働きやすさとは?働きがいとの違い・高める方法を紹介

  • 組織・人材開発
    • 組織

働き方改革を実現するために、職場の「働きやすさ」の向上に取り組む企業が増えています。そもそも、働きやすい職場とはどのような職場を指すのでしょうか。

本記事では、まず働きやすさとは何か、働きがいとの違いにも触れつつ、意味をわかりやすく解説します。そして、働きやすさが重要視されている理由、働きやすい職場の特徴、働きやすさを高めるための具体的な取り組み例、働きやすさだけでなく働きがいを高めることの重要性についても紹介していきます

 

受講者が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で実践できる知識・スキルを習得
⇒受講者のスキルアップとチームビルディングをはかる「あそぶ社員研修 総合資料」を無料で受け取る

 

働きやすさとは

「働きやすさ」に決まった定義はありませんが、厚生労働省の資料『令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-』では、“働く人が安心して快適に働ける職場環境を示す概念”と位置づけられています

出典:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-(全体版) – 厚生労働省(PDF)

働きやすさとは何かを一言で説明するのは難しいですが、福利厚生や労働条件、休暇、ワークライフバランスなどに関連が深い言葉と考えられます。

職場がどのような状態であれば「働きやすい」と感じるかは、人それぞれ違います。そのため、働きやすさを向上させるためには、さまざまな角度からのアプローチが必要になります。具体的な取り組みについては、のちほど詳しく紹介します。

働きやすさと働きがいの違い

働きやすさと混同しがちな言葉に、「働きがい」があります。こちらも決まった定義はありませんが、自分が所属する組織で働くことに価値を感じており、意欲的に仕事に取り組めているような状態を意味します。

働きやすさと働きがいの違いについては、「働きやすさは外的要因に、働きがいは内的要因によって変化するもの」と整理されることがあります。たとえば、「マズローの欲求5段階説」という有名なモチベーション理論があります。この理論では、人には5つの欲求があり、下図のように下層の欲求から上層の欲求へと、順番に満たされていくとされています。

生理的欲求(人が生きるための本能的な欲求)、安全欲求(安全に生活したいという欲求)、社会的欲求(他者とかかわりたいという欲求)は働きやすさ、承認欲求(他者に認めてもらいたいという欲求)、自己実現欲求(理想の自分になりたいという欲求)は働きがいに関連が強いものと考えることができます。

また、「ハーズバーグの二要因理論」では、仕事の不満を引き起こす要因を「衛生要因」、満足感につながる要因を「動機づけ要因」に分けています。「衛生要因」には、組織の方針、給与や福利厚生、労働環境などが、「動機づけ要因」には、仕事の達成感、責任や権限、自己成長などが分類されます。この理論で考えるなら、「衛生要因」が働きやすさ、「動機づけ要因」が働きがいに関連するものといえるでしょう。

参考:「働きがい」に着目したこれからの働き方改革とは?(2022年3月4日更新) – 人的資本経営ひろしま。働き方改革 | 広島県

なぜ働きやすさが重要視されているのか

ここからは、企業として職場の働きやすさ向上に取り組むべき理由を解説していきます。

人材の確保・定着のため

近年は、就職先を選ぶ際に、待遇や条件だけでなく、「柔軟な働き方ができるか」「ワークライフバラスがとりやすいか」といった点も重視する人が増えています。企業として職場の働きやすさ向上に取り組んでいることを発信し、求職者に「働きやすそう」と感じてもらうことができれば、求人への応募も集まりやすくなるでしょう。

また、人材の流出をどのように防いでいくかということも、多くの企業で課題となっていますが、職場の働きやすさを高めることで、人材が定着しやすくなるというメリットもあります。実際に、厚生労働省の資料『目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」』では、働きやすさのある職場のほうが、社員の勤務継続の意向が強いというデータが紹介されています。

出典:目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」 – 厚生労働省(PDF)

業績向上のため

職場の働きやすさが向上すると、社員の仕事に対する意欲も高まりやすくなります。その結果、社員が安定して高いパフォーマンスを発揮できるようになれば、業務効率化や生産性向上、業績アップにつながることも期待できるでしょう。

前項でも紹介しました厚生労働省の資料では、働きやすさのある職場のほうが、社員の意欲、会社の業績とも高い傾向があるというデータも紹介されています。

出典:目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」 – 厚生労働省(PDF)

法律に定められているため

労働安全衛生法第71条の2には、次のように定められています。

“事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、(中略)快適な職場環境を形成するように努めなければならない。”

出典:労働安全衛生法 | e-Gov法令検索

同法第71条の3に基づき、事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針も定められています。事業者に求められている措置を、簡単にまとめます。

1.        作業環境の管理
空気の汚れ、温度、照度などが、労働者に適した状態に維持管理されるようにすること。

2.        作業方法の改善
不自然な姿勢での作業、大きな筋力を必要とする作業などは、作業方法を改善し労働者の心身の負担が軽減されるようにすること。

3.        労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
疲労回復を図るための施設(休憩室など)の設置・整備を図ること。

4.        その他の施設・設備の維持管理
職業生活で必要になる施設・設備(洗面所やトイレなど)が、清潔で使いやすい状態に維持管理されていること。

出典:事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針(◆平成04年07月01日労働省告示第59号)

また、労働契約法第5条には、次のような定めもあります。

“使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。”

出典:労働契約法 | e-Gov法令検索

これは、「安全配慮義務」と呼ばれるものです。

これらを果たすためにも、企業として働きやすさ向上に取り組んでいく必要があります。

働きやすい職場の特徴

厚生労働省の資料『目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」』では、働きやすさを高めるには、社員が「自分は期待されている、役に立っている」という意識(自己効力感)が持てるような雇用管理が重要であるとされています。具体的には、次のような雇用管理を行っていると、社員に働きやすいと感じてもらいやすいでしょう。

  • 社員が希望するスキルや知識を学べる研修を実施している。
  • 社員の希望をできるだけ尊重して人員を配置している。
  • 社員の意見を吸い上げるようにしている(提案制度など)。
  • 余暇活動を支援する福利厚生がある。
  • 社員の意見を経営計画に反映している。
  • メンター制度を導入している。
  • 経営情報を社員にも開示している。

出典:目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」 – 厚生労働省(PDF)

また、このような雇用管理に加えて、人間関係やコミュニケーションが良好であること、有休が取りやすいこと、労働時間が適切であること、柔軟な働き方ができることなども、働きやすさを高めるためには重要と考えられます。

ただ、冒頭でもお伝えしたように、働きやすさを感じる要因は人それぞれ違います。働きやすさ向上のために何を重要と考えるかは、年齢や性別などによっても異なるでしょう。職場の働きやすさを高めるためには、自社の社員が何を求めているか、職場で何が課題になっているかを把握し、適切な策を講ずることが大切です。

職場の働きやすさを高めるために企業ができること

ここからは、職場の働きやすさを高めるための具体的な取り組みを紹介していきます。

作業環境の整備

作業がスムーズに進められないと、「働きにくい」と感じるだけでなく、それがストレスになってしまうこともあります。作業環境が整っていないと、作業効率も落ちてしまいます。まずは、社員が集中してスムーズに仕事を進められるように、オフィスや作業場の物理的な環境を見直してみましょう。

具体的には、温度・湿度・照明等を社員にとって適切な状態に調整する、レイアウトを変更して動線をつくる、社員がリフレッシュできるようなリラックススペースを設置するなどの取り組みが考えられます。

ワークライフバランスの推進

働きやすさは、ワークライフバランスと関係が深いものと考えられます。社員が仕事とプライベートの両方を充実させることができるよう、ワークライフバランスを推進していきましょう。

具体的には、テレワークやフレックスタイム制といった多様な働き方を導入する、残業時間を削減する(労働時間をきちんと管理する、「ノー残業デー」を設けるなど)、休暇制度の利用を促進するなどの取り組みが考えられます。

社内コミュニケーション活性化

企業の仕事は、ほとんどがチームで取り組むものです。仕事で成果をあげるためには、コミュニケーションが欠かせません。社内コミュニケーションを活性化させると、仕事をよりスムーズに進められるようになるでしょう。また、良好な人間関係を築きやすくなるため、社員のストレスも減り、働きやすさの向上につながります。

具体的には、部門・部署をまたいだ交流会や食事会を開催する、1on1やメンター制度を導入する、提案制度を導入する、社内SNSを活用するといった方法が考えられます。または、研修などでコミュニケーションゲームを実施するのもおすすめです。コミュニケーションゲームとは、その名の通り参加者同士でコミュニケーションをとりながらクリアを目指すゲームのこと。「あそび」の要素を取り入れることで、自然なコミュニケーションが生まれやすくなります。おすすめのコミュニケーションゲームは、こちらの記事で紹介しています。

コミュニケーションゲームのおすすめ10選!エンゲージメント向上につながるゲームを紹介

ハラスメント対策

パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなど、職場で起こるさまざまなハラスメントが問題になっています。ハラスメントが発生すると、働きやすさが低下するだけでなく、メンタルヘルス不調者が出てしまったり、法的に責任を問われたりなど、さまざまな悪影響がもたらされる可能性があります。ハラスメントのなかには、行為者が無自覚というケースもありますので、「うちは大丈夫」と思わずに、しっかりとハラスメント対策を行いましょう。

具体的には、ハラスメントに関する研修を実施する、定期的にアンケート調査を実施して現状を把握する、相談窓口を設置するなどの対策が考えられます。

人事評価制度や配置の見直し

現在の人事評価制度や配置が、社員が「自分は認められている」と感じられるようなものになっているかどうか、一度見直してみましょう。

人事評価制度については、明確な評価基準を設定するだけでなく、本人が「なぜこの評価になったのか」を理解・納得できるように、きちんと説明やフィードバックをすることも忘れないでください。配置については、「本人の希望が尊重されているか」という点も重要なポイントですので、ジョブローテーションや社内FA制度を導入するというのも一つの方法です。

教育や研修制度の充実

働きやすさを高めるためには、社員のスキルアップを支援することも重要です。社員が成長できる機会や、自分の成長を感じられる機会を提供していきましょう。

たとえば、研修です。新入社員研修のように毎年実施している研修だけでなく、社員が希望する知識やスキルが学べる研修を積極的に開催すると、働きやすさの向上が期待できます。その他にも、自己啓発や資格取得を補助する、OJTを実施するなど、教育・研修の内容も一度見直してみてはいかがでしょうか。

福利厚生の充実

社員が健康でいきいきと働けるように、福利厚生も充実させましょう。とにかく福利厚生の数を増やせばよいということではなく、社員のニーズを把握して、目的を明確にしたうえで充実させていくことが重要です。

厚生労働省の資料『働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書(概要)』では、余暇活動の支援や、健康づくりのための支援、心の健康に関する支援などが実施されている場合、それらが実施されていない場合と比べて、「働きやすい」または「どちらかといえば働きやすい」と回答する割合が高いというデータが紹介されています。

出典:働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書(概要) – 厚生労働省(PDF)

働きやすさに関する調査の実施

先ほどお伝えしたように、働きやすさ向上のために何が重要と考えるかは、人それぞれ違います。社員のニーズを把握しないまま取り組みを実施すると、的外れになることもあるかもしれません。社員が何を求めているのか、働きやすさの意識はどの程度なのかを把握したうえで、取り組みを進めていきましょう。

定期的に面談やアンケートを実施するという方法もありますが、満足度やモチベーションなどを可視化できる「従業員サーベイ」を実施するのがおすすめです。便利なサーベイツールを活用すれば、結果の分析も容易に行うことができます。

働きやすさだけでなく「働きがい」にも取り組む重要性

真の働き方改革を実現するためには、働きやすさだけでなく、働きがいも高めていくことが重要です。

現代の日本は、「働きやすさは高いが、働きがいが低い」企業が増えているともいわれています。このような状態になると、社員が権利ばかりを主張するようになってしまう可能性があります。たとえば、必要な残業をしない、メンバーと調整をせずに自分の都合だけで有休をとるなどが挙げられます。このような社員が増えると、企業としても成長していくことが難しくなります。

働きがいを高めると、社員は自分の役割や責任を果たすために自律的に動くようになります。このような社員が増えれば、組織全体の生産性が向上し、業績アップや企業価値の向上にもつながるでしょう。

厚生労働省の資料でも、働きがいのある職場のほうが、社員の意欲、勤務継続の意向、業績とも、より高い傾向があるというデータが示されています。

参考:目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」 – 厚生労働省(PDF)

企業の持続的な成長のために、働きやすさ向上と働きがい向上の両方に取り組んでいきましょう。なお、働きがいを高める方法は以下の記事で解説しています。

働きがいとは?高めるメリットや企業ができることを紹介

まとめ

快適な職場環境の形成や労働者の安全を確保することは、法律にも定められています。これらを果たすためにも、企業として働きやすさの向上に取り組んでいく必要があります。

職場の働きやすさが向上すると、人材の定着や業績アップにつながることも期待できます。ただ、このためには同時に働きがいを高めていくことも重要と考えられます。働きやすさだけでなく、働きがいの向上にも取り組んでいきましょう。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。

⇒あそぶ社員研修 総合資料を受け取る

この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

よく読まれている記事