ワークショップの手法15選!研修に導入するポイントを解説

  • 研修ノウハウ

人材育成において、研修は欠かせない手段です。最近ではビジネス研修でワークショップ形式を取り入れる企業が増えてきました。ワークショップとは、受講者が主体となって行う体験型の講座のことです。受け身型の学習と異なり、実践的な知識や技術を学ぶことができます。しかし「具体的には何をしたら良いのか」「どのような手法があるのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。

本記事では、ワークショップの概要、研修に導入するメリットや実践のポイント、手法15選を解説します

 

受講者が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で実践できる知識・スキルを習得
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ワークショップとは

ワークショップとは、「参加体験型の学習方法」のことで、グループ学習・講座・研究集会で用いられます。本稿では、研修におけるグループ学習を目的としたワークショップについて説明します。

ワークショップは、与えられたテーマに対して受講者それぞれが自主的に考え、他のメンバーとお互いに協力しながら目的やゴールに向かって対話や共同作業を行うのが特徴です。受講者はただ話を聞くだけでなく、主体的に考えたり行動したりすることで当事者意識が得られやすくなるため、意欲の向上や知識の定着、新たなアイデアの創出を期待できます。さらに、全員が共通の目標に向かって力を合わせることで、達成感や一体感が生まれやすくなるのもメリットです。

セミナーとの違い

セミナーもワークショップと同じく、あるテーマについて学習や研究を行うための勉強会です。ただし、ワークショップが体験型の学習であるのに対して、セミナーは講師から受講者へ情報を伝えるものが多いという違いがあります。セミナーでの学習は「講義を受ける」ことがメインとなるため、受講者は受け身になりやすいといえるでしょう。最近では、ワークショップ形式での学習効果が注目され、1部は講師による講義、2部はワークショップでのグループ学習などといったプログラムで、ワークショップの要素を取り入れたセミナーも増えています。

ワークショップを研修に導入するメリット

ワークショップを研修に導入することで、以下のようなメリットが得られます。

受講者が自ら体験して学べる

ワークショップでは、受講者がさまざまな体験を通して学習を行います。講師の話を聞くだけで「わかったつもり」になるのではなく、自らの行動を通じて学ぶことで、より理解が深まるでしょう。学んだ知識はロールプレイングなどを通して実行するため、翌日からの業務で活用できる実践的なスキルを身につけることができます。

当事者意識や達成感を得られやすい

ワークショップでは、受講者が主体的に参加するため、与えられたテーマに対して当事者意識が高まります。当事者意識を持って主体的に学ぶことで、成果や達成感を得られやすいでしょう。

コミュニケーションスキルが養われる

ワークショップでは、受講者がグループに分かれて意見交換をする機会が多く、コミュニケーションスキルの向上につながります。社内研修にワークショップを取り入れれば、普段の業務では顔を合わせる機会が少ない社員同士のコミュニケーションの活性化が期待できるでしょう。特に、これから人間関係を築く新入社員や、社内外で人と関わる機会が増える中堅社員向けの研修と親和性の高い手法といえます。

多様な価値観と触れ合える

ワークショップでは、グループ討議やロールプレイングを行うことが多いため、それぞれに異なる背景を持つ受講者との交流が生まれ、多様な価値観や意見に触れることができます。自分とは違うものの考え方・捉え方を知ることで視野が広がり、多角的な視点で物事を捉えることが可能となるでしょう。

ワークショップを実践する際のポイント

ここからは、ワークショップを実践するためのポイントについて見ていきましょう。

目的・ゴールを明確にする

一番に目的やゴールを明確にすることが大切です。ワークショップのテーマや開催意図を決める前に、何のためにワークショップを開催するのか、目指すのはどのような状態かを決めましょう。目的とゴールをあらかじめ受講者に共有することで、受講者の意識が高まる他、一貫性を持って最後まで取り組めるようになります。

準備を整える

ワークショップをスムーズに進行するために、事前準備をしっかり行いましょう。特に会場選びは大切です。予算と人数に合わせて適切なスペースを確保しましょう。駅からのアクセスが良く、設備が充実した会場がおすすめです。

マイクやプロジェクターを使う場合、機材トラブルが起きやすいので、開催前にテストする時間を設けましょう。ペンや付箋などの備品も準備する必要があります。何枚使うかわからない用紙や付箋は、多めに用意しておくと安心です。

また、ワークショップは受講者が思考に集中したり、グループ討議が白熱したりして時間が超過する可能性が高いため、タイムスケジュールを作成しましょう。

参加しやすい雰囲気をつくる

ワークショップでは、場の雰囲気づくりも重要な課題です。過度に堅苦しい場にしてしまうと発言しづらくなりますが、かといって雰囲気が緩すぎると建設的な話し合いになりません。

ワークショップを成功させるために、以下のポイントを意識しましょう。

  • ファシリテーターを置く

ファシリテーターとは、ワークショップを円滑に進行するためにサポートする人物のことです。受講者に発言を促したり、話をまとめたりして、学びを促進します。また時間配分やルールの浸透を図ることもあります。過剰な口出しをするのではなく、一歩引いて中立の立場から見守れる人が適任です。

  • グループの人数を考慮する

グループの人数は少なすぎても、多すぎても活発な議論が難しくなってしまいます。カリキュラムに応じて適切な人数を設定しましょう。

  • 机の配置を工夫する

グループで輪になって話せるように机を配置します。可能であれば、全員の顔が見える状態が望ましいでしょう。

  • BGMを流す

受講者がリラックスして発言できるようにBGMを用意しましょう。ただし、選曲によっては逆効果になることがあるので注意が必要です。歌詞のある音楽は、受講者の集中力を妨げる可能性があるため避けましょう。受講者の緊張感をほぐしたいときは穏やかなBGM、発言を促したいときはテンポの速いBGMなど、状況に応じた音楽を選ぶことが重要です。

個人ワークをプログラムに入れる

ワークショップはグループで取り組むものというイメージが強いかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。いきなりグループワークを始めても考えがまとまらず「発言できない」「他の受講者の考えに流されてしまう」という人もいるため、まず個人ワークの時間を設けると良いでしょう。自分の考えを整理してからグループワークに入ると、話し合いが活性化しやすくなります。

講義で学んだことを振り返り、定着させる方法としても、個人ワークは有効です。個人の振り返りをグループで共有することで、より効果を高めることができます。

フィードバックと振り返りを行う

ワークショップが終わったら、ワークショップ中に自分がとったコミュニケーションや行動が適切だったかを振り返り、改善案を考えましょう。良かった点や課題点を可視化することで、次の活動につなげることができます。受講者同士でフィードバックを行い、学んだことを実践に活かす方法を考えるのも有効です。

ワークショップの手法15

ワークショップの代表的な手法として、以下の15個の手法が挙げられます。

1.ブレインストーミング

ブレインストーミングとは、集団でアイデアを出し合って、発想の誘発を期待する技法です。10人以下のグループで、意見やアイデアをホワイトボードや付箋に書き出し、関連するもの同士をまとめます。出されたアイデアに対して批判や否定をしないのがルールです。自由に意見を出し合うことで、新たな発想がもたらされる効果が期待できます。

2KJ

KJ法とは、ブレインストーミングなどによって生まれた断片的な意見・アイデアを効率的に整理し、問題解決に結びつけていくための手法です。付箋1枚1枚に情報を記し、それを並べ変えたりグルーピングしたりして、情報を整理していきます。KJ法を繰り返すことで、より問題解決に近づく本質的なアイディアを得ることが可能です。

3.ジグソー法

ジグソー法とは、複数の断片的な情報を組み合わせ、受講者同士が協力して物事の全体像を浮かび上がらせる手法で、アクティブラーニングの1つです。各メンバーに断片的に与えられた情報を、最終的にジグソーパズルのように1つの形にまとめます。自分しか知らない知識や情報をお互いにわかりやすく説明する必要があるため、コミュニケーション能力や情報を整理する力が養われます。

4.ペーパープロトタイピング

プロトタイピングとは、試作モデル(プロトタイプ)を作成し、事前検証を行うことで、開発効率を高める手法ですペーパープロトタイピングでは、紙とペンを使って簡易的にプロトタイプを作成するため、専門的な技術がない人も参加できる点がメリットです。また、アイデアを具体化するプロセスを再現することで、スピーディーに改善案を出すことができます。

5.バリューグラフ

バリューグラフとは、製品やサービス、事業の価値(バリュー)・目的を構造的に可視化し、アイデアや理解の幅を広げる手法です。起点となるテーマ(〇〇)を設定したうえで、「なぜ〇〇が必要なのか?」といったWhyの問いかけを行うことで「△△するため」というような上位の目的を明確にします。このステップを繰り返すことで、起点となるテーマから想像できなかったようなアイデアを探すことを目指します。本質的な目的や価値を追求することで、今まで常識にとらわれていたバイアスを外し、視野を広げることが可能です。

6.シンク・ペア・シェア

シンク・ペア・シェアはアクティブラーニングの技法の1つです。与えられたテーマに対して、1人で考えをまとめ(Think)、それをペア(Pair)になって共有・議論し、さらにその内容を全体で共有(Share)します。自分の考えを明確にし、他者と比較することで、より良いアイデアに仕上げていくのに有効です。

7.ラウンド・ロビン

ラウンド・ロビンは、46人のグループに分かれ、意見やアイデアを順番に述べていくもので、ブレインストーミングの簡易版です。発言の内容に対する批判やコメントをせず、どんどん新しいアイデアを出すことに注力するため、柔軟な発想力を養うことができます。

8.ピア・レスポンス

ピア・レスポンスは、仲間(Peer)と協力しながらレポートやプレゼンテーションなどを推敲していくワークです。受講者はペアもしくは少人数のグループになり、自分たちの書いた作文に対してお互いにコメントをします。書き手と読み手両方の視点を経験することで、読解力や聴く力が養われ、独りよがりにならない表現力を身につけることができます。

9.ロジックツリー

ロジックツリーは、ある事柄の問題をツリー状に書き出し、根本となる原因を理解して問題解決策を導き出すフレームワークです。幹から枝分かれをする樹木のように、1つの物事を分解することで、物事が体系的に整理され、客観的な視点で捉えることができます。

10.マイクロ・ディベート

マイクロ・ディベートは、ディベートの簡易版です。受講者は肯定側と否定側の立場に分かれ、限られた時間のなかで議論を交わします。どちらの立場に立つかは個人の考えとは関係なく割り振ります。説得力のある主張が必要となるため、相手の意見を客観的に分析する力や、明確なメッセージを発信する力が鍛えられます。

11.ワールドカフェ

ワールドカフェは、カフェのようなリラックスした雰囲気のなかで、オープンな会話を行うワークショップです。受講者は少人数に分かれて自由に意見を交換し、他グループとメンバーを入れ替えながら対話を繰り返します。お互いの理解を深めることで、新たな気づきやアイデアを得られます。

12.親和図法

親和図法は、親和性のある情報やアイデアをそれぞれまとめることで、問題の本質を導き出す手法です。似たもの同士をまとめながら整理していくことで、問題の全体像を把握でき、取り組むべきポイントが明確になります。

13.マトリクス法(強制連想法)

マトリクスは、縦・横の2つの軸を用いて物事を整理していく手法です。代表的なものとして、タスクの優先順位づけに用いられる「重要度・緊急性」を指標にしたマトリクスがあります。マトリクス法(強制連想法)では、マトリクス図を用いて情報を可視化することで、物事の全体像がわかりやすくなります

また縦軸と横軸にそれぞれ異なるテーマを設定し、それらの要素を組み合わせて新しいアイデアを考え出すという活用方法もあります。

14.エレベーターピッチ

エレベーターピッチは、エレベーターに乗っているくらいの短い時間(15〜30秒)で行うプレゼンテーションです。短時間で相手を惹きつけるトーク術を実践的に学ぶことができます。

15 KP法(紙芝居プレゼンテーション法)

KJ法は、伝えたいキーワードを紙に書き、それをボードに貼りながら話をするというシンプルなプレゼン手法です。思考を整理して、わかりやすく伝える力がつきます。紙とホワイトボード、マグネットがあれば、誰でもどこでも、すぐにできる点も魅力です。

ワークショップが効果的な研修テーマ

研修にワークショップを取り入れることで、学びの効果を高めることが可能です。ここでは、ワークショップが効果的な研修テーマを紹介します。

コミュニケーション研修

コミュニケーション研修は、ワークショップと親和性の高い研修テーマの1つです。コミュニケーション能力を獲得するためには、座学だけでは実践的な力はなかなか身につきません。周囲と実際にコミュニケーションをとるのが効果的です。ロールプレイを取り入れたワークショップを行うことで、実務や現場に近い状況を体験することができます。

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交渉術・ネゴシエーション研修

株式会社IKUSAが提供するコミュニケーション研修の1つ「交渉術・ネゴシエーション研修」では、ビジネスゲーム「ワールドリーダーズ」を実施します。「ワールドリーダーズ」では、受講者は企業の経営者となって戦略立案や交渉を行い、チームごとに利益を競い合います。自らの要望を伝えたり、相手の要望を汲み取ったりするなかでコミュニケーション能力を育みます。ゲーム振り返り・講義まとめとして個人ワーク・フィードバックのサイクルで実施することで、学びを定着させることが可能です。

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合意形成研修

合意形成(意見が食い違っている時に、お互いの意見を納得のいく形で一致させること)はビジネスのさまざまな場面で求められ、目的を共有したり、業務を円滑に進めたりするために不可欠です。しかし、ビジネスモデルが複雑化している現在、合意形成はますます難しくなっています。複数の受講者が自分の考えや意見を出し合うワークショップでは、合意形成をとっていくプロセスを体験できるため、より理解を深めることができます。プログラムにコンセンサスゲーム(合意形成を目指すゲーム)を活用するのもおすすめです。コンセンサスゲームとは、複数人でコンセンサスをとる重要性や具体的な方法を実践的に学ぶことができるアクティビティで、ゲーム感覚で楽しみながら、他人と合意形成していく過程を学ぶことができます。

「合意形成・アサーティブコミュニケーション研修」は、コンセンサスゲームに、講義、個人ワークを組み合わせた研修です。コンセンサスゲームでお互いを尊重しながら意見を交わすコミュニケーションを実践的に学んだ後に、自己の学びの振り返り、改善策を話し合うことで、学習の定着を図れます。各グループには経験豊富なファシリテーターがつき、ルールや進め方がわからない場合も徹底的にサポートするので安心です。

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防災研修

地球温暖化の影響から自然災害が顕著に激甚化・頻発化しているなか、企業の防災対策が、事業継続に必要不可欠となっています。防災ワークショップは、受講者が防災に興味を持つきっかけづくりにおすすめです。大掛かりな防災訓練に比べて、ゲーム感覚で気軽に、初心者でも無理なく参加できます。

防災研修は、体験型ワークと講義がセットになった研修です。遊び感覚で楽しめるアクティビティ、対策を検討する講義・ワークショップ、まとめとしての振り返り・フィードバックを通じて、学習の定着化を図ることができます。災害時のシチュエーションを疑似体験できるアクティビティでは、ただ話を聞くだけでなく、受講者が主体となって課題に取り組むため、当事者意識が生まれやすいのがメリットです。災害対策の知識や実践スキルを習得し、学びを翌日の業務から活かすことができます。

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まとめ

ワークショップは、受講者の主体性を重視する学習スタイルです。与えられたテーマや課題に対して意見交換をしながら他の受講者と共同で作業を行います。メンバー同士の交流の機会が多いため、受講者の満足度が高いのが特徴です。一口にワークショップといっても、さまざまな手法があります。研修の意図や目的に応じて、適した手法を選択することが大切です。今回の記事を参考に、ぜひ効果的なワークショップを実施してください。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

masaki

福岡在住。大学を卒業後、大手食品メーカー勤務を経て、異業種のライターへ転身。求められている情報をわかりやすく伝えることがモットー

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