若手社員を育成する方法・ポイントを紹介

  • 組織・人材開発

入社から23年目の若手社員になると、上司や先輩からの指示をただ正確にこなせるというだけでなく、自分で考えて行動することや、一人でも成果を上げられるようになることが求められるようになります。企業としては、長く自社で活躍してくれる人材になってもらうために、若手社員をどのように育成していけばよいのでしょうか。

本記事では、若手社員の育成の重要性をまず解説し、若手社員を育成する方法と、若手社員が抱えやすい悩み、若手社員を育成する際のポイントと、若手社員の育成におけるよくある課題を紹介します

 

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若手社員の育成が重要な理由

入社から何年目までを「若手社員」と呼ぶかは企業によって異なりますが、一般的には、だいたい入社3年目くらいまでの社員を指すことが多いでしょう。若手社員の育成が重要な理由としては、主に以下の2つが挙げられます。

早く即戦力となってもらうため

1つめは、若手社員に一日でも早く戦力になってもらうためです。これまでの日本企業は、終身雇用が一般的で、これを前提として長い期間をかけて若手社員の育成を行ってきました。たとえば、入社後の導入研修から始まり、配属された部署でのOJT、その後はさらに人事異動で経験を積んでもらうというような流れです。

しかし、現在の日本は、少子高齢化に伴ってあらゆる業界で人手不足が深刻化しています。さらに、環境やトレンドも目まぐるしく変化していくため、ビジネスにもスピードが求められるようになってきています。これらの理由により、以前よりも若手社員の育成に時間をかける余裕がなくなってきているのです。

最近は、専門的な知識・スキルを有する学生を職種別に採用して、早く戦力になってもらえるよう個人に合わせた育成を行う企業も増えています

企業に定着してもらうため

2つめは、若手社員の離職を防ぎ、企業に定着してもらうためです。厚生労働省が公表しているデータによると、新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率は、ここ10年ほどは30%台前半で推移しています(令和23月卒就職者の離職率は32.3%)。

参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

若手社員に早期に離職されてしまうと、多額のコスト損失が発生します。たとえば、採用や育成にかかった費用、給与、社会保険料などです。もちろん、社員は企業に利益をもたらしてくれる存在でもあります。しかし、3年以内でかけたコストを回収するのは難しいでしょう。公益財団法人東京しごと財団の「早期離職防止ガイドブック」では、早期に離職された場合、一人あたり約800万円の損失が発生するとも紹介されています。

参考:若手社員が辞めない会社づくり – 早期離職防止 ガイドブック|東京仕事センターヤングコーナースペシャルサイト(PDF)

人材育成の取組のなかで、若手社員が「自分の知識・スキルが企業の役に立っている」「自分は評価されている」と感じることができれば、モチベーションが向上し、企業に定着してくれることが期待できるでしょう

 

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若手社員を育成する方法

若手社員を育成する方法はさまざまありますが、ここでは主なものとして、4つの方法を紹介します。

1.研修

まずは、若手社員を対象とした研修を実施するという方法があります。

研修にもさまざまな形がありますが、たとえば、集合型研修です。若手社員に対して実施されることが多い研修テーマとしては、以下のようなものがあります。

  • ロジカルシンキング研修
  • プレゼンテーション研修
  • リーダーシップ研修
  • コミュニケーション研修
  • 問題解決研修
  • キャリアデザイン研修
  • チームビルディング研修

新たな知識・スキルを身につけてもらうためだけでなく、若手社員に求められることを理解してもらったり、自身のキャリアについて考えてもらったりするためにも、集合型研修はおすすめです

また、若手社員を対象にOJT研修を実施するという方法もあります。OJTとは、On the Job Trainingの略称で、実際の業務を通して知識やスキル、ノウハウ等を教えることをいいます。若手社員には、ただ上司や先輩からの指示を正確にこなせるというだけでなく、主体的に仕事に取り組み、自ら成果を上げられるようになってもらわなくてはなりません。OJTの担当者は、指導の際この点を意識することが大切です。

⇒講義+アクティビティ一体型の研修一覧

2.1on1

1on1とは、上司と部下が11で話し合う面談やミーティングのことをいいます。部下の成長を促すことが主な目的で、一般的な面談とは違い、双方向のコミュニケーションをとるのが特徴です。

若手社員の育成は、内省支援(振り返りをサポートすること)が非常に重要です。自分の発言や行動を振り返ることで、自分を客観的に見られるようになり、自分を上手くコントロールできるようになる、自律性が高まるなどの効果が期待できます1on1は、この内省支援の方法としても有効です。

また、若手社員と11で向き合う機会を設けることで、相互理解が深まり、信頼関係を築きやすくなるので、モチベーションアップも図りやすくなるでしょう。

3.ストレッチアサインメント

ストレッチアサインメントとは、本人の実力以上の仕事や役割をあえて任せることで、成長を促す方法のことをいいます。少しレベルの高い課題を与えることで、その人のポテンシャルが引き出される、問題解決力やチャレンジ精神が養われるなどの効果が期待できます

また、ストレッチアサインメントは、経済産業省の資料「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」のなかで“社員エンゲージメントを高めるための取組”の一つとして紹介されており、エンゲージメント向上の方法としても注目されています。

しかし、ストレッチアサインメントは、ただ困難な課題を与えればよいというものではありません。ストレッチアサインメントを実施するときは、本人のキャリア志向に沿った仕事や役割を任せることがポイントです。適切なアサインメントを行わなければ、社員のモチベーションが下がってしまうこともあるので、注意しましょう。

参考:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~|経済産業省(PDF)

4.ジョブクラフティング

ジョブクラフティングとは、社員が自ら自分の仕事やタスクに対する行動・認知を変え、やりがいや満足度を高める手法のことです。厚生労働省の資料「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」では、ワークエンゲージメントを高める取組の一つとして紹介されており、近年注目を集めています。

参考:令和元年版 労働経済の分析 – 人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について – |厚生労働省(PDF)

これが正しく実施されることで、社員の自律性や主体性を高めることができるでしょう。社員にジョブクラフティングを促す具体的な方法としては、ジョブクラフティングをテーマに研修を実施する、社員がジョブクラフティングを実施できる環境・風土づくりに取り組むなどが挙げられます

ジョブクラフティングについて、詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。

ジョブクラフティングとは?実践方法やポイントを解説

若手社員が抱えやすい悩み

育成担当者は、若手社員が置かれている状況を理解したうえでしっかりと向き合い、成長を促すことが大切です。ここからは、若手社員がどのような壁にぶつかりやすいのかを解説していきます。

モチベーションが上がらない

入社23年目になると、ある程度仕事や職場環境にも慣れてくるので、1年目ほど緊張することも少なくなります。また、新入社員の頃は「初めてのこと」ばかりで、それを乗り越えるたびに自分の成長を感じることができました。しかし23年も経つと、成長を実感することも少なくなるため、仕事に対するモチベーションが下がってしまうことがあります。モチベーションが下がると、パフォーマンスも下がってしまう恐れがあります。さらに「やりがい」を求めて、転職を考える社員も出てくるかもしれません。

コミュニケーションの不足もモチベーション低下の原因となることがありますので、普段から上司から積極的に声かけをすることを心がけましょう

プレッシャーを感じる

新入社員から若手社員になると、会社から求められることも変わります。それをプレッシャーに感じて、悩んだり落ち込んだりしてしまう若手社員も少なくないようです。

先ほど若手社員を育成する方法として、ストレッチアサインメントを紹介しましたが、ただ困難な目標や課題を与えるだけでは、逆効果になってしまうこともあります。本人が強いプレッシャーを感じるほどの高すぎる目標を与えると、その目標をクリアできなかったときに、自信を無くしてしまう可能性もあるでしょう。

ストレッチアサインメントを、若手社員の成長とエンゲージメント向上につなげるためには、本人が目標に納得していることが大切です。そのために、目標は本人と一緒に決めることをおすすめします。また、先ほどもお伝えしたとおり、本人のキャリア志向に沿ったものとすることもポイントです。

キャリアに不安を感じる

入社3年目は、キャリアについての迷いが生まれやすい時期ともいわれています。たとえば、「このままこの会社にいて、成長できるのだろうか?」「自分がもっと興味がある業界・職種で働きたい」「プライベートとうまくバランスがとれない」などの悩みや迷いから、転職を考え始める人が多いようです。

若手社員に対しては、1on1やキャリア面談などを実施して、キャリア形成支援を行うことも重要です。上司や育成担当者は、若手社員の話にしっかり耳を傾け、キャリアに関する不安を解消できるようサポートしていきましょう

若手社員を育成する際のポイント

次に、若手社員を育成する際のポイントを紹介します。

研修を工夫する

入社して3年目くらいになると、社員の能力にも差が出てくるようになります。そのため、全員に同じ教育をするのではなく、個人に合わせた教育が必要になります。研修の内容も、工夫してみましょう。具体的には、社員の現在の状態(知識・スキルのレベル、必要な要素など)を把握したうえで、レベルでクラス分けをしたり、段階的に難易度を上げたりするなどの工夫が考えられます

また、若手社員になると新入社員の頃に比べて仕事量も増えてきますので、オンライン研修やeラーニングを導入するなど、社員が効率よく学べる環境を整えることも大切です。

意味や目的を伝える

若手社員には、上司の指示や命令で動くのではなく、自分で考え、行動できるようになってもらわなければなりません。そのためには、仕事のそもそもの意味・目的を伝えるのが有効です。特に、Z世代と呼ばれる若い世代は、意味を重視する傾向があるといわれています。何のための仕事や研修なのか、どのようなメリットがあるのかなどを伝えることで、意欲的になってくれることが期待できるでしょう

また、主体性を伸ばすためには、最初からその仕事の目的を伝えてしまわずに、「何のために行うのか」や「自分にできること」を、まず考えてもらうというのもおすすめです。

上司はサポートに回る

上司としては、若手社員を見ていると「もっとこうしたほうがいいのに」と思うこともあるかもしれません。しかし、上司が代わりにすべてやってしまう、もしくは1から10まで指示すると、社員が成長できなくなりますので、ある程度任せてフォローに回るようにしましょう

また、自分の成功体験が今も通用するとは限らないので、自分の考え方ややり方を押し付けないことも大切です。

ポジティブなフィードバックを与える

若手社員が成果を出せば褒める、若手社員に期待していることを伝えるなど、普段からポジティブなフィードバックを与えることを心がけましょう。これにより、社員は自分に自信が持てるようになります。その結果、仕事に対するモチベーションの向上も期待できるでしょう。具体的にどこがよかったのかを評価し、次の課題を与えることで、さらなるスキルアップを促すことができます。

若手社員の育成におけるよくある課題

若手社員の育成に課題を抱えている企業は少なくありません。最後に、若手社員の育成におけるよくある課題を3つ紹介します。

人材育成を行うためのリソースが足りない

厚生労働省が公表している「令和5年度 能力開発基本調査結果の概要」を見ると、人材育成に関する問題点として、「指導する人材が不足している」を挙げた事業所は57.1%、「人材育成を行う時間がない」が47.6%、「育成を行うための金銭的余裕がない」も14.5%となっています。この結果を見ても、人材育成を行うためのリソース、特に人材と時間が足りないことが課題となっている企業が多いことがわかります。

参考:令和5年度 能力開発基本調査結果の概要|厚生労働省(PDF)

日本ではプレイングマネジャー(チームを管理するマネジメント業務を行いつつ、自らもプレイヤーとして活動する管理職)が増加しており、以前よりもマネジャーが部下の育成やマネジメントを行える時間が減っているというケースもあります。効果的な育成を行うためには、マネジャーをマネジメント選任とするのが理想的ですが、これが難しい場合は、現場の負担を減らせるよう、研修の組み方を見直してみてはいかがでしょうか。たとえば、OJTで実施している内容で、集合型研修やeラーニングに置き換えられる部分がないか考えてみる、などです。

育成担当者のスキルが不足している

育成担当者の知識・スキル不足も、人材育成のよくある課題の一つです。たとえば、OJTを実施するなら、OJTの担当者にはトレーナーとしてのスキルが求められますし、社内講師で集合型研修を実施するなら、講師を担当する社員には講師としてのスキルが求められます。これらのスキルがないまま実施しても、高い効果は期待できません。

若手社員の育成が始まるまでに、まずは育成担当者に対して研修を実施し、必要な知識・スキルを身につけてもらっておきましょう。あわせて、研修のなかで若手社員を育成することの重要性を伝えることも大切です

育成を体系化できていない

若手社員の育成に限ったことではありませんが、人材育成を体系的に実施できていないというのも、よくある課題の一つです。たとえば、人材育成に関する方針や計画がない、明確な目的・目標を立てずに不定期・単発で研修を実施しているなどが挙げられます。

人材育成は、きちんと方針と計画を立てて、それに沿って実施していかなければ、高い効果は期待できません。せっかくかけたコストも、無駄になってしまう可能性が高いでしょう。それだけでなく、方針や計画がないと、社員が不安を抱くこともあるかもしれません。

まずは、人材育成の目的・目標を明確にして、計画的に実施していきましょう

若手社員の力を伸ばす研修

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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2.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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3.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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4.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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5.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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まとめ

少子高齢化の影響で、今後はより人手不足が深刻化することが予想されます。目まぐるしく変化し続ける環境に対応していくためにも、若手社員にはできるだけ早く即戦力になってもらう必要があります。また、定着を促すためにも人材育成は重要です。企業の持続的な成長のために、若手社員の育成に力を入れていきましょう。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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