テレワークにおけるコミュニケーションの課題と活性化させる方法・事例を紹介
- ワークスタイル
新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以降、日本においてもテレワークの導入が一気に進みました。最近は、アフターコロナに向けて再び「原則出社」に戻す流れも強まっていますが、そのままテレワークを継続している企業も多いです。満員電車で通勤するストレスがなくなる、プライベートと仕事との両立がしやすいなどのメリットがあるテレワークですが、多くの企業で課題となっているのが、「コミュニケーション」です。
本記事では、なぜテレワークではコミュニケーションが難しいのか、コミュニケーション問題から発生する課題にはどのようなものがあるのか、それらを解決するための対策と、コミュニケーションを活性化させた事例を紹介します。
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なぜ、テレワークのコミュニケーションは難しいのか
東京商工会議所が2022年に実施した「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」の結果を見ると、東京23区の中小企業のテレワーク実施率は、29.7%となっています。そして、企業規模が大きくなるほどテレワーク実施率が高くなる傾向があり、従業員数301人以上の企業では57.6%と、半数以上の企業がテレワークを実施しているという結果が出ています。
テレワークを実施している多くの企業が、「働き方改革の進展」を効果として感じているようですが、テレワークには課題もあります。その1つが、「コミュニケーションが難しい」という点です。実際に同調査では、53.6%が「社内コミュニケーション」をテレワークの課題として挙げています。
テレワークでコミュニケーションに関する課題が生じやすくなる理由としては、以下の3つが考えられます。
主にテキストでやり取りすることになるため
テレワークでは、直接話をするよりも、メールやチャットなどを使ってテキストでやり取りをすることが多くなります。テキストでは、会話のように言葉のニュアンスまで伝えることはできません。また、私たちは非言語の部分でもコミュニケーションをとっていますが、メールやチャットではそれができないため、どうしても冷たく感じてしまいやすいのです。
たとえば、「報告書に間違いがあったので、明日までに再提出してください。」というメッセージが上司から届いたとします。対面であれば、表情や声のトーン、態度などから相手の気持ちを感じ取ることができますが、テキストからはそれらがわからないため、メッセージを受け取った部下は、「怒らせてしまっただろうか?」と不安になることがあります。
このように、テキストは直接会話をするよりも伝えられる情報が少ないため、不安を感じたり、誤解が生じたりしやすくなるといえます。
会話に対するハードルが高く感じるようになるため
テレワークでも、電話やWeb会議など、会話でコミュニケーションをとる手段もありますが、対面よりもハードルが高く感じられてしまうようです。
オフィスで仕事をしていれば、上司・部下や同僚の姿が見えるため、「今話しかけていいかどうか」がわかりやすいですが、テレワークだと、相手が今何をしているのか、忙しいのかどうかがわかりません。また、Web会議ツールを使う場合は、時間の設定から行わなくてはならないため、手間もかかります。
さらに、若い世代は「そもそも電話が苦手」という人も多いようです。株式会社ソフツーが実施した「電話業務に関する実態調査」の結果を見ると、20代~30代の7割以上が、電話に対して苦手意識を持っているという結果が出ています。
参考:若者世代は7割以上が「電話恐怖症」に!?ソフツー「電話業務に関する実態調査」を発表 | 株式会社ソフツーのプレスリリース
テレワークでは、オフィスで仕事をしているときのように気軽に話しかけることができないため、ちょっとした報告や連絡が億劫になってしまうことが多いようです。
雑談をする機会が減るため
オフィス勤務だと、休憩中に従業員同士で雑談をすることもありますが、テレワークだと、仕事に関することしかコミュニケーションをとらなくなっていきます。「仕事に必要なコミュニケーションがとれているなら良いのでは?」と思われるかもしれませんが、従業員同士がお互いのことを理解し、信頼関係を築くために、雑談は非常に重要なものです。
テレワークでは、従業員はそれぞれの場所で仕事をしているため、雑談をするのが難しく、相互理解を深めることができなくなります。その結果として、チームワークが悪くなる、部下の悩みに気づきにくくなるといった課題が生まれることがあります。
テレワークのコミュニケーションに関する課題
実際にテレワークを導入している企業では、具体的にどのようなことを課題と感じているのでしょうか。ここからは、コミュニケーションに関連するテレワークのよくある課題を紹介します。
業務効率が悪くなる
テレワークでは、オフィス勤務の場合よりも、報告・連絡・相談などに多くの時間をとられるようになります。
先ほどお伝えしたように、テレワークではテキストでのやり取りがメインになります。ビジネスパーソンとして、きちんとした文章を作成して送信しなければならないため、ちょっとした報告でも手間がかかるのです。また、働いている姿が見えない分、報告や連絡をすべきことも多くなります。オフィス勤務であればその場ですぐ確認できるようなことも、都度メールや電話で確認する必要があります。そして、相手がすぐに返事をくれる、電話にでてくれるとも限りません。
さらに、雑談のような気軽なコミュニケーションをとる機会も減るため、チームとして連携もとりにくくなります。
このような理由から、テレワークではオフィス勤務よりも業務効率が悪くなってしまうことがあります。
従業員が孤独や不安を感じやすい
テレワークは、従業員同士で雑談したり、悩みや不安を誰かに話したりできる機会が少ないため、従業員が孤独や不安を感じやすくなります。
特に、一人暮らしだとその傾向が強いようです。株式会社グローバルプロデュースが一人暮らしをする20代のリモートワーカー(リモートワークが週4日以上の会社員)を対象に行った調査では、7割近くがリモートワーク生活の中で孤独感を感じたことがあると回答しています。
参考:【20代リモートワーカーの悲嘆な叫び、リアルな心情を調査】約7割がリモート生活の中で「孤独感」を感じていることが明らかに | 株式会社グローバルプロデュースのプレスリリース
孤独や不安を感じているときは、心にも大きなストレスがかかっています。これを放置すれば、従業員の仕事に対するモチベーションが低下したり、メンタルヘルス不調による休職・退職につながったりすることもあるかもしれません。
部下をマネジメントするのが難しい
テレワークでは、上司と部下が直接顔を合わせることが減るので、マネジメントをするのも難しくなります。
たとえば、勤怠管理や業務管理です。部下の姿が見えないため、何時から何時まで働いているのか、今何をしているのか、進捗状況はどうなっているのか、トラブルは発生していないかなどを把握しにくくなります。また、気軽なコミュニケーションが減ることで、部下の悩みやストレスにも気づきにくくなるため、モチベーションの管理も難しくなるでしょう。
さらに、オフィス勤務なら、ミスや遅れ、トラブルなどがあれば、その都度アドバイスをすることができますが、テレワークではそれができません。そのため、部下を育成するのが難しくなるという課題もあります。
テレワークのコミュニケーションの対策
では、テレワークのコミュニケーションをスムーズにするには、どうすればよいのでしょうか。ここからは、具体的な対策を紹介していきます。
コミュニケーションツールを導入する
テレワークに活用できるコミュニケーションツールにはさまざまなものがあります。それぞれの特徴を知り、自社に合うものを導入して、コミュニケーション活性化を図りましょう。
【テレワークに活用できる主なコミュニケーションツール】
Web会議ツール | インターネットを利用して、離れたところにいる相手と映像や音声でコミュニケーションをとることができるツールです。テレワークでも顔を合わせて会話をすることができます。 |
ビジネスチャットツール | ビジネスでの利用に特化したチャットツールです。グループを作って複数人でやり取りすることも可能で、メールよりも気軽なコミュニケーションをとるのに向いています。 |
メタバースオフィス | メタバース(インターネット上に構築された仮想空間)を利用して作られたオフィスのことです。アバターを介して、オフィスにいるときのような気軽なコミュニケーションをとることができます。 |
グループウェア | チームのコミュニケーション活性化や業務効率化を促進するためのツールです。スケジュールやメール、チャット、プロジェクト管理、ファイル共有など、さまざまな機能が備わっています。 |
チャットツールを導入すれば、気軽なコミュニケーションをとりやすくなりますが、通知が多すぎると従業員のストレスになることもあります。また、すぐにレスポンスしなければならないとプレッシャーに感じる人もいるかもしれません。このように、ただ導入するだけでは逆効果になってしまうこともありますので、そのツールを何のために・どのように使うのかという目的と、ルールを決めておくことも大切です。
雑談の時間を設ける
テレワークであっても、従業員同士で雑談したり、気軽なコミュニケーションをとったりする機会をあえて設けてみましょう。具体的には、Web会議ツールを使ってオンラインでランチ会や飲み会を開催する、チャットで雑談部屋(雑談をするためのグループチャット)を作るといった施策が考えられます。
また、テレワークの割合が高い企業でも、定期的に従業員同士が対面で交流できる機会を設けるのがおすすめです。先ほど紹介しました株式会社グローバルプロデュースの調査では、20代のリモートワーカーの半数以上が、「社内で交流する機会や社内イベントを増やして欲しい」と回答しています。上司や後輩、同僚と、直接会ってより良い関係性を築きたいと感じている人が多いようです。
参考:【20代リモートワーカーの悲嘆な叫び、リアルな心情を調査】約7割がリモート生活の中で「孤独感」を感じていることが明らかに | 株式会社グローバルプロデュースのプレスリリース
業務状況を「見える化」する
部下のマネジメントに課題を感じているなら、業務管理ツールを導入してみてはいかがでしょうか。業務管理ツールを導入して業務状況を「見える化」すると、「コミュニケーションがとりにくく部下の状況を把握しづらい」という課題を解決できるでしょう。
従来の業務管理ツールでも構いませんが、テレワークの割合が高い企業には、テレワーク専用のツールがおすすめです。ツールによって異なりますが、テレワーク専用の業務管理ツールには以下のような機能が搭載されていることが多いです。
- アプリケーション(Excel、Word、メールなど)の使用状況を可視化し、分析する機能。
- 労働時間を適正に保つためにアラートで通知する機能。
- 個人・チームの業務の進捗状況を可視化する機能。
業務管理ツールを導入することで、進捗の把握やモチベーション管理もしやすくなるでしょう。
1on1を実施する
部下のマネジメントに課題を感じているなら、定期的にオンライン(または対面)で1on1を実施するのもおすすめです。
1on1とは、主に部下の成長を促すことを目的に行われる、上司と部下による1対1の面談のことをいいます。上司が部下に一方的に指示やアドバイスを与えるような面談ではなく、双方向のコミュニケーションにより部下への理解を深めるというのが、1on1の特徴です。実施頻度は企業によって異なりますが、週1回~月1回といった比較的短いスパンで実施するケースが多いです。
1on1で部下の話を聴く機会を設けることで、相互理解が深まり、より良い関係性を築けるようになります。部下の悩みや不安も引き出しやすくなるでしょう。また、部下としても、上司を信頼できるようになれば、テキストのやり取りで冷たく感じてしまったり、電話をかけるのをためらったりといったことも少なくなるでしょう。
テレワークのコミュニケーションを活性化させた事例
実際にテレワークを導入している企業では、具体的にどのようなコミュニケーションの工夫が行われているのでしょうか。最後に、テレワークにおけるコミュニケーション活性化の事例を紹介します。
カルビー株式会社
カルビー株式会社は、2020年7月に、オフィスで働く従業員を原則モバイルワークとする施策などを盛り込んだ「Calbee New Workstyle」という新しい働き方をスタートさせました。
人事部門では、定期的にオンラインで「Calbee Learning Café」を開催し、マインドフルネスやリーダーシップなど、さまざまなテーマに関する学びを提供しています。従業員であれば誰でも自由に参加することができるため、交流の場にもなっているそうです。
また、定期的にWeb会議ツールをつなぎっぱなしにする時間を設け、オフィスにいるときと同じような環境にしてみたり、雑談をするグループチャットを作ったりなど、コミュニケーションを活性化させるため、それぞれの従業員がさまざまな工夫をしているそうです。
参考:「働きやすい」だけでなく「働きがい&やりがい」の実現へ! ~「Calbee New Workstyle」の挑戦~|THE CALBEE
アサヒグループ食品株式会社
アサヒグループ食品株式会社では、新型コロナウイルス感染症の流行により働き方が変わって以降、コミュニケーションに課題を感じる部署や従業員が増加していました。それを受けて、2022年9月より「-LinkU(リンク)-」をスタート。部署間のコミュニケーションの機会創出を目指した、アサヒグループ食品株式会社の独自の施策です。
その施策の1つとして、オンラインで「まなび場 -UNITE School-」という講義を開催しています。多様な知識を共有して、従業員同士で学び合うことを目的としたものです。講師は従業員で、業務時間内に実施しており、誰でも参加することができます。商品の歴史、開発秘話、他部署の業務、健康など、さまざまなテーマの講義が開催されています。
参考:社員同士が学び成長し合う『まなび場 -UNITE School-』を開催!|アサヒグループ食品
【講義+アクティビティ一体型】あそぶ社員研修
「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。
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- チームビルディング効果が高いアクティビティを通して受講者のエンゲージメントを向上させられる
- 誰もが没入できる「あそび」を取り入れた体験型アクティビティで受講者の主体性を引き出す
- 複数回のフィードバックによって学びを定着させる
まとめ
新型コロナウイルス感染症が流行して以降、日本でもテレワークが一気に普及しました。最近は、アフターコロナに向けて「原則出社」に戻す企業も増えていますが、継続している企業も多く、テレワークも1つの働き方として定着したといえるのではないでしょうか。
多くのメリットがあるテレワークですが、オフィスで働くよりもコミュニケーションが難しいという課題があります。コミュニケーションに関する課題を放置すると、業務効率や生産性の低下につながったり、ストレスから従業員が休職・退職に追い込まれたりなど、さまざまなデメリットがもたらさせる可能性があります。企業の成長のために、本記事で紹介した対策も参考にしていただきながら、コミュニケーション活性化に取り組んでみてください。
「あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。