コンフリクトマネジメントとは?実践方法とポイントを解説

  • 組織・人材開発

働き方に対する価値観の変化やダイバーシティの推進により、文化や考え方の異なる人同士で協働しなければならない機会が増えています。多様な人が集まれば、それだけ意見がぶつかることも多くなるでしょう。そのようななかで、組織をより成長させていくために、「コンフリクトマネジメント」という手法が注目されるようになっています。

本記事では、コンフリクトマネジメントとは何か、実践するメリットと、コンフリクトに対する5つの反応パターン、コンフリクトマネジメントの実践方法とポイントを解説します

 

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コンフリクトマネジメントとは

英単語のコンフリクト(conflict)は、「対立」や「衝突」を意味する言葉です。企業には、さまざまな価値観を持つ人が集まっています。そのため、主張が異なる社員同士、または部門やチーム同士の間で対立が生まれることがあります。コンフリクトマネジメントとは、組織内でコンフリクトが発生した際、積極的に問題解決を図り、組織の活性化や成長につなげようとすること、またはその取り組みのことをいいます

コンフリクトは、ネガティブなものと捉えられがちです。確かに、コンフリクトの発生により人間関係が崩れてしまったり、職場の雰囲気が悪くなってしまったりすることもあります。しかし、「新しいことはコンフリクトから生まれるため、抑えるべきではない」と主張する研究者もいます。コンフリクトを避けようとするのではなく、どのように管理して解決するかが重要であるというのが、コンフリクトマネジメントの考え方です。

コンフリクトの種類

コンフリクトは、「タスク・コンフリクト」と「リレーションシップ・コンフリクト」の、大きく2つの種類に分けられます。

まず、タスク・コンフリクトとは、仕事に関することで意見の対立や衝突が起こることをいいます。たとえば、新商品の開発について話し合っているとします。

  • Aさん(営業担当):「顧客のニーズに合わせて、従来品より手に取りやすい価格にすべきではないでしょうか。」
  • Bさん(開発担当):「うちの商品は品質が自慢です。価格を下げると、今の品質を保てなくなります。」

このような意見の対立が、タスク・コンフリクトです。タスク・コンフリクトは、適切に対処することで、組織にポジティブな効果をもたらしてくれる可能性があります。

次に、リレーションシップ・コンフリクトとは、人間関係から生じる感情的な対立や衝突のことです。たとえば、仕事にはまったく関係ないことで、

  • 「腹が立つ」
  • 「あの人は意地が悪い」
  • 「〇〇部の人はいつも感じが悪くて鼻につく」

といったマイナスの感情が生まれ、コンフリクトに発展するものをいいます。

さらに最近は、この2つに加えて「プロセス・コンフリクト」という3つ目のコンフリクトがあるという主張もなされるようになってきています。プロセス・コンフリクトとは、仕事のルールや権限などに関するコンフリクトのことです。たとえば、新しいアイデアに対して「人員や予算はどうするのか」「失敗したときに誰が責任を取るのか」といったことで生まれるコンフリクトが挙げられます。

コンフリクトが発生する主な原因

次に、コンフリクトが発生する原因について詳しく見ていきます。コンフリクトが発生する原因は、「条件の対立」「認知の対立」「感情の対立」の、大きく3つに分けることができます。

1.条件の対立

企業のなかには、さまざまな部門やチームがあります。同じ仕事に対しても、立場や役割が違えば、目標や優先すべきことが異なることがあります。求める条件が違うために、コンフリクトが生まれるのです

たとえば、予算や人員といった限られた資源を部門間で奪い合うというようなケースです。また、前項で紹介したタスク・コンフリクトの例のように、目標の違い(顧客ニーズを重視するAさんと、品質を重視するBさん)から生まれるコンフリクトも、この「条件の対立」に当てはまるでしょう。

2.認知の対立

1つの企業、1つのチームには、さまざまな人が集まっています。文化や価値観、考え方の違いや、コミュニケーション障害などが原因となり、コンフリクトが生まれることがあります

たとえば、同じような仕事であっても、企業により進め方は違います。

  • 先輩社員:「これはこのようにしてください。」
  • 中途採用で入社した社員:「私は今までこうやっていましたけれど…。」

というように、「この仕事はこのように進める」という認識が違うために、摩擦が生じてしまうのです。組織に新しい人が入ってきたときは、このような「認知の対立」が生まれる可能性が高くなります。

また、指示が曖昧であるために誤解が生じ、そこからコンフリクトが引き起こされるようなケースも「認知の対立」に当てはまります。たとえば、リーダーがメンバーに「できるだけ早く提出してください」という指示を出したとします。「できるだけ早く」の解釈がメンバーによって違うために、コンフリクトが生まれるというようなケースです。

3.感情の対立

仕事とはまったく関係ないことで、「嫌い」「イライラする」といった感情が生まれ、コンフリクトが生まれることもあります。先ほど紹介したリレーションシップ・コンフリクトが、この「感情の対立」を原因とするコンフリクトです。また、「条件の対立」や「認知の対立」から発生したコンフリクトでも、長期化することで「感情の対立」に発展する恐れもあります。

「感情の対立」から生まれるコンフリクトは、解決が難しく、またポジティブな効果も期待できないため、できるだけ早い段階で対処することが大切です。

 

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コンフリクトマネジメントのメリット

次に、コンフリクトマネジメントを実践することで、企業はどのようなメリットが得られるのかを解説していきます。

チームの結束力が高まる

コンフリクトマネジメントの実践方法についてはのちほど詳しく解説していますが、コンフリクトが発生したら、対話により解決を図ります。話し合いの場を設けることで、相手の考えや、仕事に対する価値観を改めて知ることができます。つまり、コンフリクトマネジメントを実践することで、社員間の相互理解が促進されます。これにより、コンフリクト解決後には、社員同士がより良い関係を築けるようになるでしょう。

社員同士の人間関係が良好になれば、チームの結束力も高まります。その結果として、生産性の向上も期待できるでしょう。

新たなアイデアが生まれやすくなる

コンフリクトを解決するために、価値観や考え方が異なる人同士で話し合いを重ねていくなかで、新たなアイデアを生み出すきっかけが見つかることがあります。また、前項でお伝えしたように、コンフリクトマネジメントを実践することで、社員同士がより良い関係を築けるようになるので、一人ひとりが積極的に自分の意見を発言するようになります。そのため、新たなアイデアが生まれやすくなるというメリットもあります。

問題を早期に発見・解決できる

コンフリクトマネジメントとは、対立や衝突を解消することだけを指すのではありません。コンフリクトの発生を未然に防いだり、コンフリクトが発生していないか定期的にチェックしたりすることも、コンフリクトマネジメントに含まれます。そのため、コンフリクトマネジメントを実践することで、コンフリクト、またはコンフリクトになりそうな問題を、早期に発見し対処できるというメリットがあります

コンフリクトは、放置すればどんどんエスカレートしていきます。ポジティブな効果をもたらす可能性があるタスク・コンフリクトであっても、長引くことでネガティブなリレーションシップ・コンフリクトが生まれてしまうこともあります。そうなると、解決に多くの時間、エネルギーを要するようになります。コンフリクトは、早期発見・早期解決が重要なのです。

社員の満足度の向上につながる

コンフリクトマネジメントは、社員の満足度を高めるのにも効果的です

コンフリクトマネジメントを実践することで、職場に「本音を言いやすい」空気が生まれます。これはつまり、職場の心理的安全性の向上につながるということです。心理的安全性とは、組織やチームといった集団のなかで、自分らしく振舞えたり、思っていることをそのまま発言できたりする状態のことをいいます。

また、コンフリクトの解決とは、単に揉めている人同士を「仲裁する」ということではありません。問題の原因そのものにアプローチすることで解決を図るので、コンフリクトを解決する過程で、職場環境や文化も改善されることがあります。

これらの結果として、社員のストレス軽減や、働きやすさの向上といった効果が期待できます。これらが、社員の満足度にもつながっていきます。

コンフリクトに対する5つの反応パターン

心理学者のケネス・W・トーマス氏とラルフ・H・キルマン氏は、1970年代に「二重関心モデル」というものを考案しました。これは、人がコンフリクトに直面したときの反応を、「自分の意見・利害への配慮」と「他人の意見・利害への配慮」の2軸で、5つに分類したものです。

1.強制

「自分の意見・利害への配慮」:高 「他人の意見・利害への配慮」:低

相手を犠牲にしたり、圧力をかけたりして、自分の要求を通そうとする。

2.受容

「自分の意見・利害への配慮」:低 「他人の意見・利害への配慮」:高

自分の要求を抑え、相手の意見を受け入れる。場合によっては自分を犠牲にすることも。

3.妥協

「自分の意見・利害への配慮」:中 「他人の意見・利害への配慮」:中

お互いに譲歩し合うことで解決を目指す。

4.回避

「自分の意見・利害への配慮」:低 「他人の意見・利害への配慮」:低

コンフリクトそのものを避けようとする。

5.協調

「自分の意見・利害への配慮」:高 「他人の意見・利害への配慮」:高

相手と協力して、自分も相手も満足できる結果を目指す。

このうち、コンフリクトマネジメントが目指すのは「協調」です。どちらか一方でなく、双方にとって満足な結果、つまり「Win-Win」な状況を生み出すことで、前項で紹介したようなメリットが期待できるでしょう。

ただ、状況によってはほかのアプローチが効果的な場合もあります。たとえば、時間が限られており、早くプロジェクトを前に進めないといけないような場面では、「妥協」が必要になることもあるでしょう。

また、コンフリクトに直面したときに、どのタイプのアプローチを好むかは、人によって違います。自分のタイプを調べることができる検査の1つに、「トーマスキルマン コンフリクト・モード検査(TKI)」があります。職場のコンフリクト解消に、活用してみてはいかがでしょうか。なお、この検査における反応の分類は、先ほど紹介したものとやや異なり、以下の5つとなっています。

  1. 競う(コンピーティング・モード)
  2. 共同共存する(コラボレーティング・モード)
  3. 妥協する(コンプロマイジング・モード)
  4. 回避する(アボイディング・モード)
  5. 順応する(アコモデーティング・モード)

公式サイト:TKI | トーマス – キルマン コンフリクト・モード検査 日本語版

コンフリクトマネジメントの実践方法

ではここからは、コンフリクトマネジメントの実践方法を紹介していきます。

1.コンフリクトに対する認識を変える

コンフリクトが発生したら、まずは事前準備として、コンフリクトマネジメントを行う対象に、コンフリクトを正しく認識してもらうことが大切です

コンフリクトは、ネガティブなものだと捉えられがちです。もちろんそういった側面もありますが、冒頭でもお伝えしたとおり、コンフリクトは、新たな価値を生み出す可能性があるポジティブなものでもあります。まずは、「コンフリクトは必ずしも悪いものではない」ということを、きちんと理解してもらいましょう。

2.対話によりコンフリクトを解決する

次に、対立している人同士で話し合う場を設け、双方が満足できるWin-Winな結果を目指して話し合ってもらいましょう。対立する人同士のみで話し合ってもらう方法以外にも、対立する人同士を含むチーム全員でミーティングを開く、中立的な立場の第三者を加えて話し合うなどの方法があります。状況に応じて、適切な形で話し合いの場を設けましょう。

また、この段階では、コンフリクトの原因と種類を正しく見極めることも非常に重要です。ポジティブな効果を生み出す可能性があるタスク・コンフリクトなら、うまくコントロールして議論を促すことで、新たな価値やイノベーションの創出を目指すことができます。しかし、リレーションシップ・コンフリクトなら、このような効果は期待できないため、できるだけ早く解決して排除する必要があります。

話し合いにより解決策を導き出せたら、協力して取り組んでいきましょう。

3.解決後は評価を行い次につなげる

取り組みを実施してコンフリクトを解決できたら、それで終わりにせず、きちんと成果とプロセスを評価することも大切です。改善点を見つけて、今後のコンフリクトの発生防止や解決に役立てていきましょう。

具体的には、モニタリングにより実施した取り組みの効果と持続性を評価する、アンケートやインタビューによりコンフリクト解決にかかわった当事者からフィードバックをもらうなどの方法があります。

コンフリクトマネジメントのポイント

最後に、コンフリクトマネジメントを実践する際のポイントを紹介します。

問題の本質をしっかりと見極める

コンフリクトマネジメントは、「どちらの意見が正しい」「どちらが悪い」ということを決めるものではありません。対立や衝突の原因をしっかりと見極め、それにアプローチすることで解決を目指します。コンフリクト解決のための話し合いは、問題の本質的な部分に焦点を当てて進めていくことが大切です。

そして、コンフリクトの原因は1つとは限りません。タスク・コンフリクト、リレーションシップ・コンフリクト、そして3つめのプロセス・コンフリクトは、それぞれが相互に関係し合っています。3種類のコンフリクトすべてが組織やチームのなかに存在しているという前提で、今向き合っているコンフリクトはどのようなものかを考えることが重要です。

他者を否定しない

話し合いの際は、自分と異なる意見があっても否定しないことも大切ですコンフリクトマネジメントは「二重関心モデル」の「協調」を目指すものなので、話し合いに参加する人には、相手の意見をしっかり聴き、尊重する姿勢を持ってもらいましょう。順番に自分の意見や感情を伝えてもらい、自分以外の人が話しているときは静聴するというルールをつくっておくのもよいかもしれません。

コンフリクトマネジメントの実践的な知識を身につける研修

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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2.コミュニケーション研修

コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します

学びのポイント

  • 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
  • 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる

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3.交渉術・ネゴシエーション研修

交渉術・ネゴシエーション研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、利益を増やすことを目指し、自チームでの戦略構築や他チームとの交渉を行います

学びのポイント

  • 配られた事業・資金・労働力などの資源だけで目的が達成できない場合に、他チームと交渉してそれらを手に入れるための交渉力を習得する
  • 他チームの情報を得てから相手にとって価値のあるものを提供し、自チームにとってさらに価値のあるものを引き出すことが求められる

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4.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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まとめ

コンフリクト(対立や衝突)を適切に管理してポジティブな結果につなげていく、コンフリクトマネジメントについて解説しました。コンフリクトは、悪いものばかりではありません。特にタスク・コンフリクトは、うまくコントロールして議論を促すことで、新たな価値の創出を目指すことができます。企業の成長のために、コンフリクトマネジメントに取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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