果を出すことを求めるスタイル。
- コーチ型……メンバー個人の目標達成をサポートし、成長を促すスタイル。
参考:組織のリーダーとして成功を収めるにはEQ(こころの知能指数)が不可欠である ダニエル・ゴールマン 心理学者 | リーダーシップ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
ジョン・メイヤー氏とピーター・サロベイ氏による定義
続いて、アメリカの学者であるジョン・メイヤー氏とピーター・サロベイ氏による感情知能の定義を紹介します。感情知能の理論は、この2人が生み出したものといわれています。
ジョン・メイヤー氏とピーター・サロベイ氏は、感情知能は以下の4つの能力で構成されており、それぞれがバランスよく発揮されることが重要であるとしています。この考え方は、「4ブランチモデル」と呼ばれています。
1.感情の識別 | 自分の感情や他人の感情を識別し、正しく認識する能力。 |
2.感情の利用 | 認識した感情を適切な状態にしたり、相手に共感したりする能力。 |
3.感情の理解 | 認識した感情の特性や生まれた原因を考え、どのように変化するのかを推測する能力。 |
4.感情の調整 | 感情をコントロールして、適切な判断・行動につなげる能力。 |
感情知能を高める方法
では、感情知能はどのようにすれば高めることができるのでしょうか。ここからは、今日から実践できる具体的な方法を紹介していきます。
自分自身を深く理解する
感情知能の構成要素を見てもわかるように、感情知能を高めるには、まずは自分自身の感情や、その感情が周りに与える影響を、正しく認識できるようになることが大切です。その能力(自己認識力)を高めるために、自分の行動や感情を分析して、自分自身に対する理解を深めましょう。
おすすめなのが、「日記を書く」という方法です。自己認識力を高めるためには、今日はどのようなことがあったのか(出来事)だけでなく、そのときに自分がどのような感情になったのかをしっかり記録しておくことが重要なポイントになります。特にネガティブなことがあったときは、そのときの感情をきちんと言語化しておきましょう。
【日記の一例】 (出来事)先輩がミスをしたせいで、私も残業になってしまった。しかも先輩は謝ってくれなかった。 (感情)誰でも間違うことはあるので、ミスがあったことと残業になったことは仕方ないと思う。でも謝罪がなかったことにはとてもイライラしている。相手が後輩や部下であろうと、ミスをしたらきちんと謝るべきだと思う。 |
このような日記を書くことを習慣にすることで、客観的に自分の感情や思考の癖を理解しやすくなります。また、自分が関心を持っていることも知ることができるでしょう。毎日でなくても構わないので、何か感情が大きく動く出来事があったとき、悩んだときだけでも、日記を書いてみてはいかがでしょうか。
共感力を高める
先ほど紹介した感情知能の構成要素から、相手の感情を正しく把握して「共感する」ことも、感情知能を高めるために重要であることがわかります。「共感する」とは、相手の立場になって気持ちを感じ取り、相手の感情に寄り添うことを意味します。
共感力を高める方法としては、以下のようなものが挙げられます。普段から意識して実践してみてください。
- 周りの人に興味を持ち、言葉やしぐさなどを観察する。
- 年齢や性別、国籍、文化、考え方などが異なるさまざまな人と、積極的に交流する。
- コミュニケーションをとるときは「相手の立場になる」ことを意識する。
- 映画を見る・本を読む(登場人物の心理状態を想像しながら)
なお、共感力とは何か、共感力が高い人の特徴や、高める方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
共感力とは?ビジネスで求められる理由や研修での高め方を解説
傾聴力を身につける
「傾聴力」とは、相手の話に真摯に耳を傾け、熱心に「聴く」スキルのことです。相手の話をただ「聞く」のではなく傾聴することで、相手は本音で多くのことを話してくれるようになり、相手のことをより深く理解できるようになります。
傾聴力を高めるために、誰かとコミュニケーションをとるときは以下のポイントを意識してみましょう。
- 自分が話してばかりにならないようにする(※理想的な会話の割合は「話す3割、聴く7割」程度といわれています)。
- 非言語のコミュニケーションにも気を配る(身体の向き、姿勢、態度、目線、頷きなど)。
- 話すスピード、声のトーン、ボリューム、動き、表情などを相手に合わせる。
- 相手の立場になって話を聴く。
相手にリラックスして話してもらうには、話をじっと聴き続けるだけでなく、態度などで「ちゃんと聴いていますよ」「理解できていますよ」ということを相手に示すことも重要なポイントになります。傾聴力の高め方や傾聴のテクニックは、以下で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
傾聴力とは?高めるメリットや研修などでのトレーニング方法を解説
相手の良いところを探す癖をつける
一度「この人は合わないな・苦手だな」と感じると、どうしても相手のネガティブなところばかり探してしまうようになるものです。これでは円滑なコミュニケーションをとるのが難しくなりますし、信頼関係も築けません。誰にでも良いところはありますので、普段から人の良いところを探すことを意識しましょう。
関心の有無で、気づける範囲も変わりますので、まずは相手に関心を持つことが何より大切です。
また、物事の捉え方を変える「リフレーミング」という方法もあります。たとえば、ある人の特徴を「あきっぽい」と説明すれば短所になりますが、これは「好奇心旺盛」「いろいろなことに関心がある」という長所とも捉えることができます。このように視点を変えることで、相手の良いところが見つかることもあります。
マインドフルネスを行う
マインドフルネスとは、「今、目の前のこと」に集中することをいいます。「失敗してしまった」「トラブルが起きたらどうしよう」など、過去や未来のことを考えてネガティブになってしまうことは意外と多いものです。マインドフルネスを行うことで、ネガティブな状態から抜け出し、心の状態を穏やかに保てるようになるといわれています。
また、感情のコントロール能力が鍛えられる、ストレスがたまりにくくなる、パフォーマンスが向上するといった効果もあるとされており、マインドフルネスの研修を取り入れる企業も増えています。「瞑想」などさまざまなやり方がありますので、これを学び、日常生活の中に取り入れるのも、感情知能を高める一つの方法です。
フィードバックを受ける
感情知能を高める方法として、まず自己認識力を高めることを挙げましたが、自己認識(自分が思う自分)と他人から見た自分が同じという人はほとんどいません。この差を知るために、周りの人からフィードバックを受けることも重要です。
ダニエル・ゴールマン氏は、感情知能には「自己認識」「自己管理」「社会性」「人間関係管理」の4つの領域があり、全部で12の特性があるとしています。そして、自己認識と他人から見た自分の差を理解するためには、感情知能の複数の側面を取り入れた360度評価を利用すべきと述べています。
参考:EI(感情的知性)を高める3つの自問 | ビジネススキル|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
従業員の感情知能を高めるために企業ができること
では、従業員に感情知能を高めてもらいたい場合に、企業として何かできることはあるのでしょうか。
感情知能の概念を浸透させる
従業員の感情知能を高めたいなら、まずは感情知能の概念を組織内に浸透させる必要があります。短期間では難しいかもしれませんが、まずはこれが重要です。最近は、感情知能や感情をコントロールする方法などについて学べる研修もあります。そのような研修を社内で実施するのもおすすめです。
チームビルディングを実施する
感情知能は、チームの中にも存在するといわれています。これは、「チームEQ(またはチームEI)」と呼ばれています。
メンバー一人ひとりの感情知能やIQが高くても、チーム内に信頼関係が築けておらず、「チームで動く」という意識が醸成されていないと、なかなか成果にはつながりません。「こうすれば感情知能を高められる」という確実な方法はありませんが、チームEQを高めるにはチームビルディングが有効と考えられます。理由は、以下の通りです。
- アクティビティや課題を通して相互理解が深まるため。
- コミュニケーションのスキル(特に聴く力や、対立を解決するスキル)が鍛えられるため。
- 一緒に成功・失敗することを通じて感情を共有できるので、チーム内に一体感や団結力が生まれるため。
株式会社IKUSAでは、チームビルディングにつながるさまざまな研修を用意しています。お気軽にご相談ください。
まとめ
どれだけデジタル化・自動化が進んでも、やはり人間力がなければビジネスで成功するのは難しいでしょう。感情知能(EQ)は、今後ますます重要になっていくと考えられます。
従業員の感情知能を高めたいなら、企業としてはまずは感情知能の概念を浸透させることが大切です。そのうえで、トレーニングの機会を提供するとよいでしょう。研修を実施するなら、チームビルディングにつながるアクティビティを取り入れるのがおすすめです。個人だけでなく、チームEQの向上が期待できます。
「あそぶ社員研修」は、受講者が主体の研修。心理的安全性が保たれた場で、ワークを通じて「成功と失敗」を擬似体験できます。自ら気づきを得るから、研修後の行動が変わります。
「どの研修が自社に合うかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。目的やご予算に合わせて最適なプログラムをご提案します。
この記事の著者
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