人材育成方針とは?定め方とポイント・事例を紹介

  • 組織・人材開発

企業が発展し続けていくためには、そのなかで働く「人」の存在が欠かせません。活躍してくれる人材を育成するためには、さまざまな施策や研修などが必要になります。それらを効果的に、効率よく実施していくために重要なのが、人材育成方針です。

本記事では、人材育成方針とは何か、必要性についてまず解説し、人材育成方針の定め方とポイント、人材育成方針を定めている企業と自治体の事例を紹介します

 

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人材育成方針とは

人材育成方針とは、企業にとって必要な人材を明確に定義し、社員にそのような人材になってもらうために、どのような育成を行っていくかを定めたもののことをいいます

必ず定めなければならないものではないので、人材育成方針がない企業もあります。しかし、人材育成方針がないと、人材育成の施策にまとまりがなくなってしまう恐れがあります。「自社にはどのような人材が必要なのか」が明確になっていないと、何が足りないのか・どのように育成に取り組んでいくべきかが見えにくくなります。そのような状態で何か施策を実行しても、高い効果は期待できないでしょう。

人材育成方針があれば、目指すゴールに向けて計画的に育成を行えるようになります。また、適切な人事評価や、人材配置を行うためにも、人材育成方針は必要です。

企業によっては、階層別、職種別に人材育成方針を定めているケースもあります。企業の成長のために、人材育成方針を策定してみてはいかがでしょうか。

人材育成方針の必要性

なぜ、明確な人材育成方針を定めておくべきなのか、その理由を、もう少し詳しく見ていきましょう。

企業としての考え方を明確にできる

人材育成方針があれば、企業がどのような人材を求めているのか、そのためにどのように育成に取り組んでいくのかといった、企業としての考え方を社員に明確に示すことができます

自分が目指すべきゴール(求める人物像)を示されないまま、「この研修を受けてきてください」といわれても、社員は研修を受ける意味を理解できません。また、意欲も湧いてこないでしょう。社員の意欲が低いままでは、せっかく研修を実施しても、高い効果は得られません。人材育成方針を定め、企業としての考え方を示すことは、社員の成長意欲を高めるためにも重要です。

人材育成方針を定め、企業としての考え方を社員に示すことで、企業と社員が同じ方向を向いて進んでいけるようになります。

人材育成をスムーズに進めるため

求める人物像が明確に定められていないと、現状と理想との間にどれくらいのギャップがあるのかを測ることができません。社員に成長してもらうためには何が必要なのか、研修はどのような内容にすべきなのかが見えにくくなります。人材育成方針がないと、教育や研修がどれも単発で終わってしまう恐れがあるでしょう。

人材育成方針を定め、求める人物像を明確にすることで、現状何が足りないのかを的確に把握できるようになり、社員にどのようなスキル・知識を身につけてもらうべきかが明確になります。必要な施策や、研修プログラムの内容、それらを実施すべきタイミングなども考えやすくなるでしょう。

人材育成方針を定めることで、人材育成を体系的に行えるようになるので、全体がスムーズに進むようになります。効果的な取り組みを効率的に実施していくために、人材育成方針を定めておくことをおすすめします。

 

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人材育成方針の定め方

人材育成方針の策定は、大きく分けて以下の3ステップで進めていきます。

  • ステップ1:現状を把握する
  • ステップ2:求める人物像を定義する
  • ステップ3:具体的な取り組みを考える

各ステップで何をするのか、詳しく解説していきます。

ステップ1:現状を把握する

人材育成方針の策定は、まずは現状を把握するところから始めましょう。このステップで具体的にやることは2つあります。

1つめは、現在の社員のレベルを把握することです。現時点で能力やスキルのレベルはどのくらいなのか、どのような役割を担っているのか、成長意欲の度合いや、クリアするべき課題などを、部署や年齢層ごとにまとめてみましょう。この際、しっかりと現状を把握するために、現場のことをよく理解している各部署の管理職にヒアリングをするのがおすすめです。効果的な人材育成を行っていくためには、管理職の協力が欠かせません。ヒアリングを実施することで、管理職が当事者意識を持てるようになることも期待できるでしょう。

2つめは、企業の理念やビジョンについて理解を深めることです。企業の理念やビジョンは、企業が何のために存在しているのか、どのように社会の役に立つのか、最終的に何を実現したいのかといった、企業の方向性を明確にしたものです。人材育成方針は、これらに沿ったものでないと意味がありません。企業の理念やビジョンについて理解を深め、改めて企業がどこに向かって進んでいきたいのかを、長期的な視点で考えてみましょう。これは、必ず経営陣とともに行い、認識にズレが生じないようにすることが重要です。

ステップ2:求める人物像を定義する

次は、企業が求める人物像を明確に定義するステップです。前のステップで、企業の方向性を確認できたはずなので、それを踏まえて、企業にはどのような人材が必要なのかを具体的に考えていきましょう。

求める人物像とは、いわば「最終目標」です。これだけでは、具体的な取り組みをイメージしづらいので、5年後にはこうなってほしい、10年後にはこうなってほしいというように、段階に分けて考えてみるとよいでしょう。長すぎないスパンで、マイルストーン(中期的な目標)も設定してみてください。なお、人材育成方針は定期的に見直しをすることも大切です。あまり細かくマイルストーンを設けすぎると、見直し作業が大変になるので、適度なスパンで設定しましょう。

そして、目標は現場の声を考慮して設定することも重要です。現場の声を無視すると、社員の共感や協力を得づらくなります。

目標が明確になると、社員に求められる役割や、必要なスキル・知識が見えてくるはずなので、それらとステップ1で明らかになった社員の現状を比べてみましょう。すると、現状何が不足しているのか、そのなかでも特に優先して補わなければならない部分はどこなのかといった点が、明らかになってくるはずです。

ステップ3:具体的な取り組みを考える

ステップ2までで、現状と理想のギャップが明らかになったはずです。最後に、そのギャップを埋めるための具体的な取り組みを考えていきましょう

たとえば、現状で不足しているスキルがあるなら、それを習得するための研修を実施するという方法が考えられます。企業として、「社員には自ら成長し続けられる人になってほしい」と考えているなら、成長機会として社内公募制度やジョブローテーションといった制度を導入するのも1つの方法です。

他社の取り組み事例も参考にしながら、自社の文化や風土にマッチする取り組みを考えてみましょう。のちほど人材育成方針を定めている企業の取り組み事例も紹介しています。よろしければ、そちらも取り組みを考える際の参考にしてみてください。

人材育成方針を定める際のポイント

よりよい人材育成方針とするために、策定の際は、以下のポイントを意識してみてください。

実現可能なものとする

高すぎる目標を設定してしまうと、達成するためにはそれだけ多くの時間とコストが必要になります。多くのことを実行しようとすれば、育成担当者の負担も大きくなるでしょう。また、育成される側としても、高いレベルを求められることでストレスを感じたり、企業に対して不信感を抱いたりすることもあるかもしれません。

目標は、現場のことも考慮しながら、現実的に実現可能なレベルに設定することがポイントです

定めた方針は社員に共有する

せっかく人材育成方針を定めても、その存在を社員が知らないままでは、効果的な育成を行うことはできません。人材育成方針を策定したら、必ず社員に共有して、理解してもらいましょう。先ほどもお伝えしたように、人材育成は管理職の協力が欠かせないので、特に管理職にはしっかりと理解してもらうことが重要です。

人材育成方針と合わせて人事評価制度も見直しをするなら、それについても周知しましょう。何を求められているのか、何を評価されるのかを社員が理解できれば、成長意欲やモチベーションの向上も期待できます。

定期的に見直しをする

企業に求められるものは、時代が変われば変わってきます。たとえば、最近であればダイバーシティ&インクルージョンやDX、人生100年時代への対応などが求められるようになっています。すると、企業に必要な人材も変わってきます。人材育成方針は、一度策定したらそれで終わりではなく、時代の変化に合わせてアップデートしていかなければなりません。また、企業のビジョンや経営戦略を見直すなら、それに合わせて人材育成方針も見直す必要があります。

人材育成方針を策定しているという企業も、時代のニーズや企業のビジョン・戦略に合ったものになっているか、見直してみることをおすすめします

外部の力を借りることも検討する

「外部」とは、たとえば人材育成コンサルタントのように、人材育成に関する専門知識を持つ人や会社のことです。人材育成方針の策定は、外部の専門家の力を借りながら進めていくことをおすすめします。

その理由は、もし社内に人材育成に関する専門知識やノウハウを有する人材がいない場合、社内のメンバーだけで策定すると、最適な人材育成方針にならないこともあるからです。また、人材育成方針の策定は経営陣とともに進めていく必要がありますが、完全に内製する場合、どうしても経営陣の意見に従ってしまいやすくなるともいえます。

ただ、外部の力を借りればその分コストはかかりますので、費用面も十分考慮する必要があります。そして、外部の力を借りる際は、目的(解決したい課題)とサポートをお願いする範囲を明確にしておくこと、自社の業界に関する知識と実績を持っている委託先を選ぶこと、外部に丸投げしないこともポイントです

人材育成方針を定めている企業の取り組み事例

では、実際に人材育成方針を定めている企業では、どのような育成が行われているのでしょうか。ここからは、2社の取り組み事例を紹介していきます。

アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社は、アサヒグループの企業の1つで、ビール類を中心とする酒類、アルコールテイスト飲料の製造、販売事業を行っています。

アサヒグループには、「新グループ人事基本方針」というものがあります。アサヒビール株式会社も、この方針に基づき、社員がいきいきと働き、成長していくことができるような環境づくりに取り組んでいます。

さまざまな制度や研修を整えていますが、そのなかでもアサヒビール株式会社独自の施策が、「ブラザー・シスター制度」です。新入社員は入社してから4ヶ月間、年齢が近い先輩社員から仕事を教わるという制度で、指導にあたる先輩社員を「ブラザー」「シスター」と呼んでいます。ほかにもこのような制度を導入している企業はありますが、「ブラザー」「シスター」を公募で決めているという点は、アサヒビール株式会社ならではの工夫ではないでしょうか。

参考:キャリア支援企業表彰2012好事例集 分割版2(企業取組1:アサヒビール株式会社)|厚生労働省(PDF)

ヤマトグループ

エクスプレス事業、コントラクト・ロジスティクス事業、モビリティ事業など、幅広い事業を行っているヤマトグループは、「人材マネジメント方針」を定め、社員の育成に取り組んでいます。「人材マネジメント方針」は、経営理念に基づいて、人的資源についての企業としての考え方や価値観をまとめたものです。組織が目指すべき姿、社員が目指すべき姿も、明確に定められています。ヤマトグループでは、この「人材マネジメント方針」に基づいて、社員が働きがいを感じられる風土づくりや、仕事を通じた成長機会の提供などに取り組んでいます。

参考:人材育成 | ヤマトホールディングス株式会社

人材育成の取り組みの1つに、2021年度よりスタートした「ヤマトデジタルアカデミー(Yamato Digital Academy)」があります。ヤマトデジタルアカデミーは、デジタル人材を育成するための独自の教育プログラムです。カリキュラムは、経営層向け、デジタル機能本部向け、全社員向けの3つが用意されています。

参考:デジタル人材の育成へ向け、「Yamato Digital Academy」をスタート | ヤマトホールディングス株式会社

人材育成方針を定めている自治体の事例

人材育成方針を定め、それに基づき取り組みを実施しているのは、企業だけではありません。次に、人材育成方針を定めている自治体の事例を紹介します。

東京都

行政運営に対するニーズも高度化・複雑化しています。都民のニーズに応え、さまざまな課題に素早く対応できる知識と経験、能力を持った人材を育成するために、東京都は「東京都職員人材育成基本方針」を定めています。

東京都が目指すのは、「職員の視点」と「組織の視点」の2つの視点に立ち、職員は個人の能力を伸ばす、組織は個人の力を引き出す体制をつくり、職員と組織の間に相乗効果が生まれるような人材育成です。目指す職員像と、職級(新任職員から管理職になるまでの段階)ごとの目標も明確に設定しています。

東京都では、この「東京都職員人材育成基本方針」に基づき、人材育成のさまざまな取り組みを実施しています。国際的な交渉力や、政策形成能力、語学力を養うため、Off-JTには海外研修も用意されています。

参考:人材育成|人材育成・人事制度|東京都職員採用

大阪市

大阪市は、職員一人ひとりが最大限能力を発揮できるような人材育成体制を確立するために、平成191月に「大阪市人材育成基本方針」を策定しました。そして、「大阪市DX戦略」、「市政改革プラン3.1」の策定などを踏まえ、令和53月にこれを改訂しました。

一人ひとりが主体的に考え行動できる「自律した職員」を目指す職員像として、具体的な人物像を定義しています。そして、職員に求められる行動姿勢と能力、現状において職員が強化するべき能力も、それぞれ明確に定めています。さらに、DX戦略を反映して、情報やデータを活用したEBPMや、DX推進の必要性・重要性の理解を深めることなど、DXに関する内容も追加されています。

参考:大阪市:大阪市人材育成基本方針(令和5年3月改訂) (…>組織・人事・給与>人材育成)

効果的な人材育成につながる研修

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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4.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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まとめ

人材育成方針は、必ず定めなければいけないものではありません。しかし、人材育成方針を定め、それに沿って育成を行っていくことで、人材育成の施策に一貫性を持たせることができるようになります。また、人材育成方針により企業としての考え方を明確に示すことで、社員の成長意欲向上も期待できます。

そして、時代とともに企業に求められること、必要な人材というのは変わってきますので、人材育成方針を策定した後は、定期的に見直しをすることも忘れないようにしましょう。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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