親和図法とは?進め方、活用シーンをわかりやすく解説

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業務の改善点を見つけるとき、お客様から届いた声をまとめるとき、会議で出た意見を整理するときなどに役立つ、「親和図法」という手法があります。品質管理の7つの手法をまとめた「新QC7つ道具」の1つです。

本記事では、親和図法とはどのような手法なのか、比較されることが多い連関図法や特性要因図との違いも含めて、わかりやすく解説します。さらに、親和図法の進め方や、具体的にどのようなシーンで活用できるのかも紹介してきます

 

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親和図法とは

親和図法とは、ある問題に関する言葉の情報集めて、それらを親和性でグループに分けて整理し、図としてまとめていくというものです。出来上がった図は、「親和図」と呼ばれます。多くの情報や複数の異なる意見を整理するときに使われる手法です。起源は、文化人類学者の川喜田二郎氏が考案した「KJ法」だといわれています

親和図法では、会話や文章などから得られる言葉の情報を、「言語データ」という短い文章に加工してから使用します。そのうえで、似ている、または関係が強いと感じる言語データ同士を集めて、グループ化していきます。こうすることで、問題の構造を視覚的に把握できるようになります。問題の本質を理解したり、解決策を導き出したりするのに役立つ手法です。

言語データは、単語でも使われますが、親和図法では「主語+述語」、または「名刺+動詞」の短い文章とします。言語データの集め方・まとめ方は、のちほど詳しく解説します。

事実を知るためのデータとしては、言語データのほかにも、「数値データ」と「数値化データ」があります。数値データとは、測定結果を示したデータのことです。数値化データとは、数値に置き換えられたデータのことをいいます。親和図法は、このうちの言語データを扱う発展的な手法である「新QC7つ道具」の1つです。

QC7つ道具とは

「新QC7つ道具」の「QC」は、「Quality Control(品質管理)」の頭文字をとったものです。品質管理とは、その名のとおり、提供する製品やサービスの品質を、一定以上に保つための取り組みのことをいいます。

「新QC7つ道具」とは、品質管理に役立つ7つの手法のことです1972年に、納谷嘉信氏を中心に結成された「QC手法開発部会」により取りまとめられました。7つの手法は、以下のとおりです。

1.親和図法

意見や情報を言語データとしてまとめ、それらを親和性によって整理することで、問題の構造を把握する手法。

2.連関図法

問題の原因と結果を線でつないで相互関係を明らかにし、重要要因を絞り込んでいく手法。さまざまな要素が複雑に絡み合っている場合に使われる。

3.系統図法

目標を達成するための方策をツリー状に並べていくことで発想を広げ、具体的に何を実行するかを決めていくという手法。

4.マトリックス図法

問題に関する2つの要素を「行」と「列」に配置して、その交点に関係の有無や度合いを表示することで、問題を解決するために必要な情報を得るという手法。

5.アロー・ダイヤグラム法

計画を推進するために必要な作業手順を線でつないで、各作業の関係を整理したり、日程・スケジュールを確認したりする手法。

6.PDPC

目標達成までに起こる可能性があるさまざまな事態を予測して、それらを回避するための方法を明確にしておく手法。PDPCは「Process Decision Program Chart」の略称。

7.マトリックス・データ解析法

集計されたデータの相関関係を手掛かりに、少数個の総合特性値を見つけて、データの特徴をまとめるという手法。

この「新QC7つ道具」が誕生するより前に、「QC7つ道具」というものもまとめられています。「QC7つ道具」は、石川馨氏を中心に1960年頃にまとめられた統計的手法で、「パレード図」「特性要因図」「ヒストグラム」「グラフ」「チェックシート」「散布図」「管理図」の7つの手法で成り立っています。これらは、数値データから問題を見える化して整理するものです。対して「新QC7つ道具」は、言語データから問題を見える化して整理します。「新QC7つ道具」と「QC7つ道具」は、お互いに補完し合う関係にあります。

これらのなかで、親和図法と比較されることが多いのが、連関図法(新QC7つ道具)と特性要因図(QC7つ道具)です。それぞれとの違いを、詳しく見てみましょう。

連関図法や特性要因図との違い

【連関図法】

1つの問題や課題には、さまざまな要因が絡んでいることがあります。「新QC7つ道具」の連関図法は、上のような図にまとめて複雑に絡んだ糸を解きほぐしていくことで、問題や課題の重要な要因を特定する手法です

【特性要因図】

そして、「QC7つ道具」の特性要因図は、上図のように、結果(特性)がどのような要因により発生したのを図式化したもののことをいいます。魚の骨のような形をしていることから、「フィッシュボーン図」とも呼ばれています。問題の原因の特定や、解決方法を探るときに役立つ手法です

これらに対して親和図法は、言語データを親和性により整理することで、問題の構造を理解するという手法です。データが多すぎて状況を把握できないときや、そもそも問題は何なのかが明確でないときには、親和図法が適しています

 

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親和図法の進め方

ここからは、親和図法の具体的な進め方を紹介していきます。親和図法は、親和図を作成したらそれで終わりではなく、出来上がった親和図をもとに「文章にまとめる」ところまで実施しましょう。具体的には、以下の6ステップで進めていきます。

  1. 目的を決めて言語データを集める
  2. 言語カードを作成する
  3. 似ている言語カードを寄せる
  4. 親和カードを作成する
  5. 親和図を作成する
  6. 情報を文章でまとめる

では、各ステップを詳しく見ていきましょう。

1.目的を決めて言語データを集める

まずは、何のために、何についての親和図を作るのかを決めましょう。たとえば、「会議で出た意見をまとめる」「お客様の声からニーズを把握する」などです。特に、複数人で親和図の作成に取り組むなら、全員が同じ認識を持っておく必要があります。はじめにしっかり目的を決めて、その目的を常に意識しながら進めていくことが大切です。

目的が決まったら、扱う問題に関する言語データを集めます。言語データには、事実データ(事実を示すデータ)、意見データ(意見を書き出したデータ)、推測データ(推測を書き出したデータ)などがあります。目的に合わせて、使用するデータを使い分けましょう。

言語データの集め方

言語データの集め方としては、まずは「メモをとる」という方法があります会議やミーティング、ヒアリングを行うときなどは、発言をメモするための付箋を用意しておくと便利です。1つの発言につき付箋一枚を使い、発言内容と誰が発言したのかをメモしておきます。発言の内容が理解できないときも、名前を書いておくことで、あとで本人に確かめることができます。

そのほか、「文献(新聞、書籍など)から集める」「アンケートをとる」「ユビキタスで意見を送ってもらう」などの方法もあります。

2.言語カードを作成する

言語データを集めたら、それらを1つひとつカード(付箋でもOK)に書いていきます。これを、「言語カード」といいます。

得られた情報は、そのまま言語データとして使用できるものもあるかもしれませんが、単語だけのものや、1つの文章のなかに2つ以上の情報が含まれているようなものは、具体的で短い文章に加工する必要があります。以下のポイントを意識しながら、集めた情報を言語データ化してみましょう。

  • 「主語+述語」、または「名刺+動詞」の形になるようにする。
  • できるだけ抽象的な表現は使わず、具体的な文章とする。
  • 単語のみや、「〇〇化」のような体言止めにしないこと。
  • 1つの文章のなかに2つ以上の情報が含まれないようにする。

たとえば、ある飲食店のご意見BOXに、お客様から次のような声が届いたとします。

「店舗の内装が素敵で、料理もおいしく大満足でした。」

この文章のなかには、「店舗の内装が素敵だった」「料理がおいしかった」という2つの情報が含まれています。このような場合は、1つの文章を2つの言語データに分ける必要があります。

3.似ている言語カードを寄せる

言語カードを作成できたら、すべての言語カードを机の上に広げます。そして、言語カードを読みながら、親和性のあるカードを寄せていきましょう「親和性のある」とは、「似ている」とか「関係が強い」と感じることを意味します。分類したり、理屈で寄せたりすることではありませんので、注意しましょう

寄せる言語カードは、基本的には2枚とします。多くの言語カードを寄せると、次のステップが進めにくくなりますので、多くても3枚までにしましょう。

逆に、「似ている」と感じるものがなければ、その言語カードは1枚で置いておいて構いません

4.親和カードを作成する

次に、新しいカードに、寄せた言語カード同士の親和性を表す文章を書きます。これを、「親和カード」といいます。

グループごとに親和カードを作り、寄せた言語カードを重ねて、その上に親和カードを置いていきます。そして、次はこれを1枚のカードとして、また「カード寄せ → 親和カード作成」の流れを繰り返します。これを、大きなグループが35つくらいになるまで続けます。

5.親和図を作成する

グループ分けができたら、言語カードと親和カードをすべて広げて、今度はこれを図式化していく作業に入ります親和カードに色を付けたり、枠の色を変えたりすると、視覚的にも関係性がわかりやすくなるのでおすすめです。

6.情報を文章でまとめる

最後に、以下のように親和図からわかる情報を文章にまとめていきましょう

↓(文章に直す)

親和図からわかったことは以下の3つです。

1.(親和カードA

具体的には、(言語カード)、(言語カード)ということです。

2.(親和カードB

具体的には、(言語カード)、(言語カード)ということです。

3.(親和カードC

具体的には、(言語カード)、(言語カード)ということです。

参考:「図解入門ビジネス新QC七つ道具の使い方がよーくわかる本」(著者:今里健一郎 / 出版社:秀和システム / 発売:2012年)

親和図法を活用できるシーン

では、親和図法はどのようなシーンで活用できるのでしょうか。いくつか、例を見ていきましょう。

自社製品の品質を改善したいとき

先ほどお伝えしたように、「新QC7つ道具」のQCは「Quality Control(品質管理)」です。その手法の1つである親和図法は、自社に製品やサービスに品質を改善したいときに役立ちます

まずは口コミサイトやSNSに発信されている自社製品に関する情報を集めたり、お客様アンケートを実施したりして、お客様からの声をより多く集めます。それを言語データ化し、親和図にまとめれば、改善点や問題点が見えてくるでしょう。

新商品のアイデアを提案するとき

親和図法は、新しいアイデアを生み出したいときにも活用できます。まず、前項と同じような方法で、お客様の声を集めます。お客様との会話のなかでいわれた一言や、業務のなかで気づいたことを、日頃からメモしておくようにするのもよいでしょう。それらを言語データ化して親和図を作成すれば、顧客のニーズを的確に把握することができます。それをもとにアイデアを出し合えば、顧客のニーズをとらえた新商品を生み出すことができるでしょう

また、話し合いのなかで生まれたたくさんのアイデアをまとめるときにも、親和図法は役に立ちます新たなアイデアを生み出すために、複数人で自由に意見を出し合う「ブレインストーミング」という会議の技法があります。親和図法は、ブレインストーミングの結果をまとめる際にもよく用いられる手法です。

研修の満足度を知りたいとき

親和図法は、研修の改善にも役立てることができます研修を実施したあと、受講者に対してアンケートを実施したり、ユビキタスで感想を送ってもらったりして、意見を集めます。それらを言語データ化して親和図にまとめれば、研修の良かった点・悪かった点を整理することができます。親和図から得られた情報をもとに研修内容を見直せば、次回の研修はより満足度が高いものになるでしょう。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

「新QC7つ道具」の1つ、親和図法について解説しました。親和図法を効果的に活用できるかどうかは、集めた言葉の情報を、いかにきちんと言語データ化できるかがポイントになります。また、自分一人では知っていること、発想できることにも限界があるので、複数人で議論しながら進めていくのがおすすめです。

親和図法は、多くの意見や情報を整理したり、問題の本質を理解したりするのに役立ちます。何か解決すべき問題があり、その問題の全体像がはっきりと見えないという場合は、一度親和図法で構造化してみてはいかがでしょうか。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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