感受性訓練とは?目的や歴史をわかりやすく解説
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大学卒業後、クラシック音楽業界にて制作・マネジメント・プロデュースに従事し、アートと教育の融合をテーマに、「体験を学びとして届ける」手法を追求してきた。
その後、体験型コンテンツ会社を経て、株式会社IKUSAにクリエイティブプロデューサーとして入社。
現在は研修事業部の責任者として、体験型・ゲーム型の社員研修事業を統括している。
ユーザー視点に立ったサービス開発を得意とし、「楽しさが行動変容を生む」という信念のもと新しい研修体験を創出している。
かつて、日本でも感受性訓練というトレーニングが広まった時期がありました。現在でも、自己理解や他者理解を深める方法として用いられることがあります。
本記事では、感受性訓練とはどのようなものなのか、感受性訓練に由来する2つの訓練も含めて、詳しく解説します。
感受性訓練とは
感受性訓練とは、自分と他者を深く理解できる人になり、人間関係をより良くするための訓練法です。「社会心理学の父」と呼ばれるクルト・レヴィンが考案したもので、英語ではセンシティビティ・トレーニング(Sensitivty Training)と呼ばれます。略して「ST」とされることもあります。
感受性訓練は、一般的には10~15人程度のグループに分かれ、合宿形式で行います。グループは面識がなく、年齢や職業などが異なるメンバーで構成することが多いです。各グループにはトレーナー(ファシリテーター)が付きますが、トレーナーからテーマや進行方法を提示されることはほとんどありません。訓練で何を学ぶのか、どのように進めていくのかなどは、参加者たちで考えます。
感受性訓練の目的
感受性訓練を考案したクルト・レヴィンは、グループ・ダイナミクス(集団力学)という概念を提唱しています。グループ・ダイナミクスとは、「集団の中では個人の行動・思考は集団から影響を受け、同時に集団も個人の行動・思考の影響を受ける」という集団特性、またはそれを研究する学問や理論を指します。
そしてクルト・レヴィンは、1947年に発表した「集団力学の開拓線」において、集団心理を変容させる方法を以下の3ステップに分けて論じています。
1.溶解(unfreezing) | 現状を把握し、行動や思考の偏向性を溶かす(捨て去る)ステップです。コミュニケーションとりながら変革の重要性を認識し、変革に対する動機を高めます。 |
2.移動(moving) | 行動や状態を変化させるステップです。望ましいパターンを学習・理解し、変革のための具体的な計画を立てて、実行します。 |
3.凍結(freezing) | 新たなパターンを定着させて、習慣化させるステップです。このステップを飛ばすと、組織は元の状態に戻ってしまう可能性があります。 |
参考:組織開発の歴史的変遷と研究動向 – 國學院大學学術情報リポジトリ「K-RAIN」(PDF)
感受性訓練は、もともとはこの「溶解」の訓練法として提唱されたものでした。外見、人柄、発言、ふるまい、過去の経験などがフィードバックに晒されることで、他人から見た自分や自分の固定観念に気づきやすくなります。これを一定期間続けることで、自我を溶かすことができるとされています。
現在は、自己理解や他者理解を深めること、コミュニケーション活性化や人間関係の円滑化を目的に行われること多いようです。
感受性訓練の歴史
感受性訓練は、1960〜70年代に日本でも急速に広まりました。しかし自我を溶解させようとするあまり内容が過激化し、歪んだ形で流行した歴史があります。参加者に心理的外傷が残る、セミナー中毒に陥る人が続出するなど、当時は多くの深刻な社会的・倫理的問題を引き起こしました。
また、そもそもクルト・レヴィンが考える「溶解 → 移動 → 凍結」のプロセスで集団心理を意図通りに変容させることは可能なのか、このような手法を用いていわば「心理を操作する」ことは正しいのか、という問題も指摘されています。
このような歴史的な教訓や問題点を踏まえ、現在は感受性訓練を発展させ、アンコンシャスバイアス研修、DEI研修、フィードバック文化の醸成、チームビルディングなどに活かすケースが見られます。
具体的なワーク・考え方の例
ここでは、感受性訓練に関連するワーク・考え方の例を紹介します。
ジョハリの窓
感受性訓練は、自己開示やフィードバックを通じて自己理解・他者理解を深めるものであるため、「ジョハリの窓」は親和性の高いフレームワークであると考えられます。これは、以下の4つの窓(領域)に自分の情報を整理して、理解を深める心理学モデルです。
- 開放の窓:自分も、他者も知っている自分
- 秘密の窓:自分が知っていて、他者が知らない自分
- 盲点の窓:他者が知っていて、自分が知らない自分
- 未知の窓:自分も、他者も知らない自分
自己理解や相互理解を深めるために、企業の研修でも用いられることがあります。
フィードバックを通じた気づき
感受性訓練では、フィードバックを与え合うような仕組みを用意することも重要です。他者から率直な意見を受け取ることで、客観的に自分を知ることができます。
たとえば、「絶対〇〇ですよ」と自信を持って述べたことに対して、「なぜ絶対だと思うのですか?」と返されることで、初めて「無意識の思い込み」だと気づける場合もあります。こうした気づきは、決めつける言い方をしない、ファクトチェックするなど、具体的な行動変容につながります。
グループワークによる相互理解 など
グループワークも、自己理解や相互理解を深めるのに有効です。「何を話すか」ではなく「どのように関わるか」を意識して取り組むことで、自分のコミュニケーションや関係性の築き方の特徴に気づけることがあります。グループワークで得られた気づきは、他者とのより良い関係構築に活かすことができるでしょう。
感受性訓練に由来する2つの訓練
次に、感受性訓練に由来する2つの訓練を簡単に解説します。
Tグループ
Tグループは、「トレーニンググループ」の略称です。1946年にクルト・レヴィンが行った、人種や宗教の偏見を解消するためのワークショップがもとになっているとされています。
Tグループでは、参加者は10人程度のグループに分かれて、日常から離れた研修施設などで、1週間ほどかけてグループセッションを行います。テーマは用意されておらず、基本的にはファシリテーターから指示もありません。参加者は自分たちでテーマを決め、「今、ここ」に注目して話し合いを進めていきます。
Tグループは、人とかかわる仕事(教師、講師、カウンセラーなど)をしている人や、組織開発にも利用されることがあります。
エンカウンター・グループ
エンカウンター・グループは、心理学者のカール・ロジャーズが感受性訓練を継承・発展させて提唱したものです。「エンカウンター」には「出会い」の意味があります。エンカウンター・グループは、「本当の出会い」を実現するための活動です。
実施方法としては、以下の2種類があります。
- 構成的エンカウンター・グループ…リーダーが設定した議題について、リーダーを中心に話し合うことで関係を深めるものです。大人数で実施することもできます。
- 非構成的エンカウンター・グループ……リーダーも議題もなく、少人数のグループで自由にセッションします。
Tグループとエンカウンター・グループの違い
Tグループとエンカウンター・グループでは、まず進め方が違います。お伝えしたようにTグループは、テーマや議題は用意されておらず、参加者はこれらを自分たちで決めて話し合いを進めていきます。一方のエンカウンター・グループは、あらかじめ議題を用意しておく(リーダーが設定する)やり方もあります。
また、この2つは目的も異なります。Tグループは人間関係や自分自身について気づきや学びを得るため、一方のエンカウンター・グループは自己の成長や人間関係の改善のために行うものといえるでしょう。
まとめ
感受性訓練は、テーマや進行方法に決まりがないため、効果的に実施するにはトレーナー(ファシリテーター)に高い専門スキルが求められます。
社員に自己理解や他者理解を深めてほしいなら、ある程度プログラムを決めて「社内研修」という形でトレーニングの機会を設けてみてはいかがでしょうか。社員同士でディスカッションやグループワークに取り組んでもらうことで、コミュニケーション活性化やチームビルディングといった効果も期待できます。
あそぶ社員研修でも、自己理解や他者理解を深めるのに役立つさまざまなプログラムを提供していますので、お気軽にご相談ください。
参考:社会心理学の「精神操作」幻想 - 身心変容技法研究会(PDF)
以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。
1.合意形成研修
合意形成研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。
学びのポイント
- 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
- 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
- より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す
2.PDCA研修
PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。
学びのポイント
- 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
- 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく
3.戦略思考研修
戦略思考研修のアクティビティ「ワールドリーダーズ」では、労働力や資本を使って事業を設立し、利益を稼ぐことを目指します。
学びのポイント
- 不確実な状況のなかで自チームにとって最適な行動方針を考え、実行していく
- 戦略を決めるために与えられた手段のなかでどの情報を取得していくかの優先順位決めが求められる
4.コミュニケーション研修
コミュニケーション研修のアクティビティ「謎解き脱出ゲーム」では、チームでコミュニケーションをとりながら問題に隠された法則を発見する謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 受講者が「自分しか見えていない情報・問題・解き方」をチームで共有することでコミュニケーション促進やスキルアップにつながる
- 突飛な発想・ヒラメキをチームのなかで積極的に発言できる心理的安全性の高い環境づくりが求められる
5.ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。
学びのポイント
- 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
- 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる
6.クリティカルシンキング研修
クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。
学びのポイント
- 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
- フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
- 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する
7.リーダーシップ研修
リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。
学びのポイント
- メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
- 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、自分らしいリーダーシップを学べる
8.ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修のアクティビティ「ビジトレ」では、実践形式・クイズ形式のアクティビティを通して、ビジネスマナーを楽しく学びます。
学びのポイント
- 堅い内容になりがちなビジネスマナー研修にゲーム形式を取り入れることで、受講者が没入して学べる
- 名刺交換や報連相などを実行し、動作・マナーに慣れることで、翌日から実践できるようになる
9.防災研修
防災研修のアクティビティ「先が見えない防災訓練からの脱出」では、チームで協力して、防災のアイテムや知識を使用しながら謎解きゲームのクリアを目指します。
学びのポイント
- 謎解きの答えが災害時のNG行動にまつわる内容となっており、解説時になぜ行なってはいけないかもセットで学ぶ
- 被災時は様々な情報が飛び交うため、情報を取得する際にどのようにすれば惑わされないかを学ぶ
10.OODA LOOP研修
OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。
学びのポイント
- 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
- ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う
この記事の著者
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