DESC法とは?具体例やメリット・デメリットを解説

  • フレームワーク

仕事をしていると、相手に何か提案をしたり、依頼したりするシーンが多々あるでしょう。「いつも提案が通らない」「誰かに頼むのが苦手」このような悩みを抱えているなら、「DESC法」というフレームワークを使ってみてはいかがでしょうか。

本記事では、まずはDESC法とはどのようなフレームワークなのか、具体例も交えながらわかりやすく解説します。そして、DESC法のメリットとデメリット、DESC法を使うときのポイント、DESC法以外の「伝える」ためのフレームワークも紹介します。

 

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DESC法とは

DESC法(読み方は「デスクほう」)とは、相手のことを尊重しつつ、自分の意見をきちんと主張するためのフレームワーク(思考の枠組み)ですDESCは、Describe(描写する)、Express(説明する)、Specify(提案する)、Choose(選択する)の頭文字をとったもので、この4ステップで自分の意見を相手に伝えていきます。ビジネスシーンはもちろん、家族や友人との会話の中でも活用できるフレームワークです。

DESC法の4ステップ

では早速、DESC法の各ステップを詳しく見ていきましょう。

Describe(描写する)

最初のステップ、Describe(描写する)では、まずは「事実」を言葉で表現します。「事実」とは、その場の状況や、発生している問題、相手の言動などです。

このとき、「~だと思う」「~かもしれない」のような推測や、自分の考えや気持ちなどは入れないようにしてください。あくまでもこれから自分が取り上げようとする「事実」のみを、客観的かつ具体的に表現することがポイントです。

Explain(説明する)

2つめのステップ、Express(説明する)は、ExplainEmpathizeという英単語で紹介されることもあります。このステップでは、自分の気持ちや考え、意見などを「アサーティブ」に相手に伝えます。アサーティブとは、相手のことも尊重しながら自分の考えや意見などを率直に表現することを意味します。感情的にならずに、相手の気持ちに配慮しながら伝えることがポイントです。

このときは、「アイメッセージ」というテクニックを使ってみましょう。アイメッセージとは、主語を「あなた(you)」ではなく「わたし(I)」に置き換えて伝えるというものです。主語を「あなた(you)」にすると、否定的な印象を与えたり、誤解が生まれたりしやすくなりますが、「わたし(I)」にすると、同じ内容でもやわらかい表現で伝えることができます。

【例】

×主語が「あなた(you)」:「あなたの進め方は効率が悪いです。わたしのようなやり方でやってください。」

〇主語が「わたし(I)」:「わたしは、このような進め方にすると、もっと効率がよくなると思います。」

なお、アサ―ショントレーニングについては以下の記事で詳しく紹介しています。

アサーショントレーニングとは?具体的な方法や自己表現のタイプを解説

Specify(提案する)

3つめのステップ、Specify(提案する)では、相手にしてほしいことや、具体的な解決策を提案します。あくまでも「提案」ですので、「命令」や「指示」にならないように注意しましょう。また、「これくらいは言わなくてもわかるだろう」と思うようなことでも、はっきりと伝えるようにしてください。

そして、できるだけ具体的な提案をするというのもポイントです。相手が無理なく実行できるような、現実的で、何かを少し変化させるだけで済むような提案を考えてみましょう。

Choose(選択する)

4つめのステップ、Choose(選択する)では、相手の答えに対して次のアクションを選択します1つ前のステップで提案をしていますので、それに対して相手は、「イエス」or「ノー」のいずれかの反応を返してくれるはずです。その答えに対して、こちらも次に何を伝えるのかを選択します。

相手がこちらの提案を受け入れて「イエス」を返してくれたなら、次にこちらが伝えるのは「ありがとうございます」や「よろしくお願いします」などになるでしょう。しかし、相手にも選択する権利がありますので、「ノー」が返ってくることもあります。そんなときDESC法では、1つ前のSpecify(提案する)に戻り、また別の提案をします。再び「ノー」が返ってくる可能性もありますので、複数の代案を用意しておけるとよいでしょう。

DESC法の具体例

では、DESC法を実際にどのように使うのか、ビジネスシーンでの活用例を紹介します。

価格交渉をするとき

まずは、取引先と価格交渉をするというシーンにおける活用例です。

  • Describe(描写する)

「ご希望の価格での取引を社内で検討させていただきましたが、誠に申し訳ございません。やはり値引きはいたしかねます。」

  • Express(説明する)

「諸経費が上昇しており、弊社といたしましても、現行価格でのご提供が精一杯という状況でございます。」

  • Specify(提案する)

「何卒、事情をご賢察のうえ、現行価格でのお取引をご検討くださいますようお願い申し上げます。」

  • Choose(選択する)

相手が「イエス」の場合:「ありがとうございます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。」

相手が「ノー」の場合:「ご希望の価格であれば、この商品よりも少々機能は少なくなりますが、弊社の〇〇という別の商品もございます。こちらはいかがでしょうか。」

同僚に仕事を頼むとき

次に、同僚に仕事を手伝ってほしいときの活用例です。

  • Describe(描写する)

「明日の正午までに資料を提出しなくてはならないのだけど、この後急な来客の予定が入ってしまった。」

  • Express(説明する)

「あなたも忙しいときに申し訳ないのだけれど、資料の用意を手伝ってほしい。」

  • Specify(提案する)

「〇〇に関する情報収集だけお願いできないかな?」

  • Choose(選択する)

相手が「イエス」の場合:「ありがとう。あなたが大変なときはわたしも手伝うから、いつでも言って。」

相手が「ノー」の場合:「そっか。忙しいときにごめんね。ではあなたの部下の〇〇さんに頼んでみてもいいかな?」

DESC法はアサーションの実践に役立つ

アサーションとは、自分のことも相手のことも大切にしたコミュニケーションのとり方です。アサーションでは、自己表現の方法は以下の4つに分けることができ、このうち「アサーティブな自己表現」が最も理想的とされています。そしてDESC法は、アサーション・トレーニング(アサーティブな自己表現ができるようになるためのトレーニング)の方法としても知られています。

1.アサーティブな自己表現

相手のことを尊重しながら、その場にふさわしい方法で、自分の意見を率直に伝える。

2.非主張的な自己表現

自分の意見を表現しない(できない)、または相手がわからないような伝え方をする。

3.攻撃的な自己表現

自分の意見をはっきり伝えられるが、主張が強すぎる。相手のことを尊重せず、自分の意見を押し通そうとする。

4.間接的な自己表現

表向きは相手にも配慮しているように見えるが、間接的な攻撃をしてくる(例:裏で悪口を言う など)。

参考:看護師を対象としたRathus Assertiveness Schedule 日本語版の作成(渋谷 菜穂子、奥村 太志、小笠原 昭彦) – J-Stage(PDF)

アサーティブな自己表現ができるようになると、仕事でかかわる様々な人たちと、良好な関係を維持しながら、スムーズに仕事が進められるようになるでしょう。また近年は、パワーハラスメントの防止や、職場の心理的安全性向上のために、アサーション研修を実施する企業も増えているようです。

DESC法のメリット・デメリット

様々な場面で活用できるDESC法ですが、どんな場面にも有効なフレームワークというわけではありません。ここからは、DESC法のメリット・デメリットを紹介していきますので、状況に合わせて上手に活用していきましょう。

メリット

紹介したように、DESC法では4つのステップに分けてこちらの考えや意見を伝えていきます。頭に浮かんだことをそのまま相手に伝えるよりも、順序立てて伝えていくことで、相手も話の内容を理解しやすくなります。納得感も得やすくなるでしょう。

また、DESC法を使うことで、先ほど紹介した4つの自己表現のうち、アサーティブな自己表現ができるようになります。DESC法は、相手のことも尊重した伝え方であるため、相手と良好な関係を維持しやすいというメリットもあります。

デメリット

DESC法は、あくまでも「提案」として自分の意見を伝えるものなので、あまり強く主張できないという点は、デメリットといえるでしょう。そのため、明らかに相手が間違っているような場面には適していません。

また、DESC法は、最終的に提案を受け入れる・受け入れないの判断するのは相手です。代案を用意しておかないと話がまとまらない可能性があることも、デメリットの1つといえます。そして、複数の代案を用意していても、なかなか「イエス」をもらえない可能性もあります。結論が出るのに時間がかかることもあるため、緊急性の高い場面や、問題が複雑な場合にも、あまり適していません。

DESC法を使うときのポイント

次に、DESC法を上手に使いこなすためのポイントを紹介していきます。

感情的にならない

自分の意見を主張するときや、その主張を相手が受け入れてくれなかったときも、感情的にならないように注意しましょう。感情的になると、話の内容が伝わりにくくなってしまいます。また、相手が委縮してしまい、言いたいことが言えなくなってしまったり、相手も感情的になってしまって感情のぶつけ合いになったりする可能性もあります。これでは、建設的な話し合いができません。

もちろん、自分の感情を表現することも大切ですが、あくまでも冷静に表現することが重要です。先ほど紹介した4つの自己表現のうち、アサーティブな自己表現で伝えることを意識しましょう。

様々な場面を想定しておく

お伝えしたように、こちらの提案に対して、相手が「ノー」を返してくる可能性もありますので、話し合いをスムーズにまとめられるように、代案を複数用意しておきましょう。意外な反応が返ってくることもありますので、様々な場面を想定して、代案を考えてみてください。

提案は必ず通るものではないことを理解しておく

DESC法は、相手の意見も尊重するコミュニケーションのとり方なので、こちらの意見を押し付けたり、強制したりすることはできません。デメリットの項でもお伝えしましたが、最終判断をするのは相手側です。そのため、複数の代案を用意しておいても、すべてに「ノー」を返されてしまう可能性もあります。DESC法を使う際は、そのことを理解しておきましょう。

DESC法は、あくまでも相手にアプローチする手法の1つです。DESC法にこだわりすぎずに、話し合いの目的や状況に合わせて活用するようにしましょう。

非言語コミュニケーションも大切に

コミュニケーションとは、言葉や文字のやり取りだけを指すのではありません。わたしたちは普段から、非言語の部分でも、様々なメッセージを伝えたり、受け取ったりしています。アサーションにおいても、非言語のコミュニケーションは非常に重要です。

非言語のアサーションには、視覚的なものと、聴覚的なものがあるとされています。視覚的なものとは、たとえば視線や表情、姿勢、動作、人同士の距離、身体的な接触、服装などです。そして聴覚的なものとしては、声のボリュームやスピード、話し方の流暢さや明瞭さ、「あのー」「えーっと」のような余分な言葉の有無などが挙げられます。

DESC法でどれだけわかりやすく話を組み立てても、非言語のコミュニケーションにも気を配らないと、伝わらないこともあります。たとえば、相手とまったく視線を合わせなかったり、聞き取れないくらい早口で話したりすると、相手は「伝える気はあるのだろうか?」「こちらに関心を持ってくれているのだろうか?」など、不安になってしまうでしょう。

DESC法を使うときに限ったことではありませんが、非言語のコミュニケーションも大切にするようにしてください。

参考:27 アサーショントレーニングの理論と実際 – 一般社団法人 日本学校教育相談学会 JASCG(PDF)

DESC法と似ているフレームワーク

DESC法以外にも、相手にこちらの意見をわかりやすく伝えるためのフレームワークがあります。最後に、ビジネスシーンでよく使われるものとして、SDS法とPREP法を簡単に紹介します。

SDS法とPREP法は、短時間でわかりやすく情報を伝えられるという特徴があり、相手の理解を促したいときに適しています。これに対してDESC法は、相手に納得してもらったうえで行動してほしいときに向いているフレームワークです。目的や状況に合わせて使い分けると、ビジネスがよりスムーズに進むようになるでしょう。

SDS

SDS法(読み方は「エスディーエスほう」)は、Summary(要点)、Details(詳細)、Summary(要点)という3つのプロセスで情報を伝えていくというフレームワークです

SDS法を使って、自社商品をプレゼンテーションする場合の例を見てみましょう。

  • Summary(要点)

「業務効率化のために、弊社のプロジェクト管理ツールの導入を提案いたします。」

  • Details(詳細)

「このツールには、タスク管理機能やスケジュール管理機能、進捗管理機能などが搭載されており、プロジェクトを一括管理することができます。状況の把握やメンバー間での情報共有を素早く行えるようになります。」

  • Summary(要点)

「手間のかかる管理業務を効率化し、プロジェクトを円滑に進めるために、プロジェクト管理ツールの導入をご検討ください。」

SDS法は、まず結論(要点)から伝えるので、相手も内容を理解しやすくなります。「結局何が言いたいのですか?」と言われたことがある人は、意識して使ってみてはいかがでしょうか。

PREP

PERP法(読み方は「プレップほう」)は、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)の4つのプロセスで情報を伝えていくというフレームワークです。

PREP法を使って、上司に提案をする場合の例を見てみましょう。

  • Point(結論)

「材料の仕入れ先を、A社からB社に変更したいと考えています。」

  • Reason(理由)

「変更することで、仕入れコストを削減できるためです。」

  • Example(具体例)

「具体的には、A社の単価は〇〇円、B社は△△円ですので、××%のコスト削減が可能です。」

  • Point(結論)

「コスト削減のために、仕入れ先をA社からB社に変更したいと考えているのですが、いかがでしょうか。」

結論で始まり結論で終わるというのは、SDS法と同じですが、PERP法は具体例も提示するので、SDS法よりも説得力があります。SDS法もPREP法も、プレゼンテーションや報告書など幅広く使えるフレームワークですが、SDS法は全体を理解してもらいたいとき、PREP法は自分の意見をしっかりと主張したいときに向いているでしょう。

なお、PREP法については以下の記事でも詳しく解説しています。

PREP法とは?例文・メリット・注意点・その他のフレームワークを解説

まとめ

DESC法を使って、相手のことも尊重しつつ自分の意見を伝えることで、相手と良好な関係を維持しながら、建設的な話し合いができるようになります。ビジネスや日常生活の中で、活用してみてください。その際は、自分の意見をアサーティブに伝えることが重要です。話の構成だけでなく、アサーティブな自己表現になるよう、伝え方や非言語のコミュニケーションも意識してみてください。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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