ストレス耐性を高める方法15選!メリットやレジリエンスとの違いを紹介

  • ビジネススキル

ストレス耐性は、現代のビジネスシーンにおいて重要なスキルの1つです。社員のストレス耐性を高めることは、企業の生産性向上や離職率低下に寄与するだけでなく、個々の健康維持にもつながります。

本記事では、ストレス耐性を構成する6つの要素や社員のストレス耐性を高めるメリット、ストレス耐性を高める具体的な方法15選を紹介します

 

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ストレス耐性とは

ストレス耐性とは、ストレスに適応し、適切に対処する能力のことを指します。ストレスは、ストレッサーと呼ばれる刺激によって体に生じる反応のことです。さまざまな視点でストレッサーを考えると5つほどの要因が挙げられますが、そのなかでストレスコーピング(ストレスに対処する方法をビジネスの現場で考える場合の行動)におけるストレッサーの種類としては、以下の3つに注目する必要があります。

  • 物理的ストレッサー:暑さや寒さ、騒音、混雑など、物理的な環境刺激によるストレス要因
  • 心理・社会的ストレッサー:仕事や人間関係など、社会生活におけるストレス要因。
  • 化学的ストレッサー:公害物質や薬物、タバコの煙、強い臭いなどによるストレス要因。

ストレス耐性が高い人は、これらのストレッサーに対して適切に対応し、心身の健康を維持できます。一方でストレス耐性が低い場合、心身の不調や生産性の低下につながる恐れがあります。

ストレス耐性を構成する6つの要素

ストレス耐性は、以下の6つの要素で構成されています。

  • 容量:ストレスを溜め込める量。多いほどストレス耐性が高い。
  • 経験:ストレスを受けた経験。経験を積むことで、ストレスへの対処能力が向上する。
  • 処理能力:ストレスを処理する能力。高いほどストレスを効率的に取り除ける。
  • 感知能力:ストレスを感知する能力。低いとストレスの影響を受けにくい。
  • 回避能力:ストレスを回避する能力。高いほどストレスの影響を受けにくい。
  • 転換能力:ストレスをポジティブに捉える能力。高いほどストレスを成長の機会として活用できる。

これらの要素をバランスよく伸ばすことが、ストレス耐性向上の鍵となります。

ストレス耐性とレジリエンスの違い

ストレス耐性と似ている意味に「レジリエンス」がありますが、これらには以下の違いがあります。

  • ストレス耐性:ストレスに対する対処能力
  • レジリエンス:ストレスから回復する能力

ストレス耐性が高い人は、プレッシャーのかかる状況でも冷静に対処できます。一方、レジリエンスが高い人は、困難を乗り越えた後にさらに強く成長できます。どちらもストレス管理において重要なスキルです。

社員のストレス耐性を高めるメリット

社員のストレス耐性を高めると、以下のようなメリットがあります。

メンタルの不調を未然に防げる可能性がある

社員のストレス耐性を高めることで、メンタルの不調を未然に防止することにつながる可能性があります。

厚生労働省が発表した「令和5年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」によると、「仕事や職業生活でストレスを感じている労働者」の割合は82.7%に上ります。その主な原因は「仕事の失敗、責任の発生等(39.7%)」が最も多く、多くの社員が仕事や職場におけるストレスを抱えながら、業務に取り組んでいることが分かります。

参考:厚生労働省│令和5年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(PDF)

加えて、厚生労働省が発表した「令和5年度 過労死等の労災補償状況」の「精神障害に関する事案の労災補償状況」において、請求件数は3,575件(前年度比892件増)、支給決定件数は883件(前年度比173件増)という結果から、メンタルの不調を訴える労働者は増加傾向にあります。

参考:厚生労働省│令和5年度 過労死等の労災補償状況

このような状況下でストレス耐性を高めることは、メンタルの不調を未然に防ぐ効果が期待できます。

パフォーマンスの維持・向上

ストレスを抱えたままでは、社員のパフォーマンスが低下し、組織全体の生産性にも悪影響を及ぼします。ストレス耐性を高めることで、社員が本来の能力を発揮しやすくなります。

「従業員エンゲージメント」の向上と離職率の低下

ストレス負荷が多い職場では、離職率が高まる傾向があります。社員が働きやすい環境を整えることで、社員が自らの仕事や会社に対して持つ愛情や意欲を指す「従業員エンゲージメント」が向上し、結果として離職率の低下にもつながります。

ストレス耐性を高める方法15

社員のストレス耐性を高める方法を紹介します。各方法における「ストレス耐性を構成する6つの要素」の関連項目も併せて記載していますので、取り組みを行う際の参考にしてみてください。

1.ストレスチェックの実施(経験)

ストレスチェックは、社員の「ストレスの度合い」を把握するための有効な手段です。このデータを活用して、ストレス度合いの高い社員に対する早期支援を行いましょう。

その他にも、特定の部署・部門において高ストレス者が多い場合は、労働環境のチェックや見直しなども検討し、職場環境の改善に繋げましょう。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 「常時50人以上の労働者を使用する事業場」では、「ストレスチェック制度」の実施義務がある。
  • 上記に該当しない事業場においても、定期的に実施することが望ましい。

2.セルフモニタリングの促進(回避能力)

セルフモニタリングとは、自分自身のストレス反応やストレッサーを客観的に把握することです。これにより、ストレスの原因を特定して整理し、理解することで、適切な対処ができます。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 社員に向けたメンタルヘルス研修を実施し、ストレスによって引き起こされる悪影響・問題などに対する理解を深める。
  • 自身の行動を振り返るには、手書きのノートやメモ帳、スマートフォンのメモアプリなど、自身が記録しやすいものを活用するとよい。

3.長時間労働の是正(回避能力)

長時間労働は、社員の心身に大きな負担を与えます。適切な労務管理を行い、ストレスを軽減する環境を整えましょう。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 社員一人ひとりとの面談や聞き取りなどを行い、労働状況を把握する。残業が多い場合はその理由を解明し、必要に応じて業務内容や業務量の調整を行う。
  • フレックスタイム制やリモートワークを導入し、柔軟な働き方を促進する。また、タスク管理ツールを活用して業務の効率化を図る。

4.休暇取得の促進(容量)

十分な休息は、ストレス耐性を高めるのに欠かせません。社員が気兼ねなく休暇を取得できる職場環境を作りましょう。休暇取得率を定期的にモニタリングし、改善策を講じることも大切です。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 特別休暇やリフレッシュ休暇を導入する。
  • トップメッセージとして休暇の重要性を社員に伝える。また、上司が率先して休暇を取得し、部下に休暇取得を促すのもよい。

5.一人ひとりの業務の見直し(回避能力)

どんなに優秀な社員でも、一日で発揮できるパフォーマンスや体力には限界があります。業務が多いことで心身に負担がかかり、結果としてメンタルヘルスの不調を引き起こす可能性もあります。業務内容を見直し、適切な負担配分を行いましょう。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 社員一人ひとりとの面談や聞き取りなどを実施して、業務状況を把握し、業務の過不足を把握する。また、業務改善の進捗状況は定期的に確認し、必要に応じて調整を行う。
  • 社員のスキルや経歴を可視化するスキルマップを作成したり、一括管理できるツールを導入したりして適材適所な人材配置を行うことで、社員のモチベーション維持・向上にもつながる。

6.ワークライフバランスの推進(容量・回避能力)

仕事とプライベートのバランスを整えることで社員の心身の健康を保ち、ストレス耐性を向上させましょう。リモートワークやフレックスタイム制、時短勤務など柔軟な働き方の導入を提供するのも効果的です。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 長時間労働の是正と連携して取り組むとよい。
  • 社員が希望する働き方についてアンケートや聞き取りを行い、実現可能な施策を検討する。

7.社内コミュニケーションの促進(回避能力)

良好なコミュニケーションは、ストレスの軽減につながります。社員同士が気軽に話し合える環境を作りましょう。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • チームビルディング研修や懇親会など、コミュニケーションの活性化を目的としたイベントを定期的に開催する。
  • 社内SNSやチャットツールを導入し、情報共有を円滑化する。

8.面談の実施(回避能力・感知能力)

定期的な面談は、社員が抱えるストレスや悩みを早期に把握し、適切なサポートをするために重要です。特に、上司と11で話す機会を設けることで、社員は安心して相談できるでしょう。

また、ストレス耐性を定期的にチェックできるツールを活用すると、社員一人ひとりの状況を可視化できます。チェックツールには以下のようなものがあります。

  • DIST:対人ストレス・対課題ストレス・対役割ストレス・対環境ストレスの4つに対する耐性を測定できる。また、社員がこれらのストレスを解消しようとする行動の傾向も把握できる。
  • TG-WEB:「G9」と呼ばれるタイプのテストにて、「ストレッサーへの対処能力」を測定できる。
  • 3Eテスト:人付き合い・仕事の負荷量・理想と現実とのギャップ・評価/評判の4項目におけるストレス耐性を測定できる。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 定期的に面談を実施し、継続的に社員の状況を把握する。
  • 面談内容を適切にフィードバックし、必要なサポートや改善策を迅速に実施することが大切。また、面談内容は適切に記録し、必要な場合はプライバシーを保護したうえで、部署や専門家と連携を取るようにする。

9.メンタルヘルス研修の実施(6つの要素全般)

メンタルヘルス研修は、社員がストレスそのものに対する理解を深め、適切な対処法を学ぶための有効な手段です。ストレス耐性を構成する6つの要素(容量、経験、処理能力、感知能力、回避能力、転換能力)を、バランスよく向上させられます。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 研修で学んだ知識をもとにセルフモニタリングを促進することで、研修の効果をより高められる。
  • 管理者向けのメンタルヘルス研修を受け、職場内におけるメンタル不調の予防や早期発見に活かせる知識や取り組みを学ぶ。

10.メンタルヘルス相談窓口の設置(回避能力・処理能力)

社員が気軽に相談できる窓口を設置すると、ストレスを抱え込まずに解決策を見つけられます。特に、匿名性を確保することが重要です。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 相談窓口で対応する担当者には、衛生管理者、産業医、保健師、公認心理士などといった専門スタッフの配置が必要である。
  • 社内窓口とは別に、外部機関に対応窓口を設置する外部EAPEmployee Assistance Program)を活用する方法もある。社外で相談できることや対面以外の相談サービスも充実していることから、他の社員に見られるリスクがなく、相談内容が社内の人たちに知られないという安心感もある。

11.ハラスメントの防止対策(回避能力・処理能力)

職場でのハラスメントは、社員のストレスを増大させる大きな要因です。ハラスメント防止のために具体的な対策を講じ、社員が安心して働ける環境を整えましょう。具体的には、以下のようなハラスメント防止対策を講じることで、早期対処と迅速な対応が可能となります。

  • ハラスメント相談窓口の設置
  • 管理職向けのハラスメント研修の実施
  • ハラスメント発生時の対応方法や罰則の明確化

企業全体でハラスメント防止に取り組む姿勢は、人間関係の改善や業務上のトラブル回避につながり、社員のストレス問題を回避することにもつながります。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 相談窓口は匿名でも利用できるようにする。ハラスメントの被害者以外に目撃者からの問い合わせも受け付けることで、問題の早期発見につながる。
  • 万が一、ハラスメントが起きてしまった場合を想定し、フォローアップ体制や再発防止対策についても確立しておく。

12.職場環境の整備(回避能力)

社員が気持ちよく働ける職場環境は、社員のストレスを軽減し、働きやすさを向上させます。物理的な環境だけでなく、心理的な環境の整備も行いましょう。

  • 物理的環境の改善:照明の明るさ調整、空調設備の見直し、定期的な清掃
  • 心理的環境の整備:社員同士が気軽に意見交換できる場の設置
  • 設備のアップグレード:老朽化した機器や家具の交換

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 職場環境の改善点については社員へ聞き取りやアンケートを実施することで、優先順位を明確にし、効果的な対策を講じやすくなる。
  • 定期的な清掃スケジュールの設定や点検を行い、継続的に環境を整備する。

13.心理的安全性の確保(容量・処理能力・回避能力・転換能力)

心理的安全性とは、組織内で自分の考えや意見を安心して発言できる環境のことをいいます。この環境が整うことで、社員はストレスを感じにくくなり、業務効率やチームのパフォーマンス向上にもつながります。心理的安全性を高めるには、以下のような企業文化の醸成が大切です。

  • 社員全員が気兼ねなく発言できる環境の整備
  • 円滑なコミュニケーションの促進
  • 感謝や賞賛の文化の確立
  • 失敗を受け入れる職場風土の構築

心理的安全性が確保されると、社員は安心してリスクを取ったり、新しいアイデアを提案したりできます。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • チームや個人によって必要な心理的安全性は異なるため、柔軟な対応が求められる。内向的な社員には、匿名で意見を出せる仕組みを提供するなどの工夫をするとよい。
  • 心理的安全性をテーマにした研修やワークショップを定期的に開催し、社員の相互理解を深める機会を設ける。

14.キャリア開発のサポート強化(転換能力・処理能力)

社員がキャリアパスを明確に描けるように支援すると、将来への不安軽減につながります。キャリア開発を企業が支援することで、社員は「企業から大切にされている」と感じ、モチベーションや「従業員エンゲージメント」の向上が期待できます。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 上司と社員がキャリア目標を共有し、進捗確認の場を設ける。社員がスキルアップできるよう、オンライン学習プラットフォームや業界セミナーへの参加を支援するなども効果的である。
  • 社内公募制度や社内インターン制度を導入し、社員が興味のある仕事にチャレンジできる環境を整えるとよい。

15.フィジカルヘルスプログラムの提供(容量・処理能力)

心身ともに健康状態であることは、ストレス耐性を高めるうえで欠かせません。社員の健康をサポートするフィジカルヘルスプログラムを提供することで、ストレス軽減や生産性の向上が期待できます。

施策を講じる際のポイント・注意点

  • 「社員が利用できるジムの会員権を福利厚生で提供する」「健康状態を把握し、専門職による個別相談会などを提供する」などが挙げられる。社内食堂で、栄養バランスを考慮したメニューを提供するのも効果的。
  • ウェアラブル端末を活用し、収集した健康データから社員が自身の健康状態を把握できる仕組みを導入する。

まとめ

現代のビジネスシーンにおいて、ストレス耐性を高めることは、個人の健康維持だけでなく企業の生産性向上や離職率の低下にも寄与します。ストレス耐性を高めるには、ストレスチェックやセルフモニタリングの実施、長時間労働の是正、休暇取得の促進など組織全体での取り組みが求められます。また、社内コミュニケーションの活性化も効果的です。これらの対策を適切に組み合わせることで、社員が安心して働ける環境を整え、組織の持続的な成長に繋げられます。

ストレス耐性の向上は一朝一夕で実現できるものではありません。まずは自社で取り組めそうな部分から、少しずつ取り組んでいきましょう。

 

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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

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