意識改革とは?取り組みの具体例や成功させるポイントを解説

  • 組織・人材開発

時代やビジネス環境の変化に合わせて、組織もこれまでのやり方や考え方、目指す方向性などを変えなければならないことがあります。しかし、ただ環境や制度を整えるだけでは、新しい習慣は作れません。このとき必要になるのが、「意識改革」です。

本記事では、ビジネスにおける意識改革とは何か、意識改革の必要性と、成功することで得られるメリット、取り組みの具体例とポイントを紹介していきます

 

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意識改革とは

意識改革とは、文字通りこれまでの意識を改めて変化させていくことを意味しますビジネスにおける意識改革は、組織としての方針や価値観、または従業員個人の考え方や態度などを改め、変化させていくことという意味で用いられることが多いです

何かを変えようとするとき、または何か新しいものを取り入れようとするときは、仕組みや制度を整えるだけでなく、意識改革が必要になることがあります。たとえば、「時間外労働が多い」という課題があるとするなら、もしかしたら職場のなかに、「残業=努力」「上司が帰るまでは帰ってはいけない」などという考え方が根付いてしまっているのかもしれません。この場合は、どれだけ業務量や業務のプロセスを見直したとしても、なかなか残業時間を減らすことはできないでしょう。無駄に残業をしても、パフォーマンスが落ちるだけです。組織として「高いパフォーマンスを発揮するためにも、残業はしないほうが良い」という考え方を示し、浸透させることができれば、従業員の行動も自然と変わっていくでしょう。

意識改革は、これまでのプロセスや習慣になっていることを変えて、新たに根付かせる必要があるので、簡単に行えるものではありません。小さなことを積み重ねて時間をかけて進めていかなければならないので、長期的な視点で取り組んでいく必要があります。

なぜ意識改革が必要なのか

では、意識改革とはどのようなときに行うものなのでしょうか。ここからは、企業が意識改革を行う主な目的を紹介していきます。

働き方改革を推進するため

日本では、少子高齢化に伴って生産年齢人口(1564歳)が減少し続けており、多くの業界・業種で人手不足が深刻化しています。また、時代とともに価値観も変化しており、働く人のニーズも多様化しています。これらの課題に対応するため、企業には働き方改革が求められるようになっています。

働き方改革とは、働く人それぞれが、自身の事情に応じた働き方を選択できるような社会を実現するための改革で、数年前から国が推奨しているものです。厚生労働省は、これを実現するために、長時間労働の是正や、多様な働き方を選択できるような環境整備、正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇さの解消などに取り組んでいます。

参考:「働き方改革」の実現に向けて |厚生労働省

企業においても、先ほど例を挙げたように、どれだけ業務量を減らしたり、業務効率化を図ったりしても、職場のなかに残業を良しとする考え方が根付いてしまっている場合は、長時間労働はなかなか減らないでしょう。同様に、多様な働き方や独自の休暇制度などを導入したとしても、それらを利用しにくい雰囲気があれば、恐らく何も変わりません。働き方改革を推進するためには、仕組みや制度を整えるだけでなく、意識改革を行う必要があるのです。

パフォーマンス向上させて成果を上げるため

前項でお伝えしたとおり、少子高齢化の影響で生産年齢人口が減少しています。総務省の『令和4年版 情報通信白書』では、2050年には2021年から29.2%も少なくなるという予想データが示されています。これにより、労働力不足や経済規模の縮小などの課題がさらに深刻化するのではないかと考えられています。

参考:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

このような状況のなかで、企業が生き抜いていくためには、業務効率を上げて、少ない人数でも生産力を維持できるような組織を作っていく必要があります。

また、現代はVUCA時代と呼ばれるほど将来を予測することが難しい時代となっています。ビジネス環境も目まぐるしく変化し続けており、従来のやり方に固執していては、時代遅れになってしまうこともあるでしょう。意識を変えて、まったく新しいやり方・考え方を取り入れることで、成果が得られることもあります。

このように、パフォーマンスを向上させて成果につなげるためにも、意識改革が必要なのです。

従業員が活躍できる機会を生み出すため

現代は、ダイバーシティ&インクルージョンが求められる時代になっています。ダイバーシティ(diversity)は「多様性」、インクルージョン(inclusion)は「包括」や「包含」などの意味を持つ英単語です。ダイバーシティ&インクルージョンとは、多様な人々を受け入れ、それぞれが持つ能力や個性を最大限に活かすことをいいます。この実現を目指して、さまざまなバックグラウンドを持つ人材がそれぞれ活躍できる機会を作るために、意識改革に取り組む企業もあるようです。

たとえば、女性活躍推進のために、企業として「女性の管理職を増やす」ことを目標に掲げたとしても、「管理職は男性がなるべき」と考える従業員が多ければ、女性管理職はなかなか増えないでしょう。また、この目標を達成するためには、女性従業員に「管理職になりたい」という意欲を持ってもらうことも重要です。

このように、多様な人材に活躍してもらうためには、ただチャンスを与えるだけでなく、一人ひとりに意識を変えてもらう必要があるのです。

企業理念を浸透させるため

企業理念とは、企業の存在意義や、大切にしている価値観などを言語化したもののことをいいます。これを浸透させるためにも、意識改革が行われることがあります。

従業員の仕事に対する考え方がバラバラだと、提供するサービスにもばらつきが生まれてしまうかもしれません。また、採用にかかわる従業員が企業理念を理解できていないと、採用ミスマッチが生じる可能性も高くなるでしょう。このようなことを防ぐためにも、従業員には企業理念をしっかり理解してもらっておく必要があるのです。さらに、企業理念を浸透させることで、エンゲージメントの向上が期待できるともいわれています。

時代や環境の変化に合わせて企業理念を追加、または変更する際は、改めてこれを浸透させなくてはなりません。この際にも、意識改革が必要になります。

意識改革が成功することで得られるメリット

では、意識改革が成功した場合、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。

どのような目的で意識改革を行うのかによって、得られるメリットは変わってきますが、たとえば働き方に対する意識を改革することで、従業員はワークライフバランスを実現しやすくなるでしょう。従業員にとっての「働きやすさ」が向上すれば、それを採用活動で企業の魅力としてアピールもできます。求職者に「働きやすそうな職場だ」と感じてもらえれば、応募が集まりやすくなることも期待できるでしょう。

仕事内容や業務のプロセスに対する意識を改革し、無駄を省くことができれば、業務効率化が実現できます。時代に合わせたやり方・考え方を取り入れることで、生産性向上や業績アップにつながることもあるでしょう。

企業理念の浸透を目的とする意識改革の場合は、成功すれば、全員で一丸となって目標に向かっていくことができます。組織の一体感も高まるでしょう。

意識改革の取り組みの具体例

では、意識改革はどのように行っていけばよいのでしょうか。ここからは、取り組みの具体例を紹介していきます。

経営トップからメッセージ・情報を発信する

従業員の意識を変えるためには、まずは経営トップ自身が意識を変える必要があります。経営トップの意識が変わらない、または変わっていることが見えないままでは、従業員は何を求められているのかがわかりませんし、意識を変える必要性も感じられないでしょう。まずは、経営トップが自分の意識を変えて、「企業としてこうしていく」という強いメッセージを継続的に発信することが求められます。

たとえば、「利益を追求しながらワークライフバランスの実現を目指す」という場合は、そのメッセージや、実現に向けた具体的な施策、働き方に関する情報などを朝礼で伝えたり、社内報で発信したり、社内にポスターを掲示するなどの方法が考えられます

ロールモデルを提示する

ロールモデルとは、「模範になる人材」のことです。たとえば、「管理職になりたい」という想いは持っているものの、自分の周りに女性管理職がいないので具体的にイメージできない、何をすればいいのかわからないという女性従業員も少なくありません。すでに管理職として活躍している女性従業員が社内にいるなら、その人をロールモデルとして周知することで、「自分でも管理職を目指せる」と感じてもらうことができるでしょう

コミュニケーションを密にとる

意識改革を成功させるためには、企業がどのような組織を目指しているのか、従業員に何を求めているのかを、従業員一人ひとりに理解してもらう必要があります。そのために重要なのが、管理職と現場の従業員との密度の濃いコミュニケーションです。従業員は、自分に与えられたミッションを理解できれば、組織における自分の価値や役割などを見い出せるようになるでしょう。その結果、仕事に対するモチベーションの向上も期待できます。

逆に、管理職とのコミュニケーションが足りないと、従業員は意識や行動を変える必要性を感じられず、「よくわからないけれど上がいっているからやらなければならない」という状態になりやすくなります。つまり、「やらされている」と感じやすくなるのです。

管理職と現場の従業員とのコミュニケーションからは、現場の課題や、人材戦略を考える際に参考になる情報なども得られます。企業の発展のために、コミュニケーション活性化にも取り組んでいきましょう

研修を実施する

意識改革を成功させるには、管理職の協力が欠かせません。従業員の意識を変えるためには、まず経営トップが変わり、その次は管理職に変わってもらう必要があります。管理職に意識と行動を変えてもらうために、研修を実施するというのも1つの方法です。

たとえば、女性管理職を増やしていきたいと考えており、そのために意識改革を行うなら、女性活躍の意義、なぜ取り組む必要があるのか、アンコンシャスバイアスの存在や、女性従業員を活かすマネジメントの仕方といった内容の研修が考えられるでしょう

意識改革を成功させるためのポイント

最後に、意識改革を成功させるためのポイントを紹介します。

経営トップと管理職が積極的に行動を起こす

そもそも「意識」とは、個人が持つものです。自分以外の人の意識を変える直接的な方法はありません。誰かに意識を変えてほしいなら、行為や行動で示すことでアプローチするしかないのです。従業員に意識を変えてほしい場合は、まずは経営トップが意識を変えて、「組織全体の意識を変えていく」という姿勢を見せ続けていく必要があります

ただ、トップダウン型のアプローチだと、従業員は「やらされている」と感じやすくなります。経営トップがメッセージを発信すれば、従業員の行動は変えられるかもしれませんが、その行動が主体的なものでなければ、意識改革が成功したとはいえません。この「やらされている」という感覚を払拭(ふっしょく)するためには、管理職の協力が必要になります。管理職に、現場の従業員とコミュニケーションをとるなかで、経営トップが何を求めているのか、何を目指しているのかを伝えてもらいましょう。そして、従業員一人ひとりに納得してもらうことが大切です。まずは研修などを通して、管理職に意識改革の必要性を理解してもらい、行動を変えてもらいましょう。

このように、意識改革を成功させるためには、経営トップと管理職の積極的な働きかけが重要なのです。

従業員がメリットを得られるようにする

たとえば、仕事のプロセスを変えて業務効率化が実現できたとします。その結果として、従業員に還元されるものが何もなければ、従業員のモチベーションが下がってしまう可能性があります。逆に仕事を増やされてしまったり、人員を減らされたりすれば、なおさらです。企業として利益を追求することももちろん大切ですが、効率化して生まれた時間は従業員が自由に使えるようにする、もしくは工夫や改善に取り組んだ従業員を表彰したり評価したりする制度を導入するなど、従業員も何らかのメリットを得られるようにしましょう。それがないと、主体的な行動を促すのはなかなか難しいといえます。

また、従業員の意識ではなく、そもそも仕組みや制度に問題がある場合もあります。仕組みや制度がそのままなのに、「意識を変えてください」といわれて、積極的に自分を変えようとする人は少ないでしょう。意識改革の前に、まず仕組みや制度で改善できる部分がないか見直してみることも大切です。

強要しない

経営トップや管理職から、命令・指示の形で「変えてください」と伝えれば、従業員の行動は変えることができるかもしれません。しかし、これでは意識まで変えることはできませんし、強要すると、それに対するモチベーションも下がってしまう可能性があるので、注意しましょう。

先ほどお伝えしたように、従業員が主体的に行動してくれなければ、意識改革が成功したとはいえません。主体的に取り組んでもらうためには、経営トップからメッセージを発信し続ける、仕組みや制度を整えて従業員もメリットを得られるようにするなどの「動機づけ」が必要なのです

長期的な視点で取り組む

意識改革は、すぐに、簡単に行えるものではありません。何かを新しく習慣にするには時間がかかりますし、個人の意識は、他人がどうこうできるものではないからです。また、人は「現状維持バイアス」により、現状維持を求める傾向があるといわれています。「現状維持バイアス」とは、変化や新しいものを受け入れたくないと思ってしまう心理作用のことです。

何かを変えたいときは、いきなり大きな改革をしようとせずに、小さなところから始めて、1つずつ積み重ねていくことが大切です。意識改革も、長期的な視点で取り組んでいきましょう。そして、意識改革は取り組みの効果を測定するのもなかなか難しいですが、定期的に振り返りを行い、PDCAサイクルを回していきましょう。

意識改革や行動変容につながる研修5選

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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2.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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3.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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4.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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5.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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まとめ

組織の課題を解決するためには、仕組みや制度を整えるだけでなく、意識改革が必要になることも多々あります。また、ビジネス環境の変化に対応していくためには、新しいやり方・考え方を取り入れていく必要がありますが、このためにも意識改革は欠かせません。

意識改革を成功させるためには、まず経営トップが、その次に管理職が変わり、行為や行動で示し続けていくことが大切です。すぐに実現できるものではありませんので、長期的な視点で根気強く取り組んでいきましょう。

参考:「めりはり」のはる働き方に向けた動機付け・意識改革 – 内閣府ホームページ(PDF)

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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