職場環境改善のアイデア・取り組むメリットを解説
- ワークスタイル
働き方改革やメンタルヘルス対策とともに、「職場環境改善」の注目度が高まっています。
本記事では、まず「職場環境」とは何かを解説し、職場環境の改善に取り組むべき理由と、企業が得られるメリット、職場環境改善のアイデアと注意点を紹介します。
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職場環境とは
職場環境の改善に取り組むなら、まずは、そもそも「職場環境」が何を指すのかを正しく理解しておく必要があります。職場環境は、大きく以下の3つの要素に分けることができます。
1.物理的な環境
オフィスや作業場所が、物理的に快適に仕事ができる空間になっていないと、仕事がしにくいだけではなく、従業員がストレスを感じてしまうこともあります。
オフィス内の温度や湿度、照明の明るさが適切になっているか、不快な音や臭いがしないかなどを確認し、必要な対策をとりましょう。さらに、従業員が快適に仕事を進められるように、必要な設備や通信環境を整える、レイアウトを工夫する、パーソナルスペースを確保する、オフィス内の清潔を保つといった取り組みも求められます。
2.人間関係
快適な職場環境をつくるためには、従業員同士で良好な関係を築けているのか、円滑なコミュニケーションをとれているのかという点も重要です。人間関係が良好でない職場では、報告・連絡・相談が滞ったり、ミスコミュニケーションも起きやすくなったりするため、仕事にも悪影響が出ることがあります。それだけではなく、従業員がストレスからメンタルヘルス不調を引き起こしてしまう可能性もあるでしょう。
仕事をスムーズに進めるため、そして、従業員の健康を守るために、コミュニケーションが生まれやすい環境づくりも必要です。
3.仕事内容
仕事の内容も、職場環境に含まれます。たとえば、業種によっては、重い荷物を運ぶ作業や、高温多湿の空間や騒音があるなかでの作業を、従業員にお願いしなければならないこともあるでしょう。従業員にこのような心身に負担がかかる仕事を任せるなら、その負担をできるだけ少なくする取り組みが求められます。
また、仕事の内容そのものが従業員の経験やスキルに合っていないような場合も、従業員はモチベーションの維持が難しくなります。仕事の量が多い、残業が多いというような場合も、休息が十分にとれずに、パフォーマンスが低下してしまうこともあるでしょう。
企業は、従業員が安全に、かつ健康に仕事ができるように、仕事内容にも配慮しなければなりません。
職場環境の改善が必要な理由
のちほど詳しく解説していますが、職場環境を改善することで、従業員のストレスを軽減できる、エンゲージメント向上につながるなど、企業としてはさまざまなメリットが得られます。しかし、職場環境の改善に取り組むべき理由は、それだけではありません。企業が職場環境改善に努めることは、法律にも定められています。ここからは、その内容を確認していきましょう。
快適な職場環境形成のための措置が求められている
労働安全衛生法の第71条の2には、「事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、(中略)快適な職場環境を形成するように努めなければならない。」と定められています。
そして、同法第71条の3に基づき、事業者が講ずべき措置に関する指針も公表されています。指針では、簡単にまとめると、以下のような措置により、快適な職場環境の形成が図られることが望まれるとしています。
- 作業環境の管理
空気環境、温度、照度が、従業員にとって適切な状態に維持管理されるようにすること。 - 作業方法の改善
不自然な姿勢での作業や、大きな筋力を必要とする作業などについては、従業員の心身の負担が軽減されるように、作業方法の改善を図ること。 - 労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
従業員ができるだけ速やかに心身の回復を図れるよう、休憩室などの施設の設置・整備を図ること。 - その他の施設・設備の維持管理
従業員の職場生活で必要となる施設・設備(洗面所やトイレなど)は、清潔で使いやすい状態が維持管理されていること。
参考:・事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針(◆平成04年07月01日労働省告示第59号) (mhlw.go.jp)
労働者の安全に配慮する義務がある
労働契約法の第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。
つまり、従業員の安全面と、メンタルを含む健康面に配慮しなければならないということです。これを、「安全配慮義務」といいます。
使用者とは、労働者に対して賃金を支払う者を指します。そして、使用者からこの義務を果たすための取り組みを実行する責任を委ねられているのは、管理監督者(部長、課長など)です。管理監督者は、積極的に職場環境の改善に取り組むことが求められます。
ストレスチェックを実施する義務がある
ストレスチェックとは、複数の質問に答えることで自分のストレスの状態を知ることができる、簡単な検査のことです。労働安全衛生法により、従業員が50人以上いる事業所には、これを年に1回実施することが義務付けられています。
ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを主な目的としています。そのためには、ストレスチェックの結果を本人に通知してセルフケアに役立ててもらうだけでなく、企業で検査結果を集団分析し、職場環境の改善につなげることも重要なのです。
職場環境を改善するメリット
次に、職場環境を改善することで、企業としてはどのような効果が得られるのかを解説していきます。
従業員のストレスを軽減できる
厚生労働省が公表している「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を見ると、現在の仕事や職業生活に関して、強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.2%となっています。その内容として最も多いのが「仕事の量」(36.3%)、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」(35.9%)、「仕事の質」27.1%となっています。
参考:個人調査(令和4年 労働安全衛生調査(実態調査))- 厚生労働省(PDF)
働く人の多くが、職場環境でストレスを感じていることがわかります。特に、先ほど紹介した職場環境の3つの要素のうち、仕事内容がストレスの原因になっていることが多いようです。
ストレスを受け続けると、心や身体に悪い影響が出ることがあります。職場環境を改善することで、従業員が職場で感じるストレスを減らすことができるため、ストレスによる不調も防ぐことができるでしょう。
従業員のパフォーマンスが安定する
従業員の健康に配慮することで、体調不良やメンタルヘルス不調が起きにくくなり、パフォーマンスが安定するというメリットもあります。
プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムという言葉をご存じでしょうか。プレゼンティーイズムとは、「仕事を休むほどではないけれども、健康問題を抱えながら働いている状態」、アブセンティーイズムとは、「体調不良により仕事を休んでいる状態」のことをいいます。
どちらも防がなければならないものですが、近年特に注目されているのがプレゼンティーイズムです。一見普通に働いているように見えても、実は本人は健康問題を抱えているため、気づかないうちに効率が悪くなっていたり、パフォーマンスが下がっていたりすることがあるのです。このような従業員が増えれば、企業全体の生産性にも影響が出るでしょう。
従業員がメンタル面を含めて健康に働ける職場環境を整えることは、プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの予防につながります。その結果として、従業員はいつでも安定してパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
コミュニケーションが活発になる
従業員同士がコミュニケーションをとりやすい環境を整備することで、情報の伝達・共有もスムーズに行えるようになります。その結果として、業務効率化や、業務の質の向上も期待できるでしょう。
また、何気ないコミュニケーションのなかで、新たなアイデアを生み出すきっかけが生まれることもあるかもしれません。さらに、社内コミュニケーションが活発になれば、良好な人間関係を築きやすくなります。職場全体の雰囲気も明るくなり、働きやすさも向上するでしょう。
エンゲージメントの向上につながる
エンゲージメントとは、従業員の企業に対する貢献意欲のことをいいます。前項でもお伝えしたとおり、社内コミュニケーションが活性化すると、従業員同士が良好な関係を築きやすくなります。従業員同士のつながりがより強固なものになり、職場の心理的安全性も高まるでしょう。その結果、エンゲージメントが高まることも期待できます。
さらに、エンゲージメントが向上すれば、生産性の向上、離職率の低下といった効果も得られるかもしれません。
企業イメージの向上につながる
時代とともに、働く人のニーズも多様化しています。就職・転職活動を行う際、給与や条件だけでなく、「職場の人間関係」や「働きやすさ」を重視して就職先を選ぶという人も少なくありません。
職場環境改善の取り組みは、採用活動において自社のアピールポイントになります。職場環境改善の施策を発信し、求職者に「働きやすい職場」「従業員を大切にする企業」という良いイメージを持ってもらうことができれば、応募が集まりやすくなり、採用コストの削減にもつながるでしょう。
職場環境改善のアイデア
では、職場環境を改善するには、具体的にどのような取り組みを実施すればよいのでしょうか。ここからは、働きやすい職場をつくるためのアイデアを紹介していきます。
オフィス環境を快適にする
従業員が快適に仕事に取り組めるように、オフィスの物理的な環境を整えましょう。
【アイデアの例】
- 冷房の風が直接当たらないよう、デスクの位置を変える。
- 執務室、会議室、休憩室など場所ごと適した照明に変える。
- トイレや更衣室を清潔に保つ。
- 心身を休められるようなリフレッシュスペースを設ける。
社内コミュニケーションを活性化させる
仕事に関する報告・連絡・相談をスムーズに行えるというだけでなく、部署間の交流を促したり、従業員同士がより気軽にコミュニケーションをとったりできるような工夫も考えてみましょう。タテとヨコの両方向のコミュニケーションを活性化させることが大切です。
【アイデアの例】
- 社内報や社内SNSで情報を発信する。
- 定期的に上司と部下で1on1を実施する。
- ビジネスチャットを導入する。
- フリーアドレスを導入する。
※フリーアドレス……固定の席を持たず、その日働く席を従業員が自由に選べる制度のこと。
プライベートの時間を確保しやすくする
従業員がしっかりと休息がとれるように、勤務時間や勤務制度を見直してみましょう。ワークライフバランスに配慮することは、従業員に仕事へのモチベーションを維持してもらうためにも大切です。
【アイデアの例】
- 多様な働き方(フレックスタイム制、短時間勤務制度など)を導入する。
- ノー残業デーを設ける。
- 1日、1週、1か月単位の労働時間の目標値を定める。
- 福利厚生の1つとして、独自の特別休暇を導入する。
仕事の内容を見直す
現在、任せている仕事が従業員の負担になっていないかを確認し、内容や役割分担、量、手順などを見直してみましょう。
【アイデアの例】
- 作業手順をマニュアル化する。
- 定期的にミーティングを開催し、負担がかかっている部分がないか確認する。
- 単純な作業だけでなく、個人のレベルに合わせて達成感が得られるような作業も任せる。
- 作業ミスの防止策を講じる。
従業員が安心して働ける仕組みをつくる
従業員が安心して働けるよう、悩みの解消や成長をサポートする制度や仕組みを設けることも検討してみましょう。
【アイデアの例】
- 社内に気軽に悩みを話せる相談窓口を設ける。
- ハラスメント防止に取り組む。
- 資格取得のための費用をサポートする。
- キャリアパスを示し、公平に昇進・昇格のチャンスを与える。
従業員の健康管理に取り組む
先ほどお伝えしたように、使用者には「安全配慮義務」がありますので、企業として従業員の健康管理にも取り組みましょう。
【アイデアの例】
- 従業員数50人未満でもストレスチェックを実施する。
- 健康に関する勉強会やセミナーを開催する。
- 禁煙を希望する従業員をサポートする(カウンセリングを実施する、禁煙製品を提供するなど)。
- 社内に軽い運動ができるスペースをつくる。
職場環境の改善に取り組む際の注意点
職場環境の改善に取り組む際、注意すべきポイントが2つあります。最後に、その注意点を紹介します。
従業員一人ひとりに目を向ける
何に「働きやすさ」や「快適さ」を感じるかは、人によって違います。そのため、企業としては良かれと思って実行した施策が、逆効果になってしまうこともあります。
たとえば、社内コミュニケーション活性化のために、他部署との交流会を開催したとします。これが、大人数の集まりが苦手な従業員にとっては、ストレスになることもあるでしょう。
また、オフィス内が「寒い」と感じている事務員が多かったためエアコンの温度を上げたところ、外回り営業から戻ってきた従業員から「暑い」といわれた、なんていうのもよくある話です。
職場環境の改善に取り組む際は、従業員一人ひとりに目を向けて、場合によっては個別の対応も検討する必要があります。
計画を立てて長期的に取り組む
労働安全衛生法の第71条の2には、事業者は「継続的かつ計画的に」快適な職場環境の形成のための措置を講ずることと定められています。何か施策を実行したらそれで終わりではなく、しっかりと計画を立てて、PDCAサイクルを回しながら改善に取り組み続けていくことが求められています。
そもそも、職場環境改善は、短期間に効果が得られるものではありません。人事の担当者は、そのこともあらかじめきちんと認識しておきましょう。
そして、先ほどお伝えしたように、労働契約法の第5条に定められている「安全配慮義務」を果たすための取り組みを実行する責任を使用者から委ねられているのは、管理監督者です。職場環境改善は、人事だけで行うのではなく、管理監督者を含め、組織全体で取り組んでいく必要があります。全体を巻き込みながら長期的に取り組んでいけるような計画を立てることも、職場環境改善を成功させるポイントです。
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まとめ
職場環境と聞くと、オフィスのレイアウトや施設・設備が整っているかといった物理的な環境だけが思い浮かぶかもしれませんが、それだけでなく、人間関係や仕事内容も職場環境に含まれます。職場環境の改善に取り組む際は、まずはこれを正しく認識することが大切です。
職場環境が改善されれば、従業員のストレス軽減、生産性の向上、企業イメージの向上などさまざまな効果が期待できます。ただ、短期間で効果が得られるものではありませんので、きちんと計画を立てて、組織全体で長期的に取り組んでいきましょう。
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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
この記事の著者
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。