チェンジリーダーシップとは?概要や必要性、8つの段階について解説

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変化が加速している現代社会において、企業はさまざまなニーズへの対応が求められています。従来通りのビジネスを行っているだけでは、企業が成長を続けることは非常に困難でしょう。今後も継続的な成長を目指すためには、今までの手法にとらわれず、常に変化し続ける「チェンジ(変革)」に取り組む必要があるでしょう。このような状況のなかで、企業は組織に変革をもたらすチェンジリーダーシップを発揮できる人材を求めています。

本記事では、チェンジリーダーシップの概要やその必要性、変革を成し遂げるための8つの段階、その影響について解説します

 

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チェンジリーダーシップとは?

チェンジリーダーシップとは、社会情勢や環境の変化を捉え、それらに対応するための変革を実行するためのリーダーシップのことですリーダーシップ論の研究者であるジョン・P・コッター氏が提唱した「変革的リーダーシップ理論」に基づいて発揮されるリーダーシップを指しています。

コッター氏は、さまざまな企業が変革に取り組むなかで、変革がうまく進まない際に見受けられる問題点に着目し、それらを解決するための手法を研究しました。現代社会では、情勢や環境が目まぐるしく変化しており、変革に取り組まない企業が生き残ることは非常に難しいでしょう。そのため、「チェンジリーダーシップ」を有するリーダーがさまざまな企業から求められています。

チェンジリーダーシップが必要な理由

「環境の変化」や「社会の多様化」が進むなかで、企業は現在の地位を維持することが非常に難しい状況に置かれています。急速に変化が進む社会では、従来のビジネス手法やノウハウに固執していては、成果をあげることが困難です。企業は、古くからの習慣や体質を抜本的に見直し、リスクを冒して変革を起こさなければ、成長を掴み取れないでしょう。また、このような社会の変化に適応するために、企業は変革への取り組みを行っていますが、変革を妨げるさまざまな要因を組織内に抱えているといったケースも少なくありません。これらの問題を解決するためには、従来の手法や先入観にとらわれず、変革を推し進め、維持することができる強いリーダーシップを持ったリーダーが不可欠です

しかし、コッター氏のリーダーシップ理論でも語られているように、組織に変革をもたらす「チェンジリーダーシップ」を発揮できるリーダーは少なく、多くの企業において人材が不足しています。このような背景から、現代社会では、従来の組織を維持するためマネジメントではなく、チェンジリーダーシップを発揮できる人材が強く求められています

また、コッター氏による「変革的リーダーシップ理論」では、チェンジリーダーシップを有するリーダーは、以下の点を理解し、身につけている必要があるとされています。

  • リーダーシップとマネジメントの違い
  • チェンジリーダーシップに必要な4つの要素

変革をもたらすリーダーは、リーダーシップとマネジメントは全く別のものであることを理解する必要があります。また、リーダーは部下との関係を良好に保つための4つの要素を身につけることが重要です。続いて、これらについて詳しく見ていきましょう。

リーダーシップとマネジメントの違い

企業経営において、リーダーシップは攻めであり、マネジメントは守りと表すことができます

マネジメントでは、計画と予算の策定を行い、それらを達成するための人員配置を行うことで、組織を安定的に運営します。つまり、

。一方、リーダーシップとは、組織全体の方向性やビジョンを明確に描き、組織や人を導くことです。組織におけるリーダーの役割は、「目標達成に向け、さまざまな良い影響を与えること」にあります2つの役割の違いを分かりやすく表すと、以下のような表で示すことができます。

リーダーの役割

マネジャーの役割

組織に変化を与える

組織を安定的に維持する

リスクを取り、組織に改革を起こす

リスクを排除し、組織を保守する

将来のビジョン(目標)を明確化し、共有する

目標達成に必要な人員配置や予算策定を行う

組織外に目を向けることで成果をあげる

組織内に目を向け、規律や秩序を守る

行動を重視し、新たな発想を生み出す

効率を重視することで、生産性を高める

組織に大きな変革を起こすためには、さまざまな階層において、リーダーシップを発揮する人材が不可欠です。そのため、企業は、より多くのリーダーシップを有する人材の育成に取り組む必要があります。リーダーシップとマネジメントの違いを正しく理解しておくことで、より適切で効率的な育成手法を取ることができるでしょう。また、組織の改革にはリーダーの存在が不可欠ですが、リーダーとマネジャーに優劣があるわけではありません。組織を安定的に運営し成長に導くためには、リーダーシップとマネジメントのバランスをしっかりと取ることが重要です。

参考:01_リーダーシップを発揮しよう テキスト (mhlw.go.jp)

チェンジリーダーシップに求められる4つの要素

組織に変革をもたらすチェンジリーダーシップを発揮するためには、リーダーと部下(フォロワー)の関係性が非常に重要です。以下の4つの要素を満たすリーダーは、フォロワーからの信頼を獲得し、高い意欲を引き出すことができます。

理想化された影響

  • リーダー自身が高いカリスマ性を備えており、このリーダーの下であれば「必ず目標を達成できる」といった信頼をフォロワーから獲得し、組織に良い影響を与えることができている。

士気を鼓舞する動機づけ

  • フォロワーに対して、明確にビジョンを共有する能力を有しており、フォロワーの「モチベーション」や「やりがい」を高めるなどの、プラスの影響を組織に及ぼすことができる。

知的な刺激

  • フォロワーが、自身の思考や手法を活かし、独創的なアイデアを生み出すサポートを行うことができる。また、リーダー自身の持つさまざまな知識をフォロワーに伝えることで、多角的な視点を持てるような指導を行う。このようなリーダーの行動は、仕事の楽しさややりがいをフォロワーに感じさせることができる。

個別的配慮

  • リーダーが、フォロワー個々の特徴や能力を十分に把握している。また、フォロワーそれぞれに合った、教育方法や挑戦課題を提供することで、フォロワーの成長を促進し、成熟度を高めることができる。

これら4つの要素を持つチェンジリーダーシップを有するリーダーは、フォロワーの「労働意欲」や「組織への献身性」を高め、フォロワーの意識を個人から組織に向けることができます。高いモチベーションや献身性を持つ人材によって構成された組織は、より大きな成果を生み出すことができるため、組織にとって「チェンジリーダーシップ」は不可欠なものであるといえるでしょう。

参考:変革型リーダーシップがワークストレスに及ぼす影響に関する検討(PDF)

 

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チェンジリーダーシップにおける8つの段階

コッター氏は、さまざまな企業の変革への取り組みを観察し、成功事例の検証を行うことで、変革に必要なプロセスやリーダーの役割を見つけ出しました。コッター氏の研究によると、チェンジリーダーシップを発揮するために、リーダーは以下の8つの段階を踏む必要があります。ここでは、変革に必要なそれぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。

1.     危機意識の浸透

変革の初期段階には、組織内での「危機意識」の醸成が不可欠です。危機意識を持たない組織は、従来の手法やノウハウを変えることはなく、保守的な行動を繰り返してしまいます。また、組織内で働く人々も、危機意識がなければ、従来の職場環境に満足し、変革への抵抗勢力となってしまう可能性があります。そのため、変革に取り組むリーダーは、組織内において「危機意識」を浸透させるための行動を行い、多くの同志を作らなければなりません。

2.     変革チームの発足

組織内で変革を進めるためには、強力な力を持つチームを形成しなければなりません。チーム自体に組織を動かす力がなければ変革は困難であるため、チームに属する人を集める際は、周囲からの信頼や実績、人脈、権限などを有した人物が望ましいでしょう。また、経営陣が変革チームに加わっていないような状況であれば、素早い意思決定が行えず、変革への道は閉ざされてしまいます。そのため、組織が一丸となって、変革に取り組むことのできるチームの発足が、変革成功の大きな鍵といえるでしょう。

3.     ビジョンと戦略の策定

変革を成功させるためには、明確なビジョンを生み出し、それを達成するための戦略を策定することが大切です。変革に成功した組織は、変革を推進するチームが「明確で、魅力的なビジョンや戦略」を策定しています。説明する際に多くの時間を取られるような、分かりにくいビジョンや戦略は、組織に混乱を招いてしまう恐れがあるため、変革を妨げる危険があるでしょう。ビジョンや戦略の策定する際は、「実現可能性が高い」「目に見える」「5分間で説明できる」などといった点を意識することが大切です。

4.     ビジョンの伝達

どれだけ分かりやすく、魅力的なビジョンを策定していても、組織内の人々に伝達されていなければ変革は成功しません。また、改革ビジョンを組織内に浸透させるためには、「社長から社員へのメッセージとして、改革へのビジョンを伝えた」「改革に向けての説明会を実施した」などの内容だけでは不十分であるといえるでしょう。組織は、あらゆるコミュニケーションツールを駆使し、組織に属するすべての人々に、変革へのビジョンを周知徹底させていく必要があります。

5.     ビジョン実現へのサポート

変革へのビジョンが組織内で周知徹底されていくことで、変革に向けてポジティブな行動を自発的に行うメンバーが増えていきます。しかし、従来の組織構造のままでは、このようなポジティブな行動を活用することが難しいといったケースも少なくありません。変革チームは、メンバーの自発的な行動を促進するため、組織構造やシステムを見直すなどの、変革ビジョン実現へのサポートを行う必要があります。また、組織の体質や社内風土などによっては、変革への抵抗勢力が存在する可能性があります。変革に向けて自発的な行動を行うメンバーのため、このような勢力に対して強い態度で挑むことも、変革ビジョン実現に向けて必要なサポートでしょう。

6.     成果をあげる計画の策定と実行

変革を進め続けるためには、メンバーに成果を示さなければなりません。また、組織の変革を効率的に進めるためには、短期的に成果をあげる計画を策定し、実行することが大切です。「目に見える成果」をメンバーに示すことで、より変革を進めやすい環境が実現できます。また、成果に貢献したメンバーに対して、表彰や報酬を与えるなどといったことも、変革につながる大切なアクションです。

7.     さらなる変革の推進

いくつかの成果が生まれたことで、直ちに組織全体の変革が成功したとの意識を持ってしまっては、以前の組織に逆戻りしてしまう可能性があります1つの変革が成功した際は、次の変革を行うチャンスであるとの意識を持ち、さらなる変革の推進を行うことが大切です。社会や環境は常に変化しているため、組織も変革の持続に取り組み続けなければなりません。

8.     変革の定着

変革によって生まれた変化を、企業文化に定着させるためには多くの時間が必要です。リーダーは、変革ビジョンに基づく、新たな手法やノウハウを、あらゆる階層のメンバーに浸透させなければなりません。また、次世代のリーダーの育成なども、変革を組織に定着させるために必要な行動です。

参考:「リーダーシップ論」 企業を変革する8つのポイント | Human Capital Online(ヒューマンキャピタル・オンライン) (nikkeibp.co.jp)

チェンジリーダーシップが組織のもたらす影響

組織に変革をもたらすチェンジリーダーシップは、さまざまな影響を組織内に与えます。変化への対応や業績の向上といった、良い影響を組織に及ぼす一方で、マイナスの影響を与えてしまう可能性も忘れてはなりません。ここでは、チェンジリーダーシップによって組織内にもたらされる「正の影響」と「負の影響」を見ていきましょう。

チェンジリーダーシップがもたらす正の影響

チェンジリーダーシップを有するリーダーが存在する組織では、フォロワーとの信頼関係を築き、モチベーションの向上が期待できるため、チーム効力感を高めることができます。チーム効力感とは、メンバーが互いに良い影響を与え合うことで、「このチームならば、目標を達成し成功できる」といった自信感や有能感を持つことです。このようなチーム効力感が高い組織は、メンバーの意欲が高まり、より難しい目標にチャレンジする姿勢を持ちやすくなるため、大きな成果をあげる可能性があります。

中国とインドの金融会社を対象に実施された、リーダーシップに関する実証研究においても、チェンジリーダーシップがチーム効力感にプラスの影響を与えるとの、結果が示されています。

チェンジリーダーシップがもたらす負の影響

チェンジリーダーシップでは、強いリーダーシップを用いることで、チームメンバーが団結して目標達成に向かう努力を促します。そのため、組織内のコンセンサス維持規範(意見の一致を重視する規範)を過度に高めてしまう恐れがあるでしょう。組織運営において、チームが同じ方向を向いていることは非常に重要ですが、過度にコンセンサス維持規範が高い状態では、チームの意思決定能力が下がり、業績の低下につながる危険性があります。また、意見の一致を重視する環境では、チーム内の情報や意見の多様性が低減し、メンバーの独創性が失われるなどのデメリットが存在します。

参考:変革型リーダーシップが研究開発チームの業績に及ぼす 影響:変革型リーダーシップの正の側面と負の側面(PDF)

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1.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

社会や環境の変化は続いており、今後もそのスピードは加速していくと考えられています。変化が続く社会においては、一度の変革だけでなく、変革を維持し定着させることが不可欠です。絶え間ない変革への取り組みが求められている現代社会では、変革をもたらすチェンジリーダーシップを有する人材が、より一層求められていくでしょう。

チェンジリーダーシップは、さまざまな影響を組織に与えるものであり、一概にプラスの効果だけがあるとはいえません。組織変革に向けて、良い結果を生み出す可能性が高いチェンジリーダーシップですが、存在する負の側面をしっかりと理解し、活用方法や環境を見極めることが大切です。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

あそぶ社員研修は、企業の研修担当者向けのお役立ち情報を発信するメディアです。研修に関するノウハウ、組織・人材開発の手法、ビジネススキルなどをわかりやすく紹介します。

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