リアリティショックとは?原因や企業への影響、対策を紹介

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新卒で入社した社員が、新しい環境に馴染めない、変化についていけないなどの理由で、5月の連休明け頃に無気力になる・よく眠れなくなるといった状態に陥ってしまうことがあります。このような、いわゆる「5月病」のような状態は、「リアリティショック」とも呼ばれています。

本記事では、リアリティショックとは何か、リアリティショックが企業にもたらす影響、リアリティショックの主な原因、企業ができるリアリティショック対策について解説します

 

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リアリティショックとは

リアリティショック(reality shock)とは、理想と現実のギャップに出会うことにより生じるショックのことです。アメリカの心理学者であるエドガー・シャイン(Edgar Schein)氏が広めた概念だといわれています。

所属することになった組織や担当することになった仕事が、自分が期待していたものとかけ離れていて、ショックを受けた経験はありませんか? これが、リアリティショックです。新卒で入社したばかりの頃が、特に起きやすいタイミングといえるでしょう。学生から社会人になると、それまでと環境や責任、人間関係も大きく変わります。また、社会人になることや自分の将来に対する期待が大きい分、現実を知って強いショックを受ける人が多いのです。

リアリティショックは、仕事に対するモチベーションの低下につながります。それを乗り越えることができないと、メンタルヘルスが悪化したり、離職につながったりする可能性もあります。

リアリティショックが起こりやすいタイミング

リアリティショックが起こりやすいタイミングとしては、以下の3つが挙げられます。

企業に入社したとき

まずは、新入社員として企業に入社したタイミングです。先ほどお伝えしたように、新卒で入社したときに最も起こりやすいといえますが、転職で新しい企業に入社したタイミングでも、リアリティショックが起こることがあります。どのようなことにギャップを感じるかは人それぞれですが、たとえば「労働条件や待遇が期待していたほどよくなかった」「職場の人間関係がストレスになっている」「仕事の内容・キャリアについてミスマッチを感じる」などが原因で、ショックを受けるケースが考えられます。

このような入社段階で発生するリアリティショックは、「エントランス・ショック」に分類されます。また、「5月病」のように入社して間もないタイミングで起こることもあれば、入社後数ヶ月~1年後にそのような現象がみられることもあり、ある程度の期間のなかで発生するものであるとも考えられています。

異動や昇進したとき

中堅社員やベテラン社員でも、異動や昇進のタイミングでリアリティショックが起こることがあります。所属する部署やポジションが変われば、これまでとは異なる環境に身を置くことになり、求められる役割も変わります。そのため、仕事内容が期待していたものではなくて「つまらない」と感じるようになったり、これまでように自分の能力を十分に発揮できなくなったりすることがあります。

リアリティショックが起こると、仕事に対するモチベーションが低下し、「もっとやりがいを感じたい」「もっと自分の能力を発揮できるところで働きたい」と、転職を考え始めてしまう可能性もあります。豊富な経験やスキルを持つ中堅・ベテラン社員に離職されることは、企業にとって大きな痛手になります。

なお、異動により発生するリアリティショックは「トランス・ファンクショナル・ショック」または「クロス・ファンクショナル・ショック」、昇進により発生するリアリティショックは「ランキング・ショック」に分類されます。

参考:リアリティ・ショックが若年者の就業意識に及ぼす影響(小川憲彦)-J-Stage(PDF)

休業・休職から復帰したとき

妊娠・出産や介護、その他個人のさまざまな事情で、長期間仕事を休まなければならなくなる場合があります。その後、職場に復帰するときも、リアリティショックが起こりやすいタイミングです。

職場に戻ると、仕事を休む前とは自分の役割や仕事内容、メンバーなどが変わっていることもあります。そのため、「思っていた働き方と違う」「仕事がしにくくなったと感じる」などと、ショックを受ける人も少なくないようです。

リアリティショックの主な原因

では、働く人は何に対してギャップを感じることが多いのでしょうか。ここからは、リアリティショックの主な原因を4つ紹介します。

仕事に対するギャップ

仕事に対するギャップとは、仕事の内容や、やりがい、キャリアなどに関するギャップです。

【具体例】

  • 自分の能力を活かせる仕事ができると思っていたが、実際に任されるのは単純な仕事ばかり。
  • 自分が希望していた部署とは異なる部署に配属になった。
  • 思っていた以上に仕事量が多く、つらいと感じる。

特に最近は、「配属ガチャ」という言葉もあることから、勤務地や職種に対して理想を持っている新入社員は多いと考えられます。これを理由とする早期離職を防ぐために、職種別に採用活動を行う企業や、入社後の配属先を確約する制度を導入する企業もみられるようになってきています。

対人関係についてのギャップ

職場における対人関係に関するギャップから、ショックを受ける人も少なくありません。

【具体例】

  • 自分ばかりが上司から怒られているような気がする。
  • チームのメンバーとスムーズにコミュニケーションがとれない。
  • 職場に自分と年齢が近い社員がおらず、居場所がないと感じる。

このようなギャップは、社風や既存社員の意識が原因となっているケースもあります。そのような場合は、社員が一人でそのギャップを埋めることは難しいでしょう。社員が職場に馴染めるよう、企業のサポートが必要になります。

他者の能力とのギャップ

他者の能力とのギャップとは、自分と周りのメンバーとの能力を比較したときに感じるギャップのことです。

【具体例】

  • 専門的なスキルを持った同期ばかりに囲まれて、自分に自信が持てなくなる。
  • 周りのメンバーの意識が低く、先行きが不安になる。

このようなギャップを「まだまだ成長できる」とポジティブに変換できる人もいますが、ショックを受けてしまうケースもあります。

評価や待遇についてのギャップ

自分に対する評価や、給与、昇進など関するギャップから、リアリティショックが起こることもあります。

【具体例】

  • 自分が努力したことや出した成果を、組織が正しく評価してくれない。
  • なぜ自分と能力差がほとんどない同期が先に昇進したのか、理由がわからない。
  • 昇給額が期待したほどの金額ではなかった。

社員が納得できるような仕組みになっているか、一度自社の評価制度を見直してみましょう。

リアリティショックが企業にもたらす影響

リアリティショックが起こると、企業にもさまざまな悪影響がもたらされる恐れがあります。具体的には、以下のような問題が生じる可能性が考えられます。

社員のモチベーションが低下する

リアリティショックが起こると、社員の仕事に対するモチベーションが低下する可能性があります。社員自身がショックを乗り越えられなければ、いつまでもその環境に馴染むことができず、ビジネスパーソンとして成長していくことも難しくなるでしょう。

また、モチベーションが低下すると、仕事をこなすスピードが遅くなったり、ミスが起きやすくなったりします。その分をフォローするために、周りの負担が増えてしまうこともあるでしょう。さらに、モチベーションが低い社員が多くなると、組織全体のパフォーマンスや生産性に影響が出る恐れもあります。

社員のメンタルヘルスが悪化する

気分が落ち込んだり、ストレスを感じたりすることは、誰にでもあることです。しかし、あまりにも大きなリアリティショックが生じると、そのようなネガティブな状態が続くようになって、心の調子が崩れてしまう恐れがあります。

すると、集中力が続かなくなる、イライラしやすくなる、食欲がなくなる、逆に食べ過ぎるなど、さまざまな症状が表れるようになります。パフォーマンスが低下したり、遅刻が多くなったりなど、業務に支障をきたすこともあるかもしれません。また、頭痛や動機、息苦しさなど、身体の健康状態が悪化してしまうこともあります。

メンタルヘルスの状態は、周りから見えにくく、自分からもなかなか伝えにくいものです。また、悪化すると回復にも時間を要します。社員の健康を守るために、企業にもメンタルヘルス対策が求められるようになっていますので、その一環として、リアリティショック対策にも取り組んでいきましょう。

社員の離職につながる

新たに自分が身を置くことになった職場の環境や、任されることになった役割、仕事の内容などが、自分の理想とかけ離れていた場合、「ここよりも、もっと自分に合う場所があるのではないか?」と、社員が転職を考え始めてしまうこともあります。企業としてリアリティショック対策を行っていないと、せっかく多くのコストをかけて採用した人材に、早期離職をされてしまうリスクも高くなるでしょう。

厚生労働省は毎年、新規学卒就職者の離職状況を公表しています。新規大学卒就職者の就職後3年以内の離職率を見ると、ここ20年程は30%台前半で推移しているという状況です。離職の理由は人それぞれですが、リアリティショックにより離職を決める人も、一定数いるのではないかと考えられます。

参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

また、新卒で入社した社員だけでなく、自社で長く活躍してくれている中堅社員やベテラン社員であっても、何かのタイミングでギャップを感じる可能性はあります。リアリティショックを乗り越えられなければ、企業に対する愛着が薄れ、転職を考え始めてしまうこともあるでしょう。近年は、中途採用に力を入れて、即戦力を獲得しようとする企業も増えています。優秀な人材を流出させないためにも、リアリティショック対策は必要です。

企業ができるリアリティショック対策

ここまでにお伝えしてきたように、リアリティショックはさまざまな「ギャップ」により生じるものです。ギャップの発生を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。最後に、企業ができる具体的なリアリティショック対策を紹介します。

採用でミスマッチが起きないようにする

特にリアリティショックが起こりやすいのが、新卒や転職で新入社員として企業に入社したときです。入社後にミスマッチ(企業と採用した人材の認識やニーズがかみ合っていない状態)が起こると、リアリティショックも起こりやすくなります。リアリティショックを防ぐためには、ミスマッチを防ぐことが重要なのです。ここからは、入社前・入社後に分けて、企業ができるミスマッチ対策を紹介します。

入社前

求職者の企業に対する期待値が高すぎると、入社後現実に直面したときに感じるギャップが大きくなってしまいます。これを防ぐためには、入社前に企業のことを正しく理解してもらうことが重要です。優秀な人材に来てほしいからと、企業の良い情報ばかりを発信していませんか? 採用活動では、企業のポジティブな面だけでなく、つらいこと・難しいことなども含めて「ありのまま」を求職者に伝えるようにしましょう。

具体的には、企業のホームページやSNSなどで、リアルな情報を発信するという方法があります。「1日の流れ」や先輩社員のインタビューなど、仕事内容や職場の雰囲気が伝わるような情報を発信するとよいでしょう。写真を多めにするというのもポイントです。

また、就活イベントで先輩社員に「大変だったこと」を話してもらったり、OBOG訪問の機会を作ったりすることも検討してみてはいかがでしょうか。実際に働く先輩社員から話を聞くことで、求職者は自分が働いている姿をイメージしやすくなります。直接職場を見て、雰囲気やカルチャーを知ってもらう機会として、インターンシップを実施するのも有効です。

入社後

ミスマッチを防ぐためには、企業側の受け入れ態勢を整えておくことと、適切なフォローを行うことも重要です。

具体的には、まず研修を充実させましょう。研修もなく、いきなり業務に触れる形だと、社員が「思っていたより難しい」「こんなに大変だと思わなかった」というギャップを感じやすくなります。しっかりと事前研修を行い、業務に関する知識や最低限のスキルを身につけてもらってから業務に取り組んでもらうことで、このようなギャップが生じにくくなるでしょう。

また、対人関係についてのギャップやストレスからショックを受けるケースもあります。新入社員が早く職場に馴染むことができるように、部署全体で新入社員を歓迎し、全員で成長をサポートすることも大切です。たとえば、歓迎会を開催する、普段から積極的にコミュニケーションをとる、社内の人脈作りをサポートするといった取り組みが考えられます。

1on1やメンター制度を導入する

社員が何かギャップを感じたときに、それに対する不安や悩みを一人で抱え込んでしまわないように、定期的に上司や先輩と11で話せる機会を設けておくのもおすすめです。具体的には、1on1やメンター制度導入するという方法があります。

  • 1on1……上司と部下の組み合わせで行われる、11の面談のことです。上司が一方的に評価をしたり、アドバイスしたりするのではなく、双方向の対話により部下の成長を促します。
  • メンター制度……先輩社員と後輩社員とで定期的に面談(メンタリング)を行うことを通じて、先輩社員が後輩社員を支援する制度です。仕事のことに限らず、キャリア形成に関する不安や悩みの解消なども含めて幅広くサポートします。

評価制度を見直す

先ほど紹介したように、評価や給与、昇進などに関するギャップや不満が原因で、リアリティショックが起こることもあります。現在の評価制度が適切な仕組みになっているかどうか、一度見直してみましょう。

ギャップや不満を感じさせないためには、社員の努力や成果を正しく評価することが大切です。まずは、評価基準を明確にしましょう。そして、「なぜこの評価になったのか」を社員自身が理解し、納得できる仕組みであることも重要なポイントです。定期的に面談を実施してフィードバックを与えるといった仕組みを作ることも検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

理想と現実のギャップに出会うことで生じるリアリティショックは、特に新卒で入社したばかりのタイミングで起こりやすいものです。しかしそれ以外にも、転職したときや異動・昇進などにより環境が大きく変わったとき、休職明けなど、さまざまなタイミングで発生することがあります。

社員がリアリティショックを乗り越えられないと、パフォーマンスや生産性の低下、社員の離職につながるなど、企業にもさまざまな悪影響がもたらされる可能性があります。社員にいきいきと活躍し続けてもらえるように、企業としてリアリティショック対策に取り組んでいきましょう。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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