経営幹部を育成する方法とは?求められるスキルやポイントを解説

  • 組織・人材開発

企業が成長していくためには、経営者を支える経営幹部の存在が非常に重要です。経営幹部には、さまざまなスキルや能力が求められ、育成には長い時間がかかるため、企業としては計画的に育成を進めていく必要があります。

本記事では、なぜ経営幹部の育成が重要なのか、そもそも経営幹部とはどういった人材を指すのか、経営幹部に求められるスキル・能力、経営幹部を育成する方法とポイントを解説します

 

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経営幹部の育成が重要な理由

経営幹部は、企業経営の中核を担う存在です。経営幹部の主な役割としては、企業が利益を上げるための戦略を考える、企業の未来にかかわるような意思決定をする、経営者のサポートをするなどが挙げられます。

経営者がどれだけ優秀な人だったとしても、専門外の分野もあります。また、情報が不足している状態で何かを判断しなければならない場面もあるでしょう。経営者がどのような状況においても正しい判断を下すためには、高い専門知識を持ち、現場のことも把握できている経営幹部のサポートが欠かせないのです

経営幹部は、誰でもなれるものではありません。後ほど詳しく紹介していますが、さまざまなスキルや能力が求められるので、パーソナリティやポテンシャルも含めてふさわしい人材を選び、育てていく必要があります。日本は少子高齢化に伴って人手不足が深刻化しており、経営幹部にふさわしいと思える人材を、企業が欲しいタイミングで採用できるとも限りません。企業の存続のためには、早くから計画的に、幹部候補の育成に取り組んでいく必要があるのです。

さらに最近は、社外のステークホルダーからも、企業が選んだ後継者がふさわしいかどうかをチェックされる時代となっています。そのため、まず候補者をピックアップし、後継者計画を策定して、社外メンバーを含む指名委員会で決定するという形をとる企業も増えているようです。

 

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そもそも経営幹部とは?

では、経営幹部とは具体的にどのような人材を指すのでしょうか。

経営幹部に含まれることが多い役職

どこから「経営幹部」とするかは企業によっても異なりますが、以下の役職は経営幹部とされることが多いでしょう

  • CEO(最高経営責任者)……企業全体の経営についての責任を持つ役職。
  • COO(最高執行責任者)……CEOが決定した方針に基づき業務を執行する責任を持つ役職。
  • CFO(最高財務責任者)……企業の財務戦略の立案・実行などを行う役職。
  • 専務取締役・常務取締役……社長をサポートする役割を担う役職。専務は会社の業務全体、常務は日常業務について管理・監督を行う。
  • 取締役……企業の業務執行に関する意思決定を行う役員。
  • 執行役員……取締役などが決定したことに従って、業務を執行する役職。
  • 事業部長・本部長……事業部長は会社における一つの事業部を、本部長は事業本部を統括する役職。

経営幹部の育成は、将来的にこのような役職に就いてほしい人材をピックアップし、必要なスキルや能力を身につけてもらえるように、計画を立てて進めていきましょう。

管理職・役員との違い

ここで、経営幹部と管理職、役員との違いを整理しておきましょう。

管理職とは、担当領域における業務や部下を管理(マネジメント)する役割を担っている社員のことをいいます。たとえば、係長や課長、部長、マネジャーなどです。これに対して経営幹部は、冒頭でも紹介したとおり、戦略を立てたり意思決定をしたり、経営者をサポートすることなども求められます。このように経営幹部と管理職では、求められる役割や業務の範囲が異なります。

そして、株式会社の役員とは、会社法に定められている「取締役」「会計参与」「監査役」のことをいいます。役員には法律で定められた明確な定義がありますが、経営幹部には決まった定義はありません

経営幹部に求められるスキル・能力

次に、経営幹部にはどのようなスキルや能力が求められるのかを見ていきましょう。

経営視点

経営幹部は、企業の経営に主体的にかかわり、利益を上げるための戦略を策定して、その戦略に基づいて、人・モノ・お金・情報といった経営資源を動かしていかなければなりません。そのため、経営視点が不可欠です。

経営視点とは、その名のとおり経営トップの視点のことです。現場目線で目の前のことを捉えるのではなく、さまざまな物事を経営トップの立場から大局的に見て、将来まで見通す力のことを意味します。これが身につくと、より広い視野で物事を捉え、多くの情報を得られるようになります。この先どうなっていくのか、それに対して自社はどのような対応をしていくべきなのかといったことも、考えられるようになっていくでしょう。

問題提起・解決力

経営幹部には、問題提起力も欠かせません。問題提起力とは、現在直面している問題は何なのか、その本質を明らかにして、周りの人にわかりやすく示す力のことをいいます。事業を進めていると、何かトラブルが発生したり、思いどおりに進まなくなったりすることもあります。まずはそれがなぜなのか、そもそも何が問題となっているのかを見抜く力がなければ、最適な解決策を導き出すことはできません。

そして、その明らかになった問題を速やかに解決に導く力も、経営幹部には必要です。具体的には、まず現状を正しく理解して、正しい情報を集め、あるべき姿に近づけるためにはどうすればいいのか、経営視点で判断を下すといったことを、素早く実行することが求められます。

数字力

数字力とは、簡単にいうと財務諸表から自社の状態を把握し、経営に活かす力のことです

企業を継続させていくためには、「利益」を生み出す必要があります。利益を生み出すには、どうすればもっと売上を上げられるか、どうすればコストをより削減できるかを分析し、考えなければなりません。そのために、数字力は欠かせないスキルです。

数字は、客観的な事実を示してくれるものです。これに弱い経営幹部が多いと、現状を正しく把握することができず、誤った対処をするかもしれません。経営幹部には、数字の経過を見て背景までしっかり分析し、どうすれば利益を生み出せるかを考えることが求められます。

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは、日本語では「対人関係能力」とも呼ばれているスキルです。周りの人と良好な関係を構築して、円滑なコミュニケーションをとることができる能力のことで、リーダーシップやコミュニケーション能力、交渉力、ヒアリング力などが含まれます。

策定した戦略を実行するためには、自社の社員はもちろん、株主や顧客、金融機関など、社外のさまざまな人の協力が必要です。関係者と信頼関係を構築して調整をスムーズに行うために、そして企業が求心力を維持するためにも、ヒューマンスキルは欠かせません。

迅速な意思決定力・行動力

経営幹部が企業の方針を決めなければ、社員は動くことができないので、経営幹部には意思決定力が欠かせません。そして、ただ正しい意思決定をするということだけでなく、迅速さや実行力も求められるようになっています。現代は、「VUCA時代」といわれるほど変化の激しい時代になっており、企業間の競争も激化しています。じっくりと分析することも大切ですが、意思決定に時間をかけすぎると、その間に環境が変わってしまったり、競合に追い抜かれてしまったりすることもあるかもしれません。そのため、経営幹部には、スピーディーに意思決定する力が求められるのです。

そして、決定したことは速やかに実行しなければ意味がないので、経営幹部には行動力も欠かせません。積極的に行動して、目標を達成するという姿勢を組織に示していくことが大切です。

担当領域における専門知識・スキル

経営幹部には、担当領域における高い専門性も求められます。これがないと、経営者をサポートすることができず、経営者が判断を誤ってしまうこともあるかもしれません。

現時点で豊富な知識や高いスキルを有していたとしても、頻繁に法改正があるものや、トレンドの移り変わりが速い分野などもあります。そのため、自己研鑽して自分で学び続けることができるというのも、経営幹部に必要な要素といえるでしょう。

経営幹部が成長すれば、それにつられて一般社員も成長するといわれています。逆に、経営幹部の成長が止まれば、組織全体の成長が止まってしまう恐れがあります。幹部候補を選抜する際は、自分で成長し続けられる人材かどうかという点も重視することも必要でしょう。

経営幹部を育成する方法

では、経営幹部はどのように育成していけばよいのでしょうか。決まったやり方はありませんが、次の流れで進めていくのがおすすめです。

1.ポストとスキルを定める

まずは、自社の場合はどこから「経営幹部」とするのかを明確にしましょう。経営戦略やビジョンを考慮しながら、どのようなポストに、どのようなスキル・能力を持った人材が必要なのかを考えていきます。

そして、経営幹部の要件が明確になったら、それに合わせた人事評価も準備しておきましょう。

2.幹部候補となる人材を選抜する

次に、経営幹部の候補となる人材を選抜します

経営幹部の育成は、非常に長い期間を要します。また、経営幹部には先ほど紹介したようなスキル・能力だけでなく、覚悟や責任感、人間性、マインド、志なども求められます。そのため人材を選抜する際は、現時点のレベルだけで判断しないことが重要です。パーソナリティやポテンシャルも重視しながら、まずは複数の候補者を余裕をもってリストアップしてみましょう。

候補者を選抜する方法としては、社内の人材から選抜する方法と、社外から新たに人材を採用する方法の2つがあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

社内の人材から選抜する

社内の人材から幹部候補を選抜する場合は、経営陣が直接指名する方法と、上司から推薦してもらう方法があります。

人材を選抜する際は、しっかりと候補者の普段の様子を把握したうえで、適切な人材を選ぶ必要があります。企業の規模によっては、普段は経営陣と現場で活躍する候補者が接する機会があまりないというケースもあるでしょう。経営陣が指名する場合は、現場にヒアリングを行い、一人ひとりの情報を集めたうえで選抜することが重要です

候補者の普段の様子や能力、潜在力を把握できている上司からの推薦という方法を採用している企業が比較的多いようですが、この方法にも注意点はあります。この方法だと、上司が優秀な社員を現場に残したいために推薦をためらってしまったり、周りから「あの人は上司のお気に入りだから選ばれたのだろう」などと思われたりする可能性もあります。

どちらの方法で選抜する場合でも、誰から見ても「ふさわしい」と思われる人材を選ぶことが大切です。そのために人事は、社員のスキルに関する情報を集めて、公平な選考を行えるような体制を整えておくようにしましょう。

社外から新たに人材を採用する

経営幹部に必要なスキルや能力を有する人材を中途採用する企業もありますが、最近は新卒採用で幹部候補を採用し、育成に取り組む企業も増えています。終身雇用が一般的ではなくなりつつあること、少子高齢化に伴う労働力人口の減少により後継者が足りなくなってきていることなどが、この背景にあるようです。

社外から新たに幹部候補を採用する場合は、中途採用でも新卒採用でも、求める要件を明確にしておくことが重要です。幹部候補の採用は、ミスマッチの影響が一般的な採用よりも大きくなりますので、価値観や企業文化、企業理念の面でマッチするかどうかも重視して、人材を見極めるようにしましょう。

3.育成計画を立てる

候補者を選抜したら、次は候補者をどのように育てていくのかという計画を立てます。取り組みの具体例としては、たとえば以下のようなものが考えられます。

  • 必要なスキルを身につけるための研修の実施
  • 経営陣と対話する機会の提供
  • 海外赴任
  • 新規プロジェクトへの参加

また、新卒で幹部候補を採用した場合は、ジョブローテーションを導入している企業が多いようです。加えて、候補者が主体的にキャリアを積み重ねていけるよう、キャリア支援にも力を入れていく必要があります。

4.育成計画を実施し、評価・改善を行う

計画を策定したら、それに沿って取り組みを実施していきます。幹部育成は長期戦になります。候補者が、なかなか成果が出ないことに自信をなくしてしまったり、周りから期待されることをストレスに感じてしまったりすることもあるので、メンタル面もフォローしながら進めていきましょう。

また、計画を実施したら、定期的に成果の評価と施策の見直しを行うことも忘れないようにしてください。

経営幹部を育成する際のポイント

最後に、経営幹部の育成を成功させるためのポイントを紹介します。

経営陣が本気で取り組む

経営幹部の育成が重要であることは認識しているものの、業務が忙しく人事任せになっている企業も少なくありません。しかし、経営幹部の育成を成功させるためには、経営陣に本気で取り組んでもらう必要があります。そのためには、人事から経営陣にかかわろうとしていくことも大切です。人事のほうから積極的にコミュニケーションをとるなどして、連携しながら戦略的に育成を進めていきましょう

実践する機会を与える

スキルは、研修だけではなかなか身につきません。どんな知識やスキルも、実際に活用できるようになってもらわなければ意味がないので、研修を実施した後は、実践の機会を与えるようにしましょう。

たとえば、学んだスキルを活かせるようなポストを任せてみるという方法があります。この時は、なぜそのポストを任せるのかという理由や目的をしっかり伝えることも忘れないようにしましょう

長期的な視点で取り組む

管理職でも、育成するには13年ほどかかるといわれています。経営幹部の育成は、それ以上の長い期間が必要になるため、長期的な視点で取り組むことが大切です。

そして、しっかりと計画を立てて育成に取り組むことも重要なポイントです。計画を立てないと、途中でゴールを見失ってしまったり、不要な研修で時間を無駄にしてしまったりする恐れがあります

個人に合わせたプログラムを提供する

候補者ごとに必要なスキルは変わってきますし、物事の考え方、得意・不得意も人それぞれです。全員に同じプログラムを提供するのではなく、個人に合わせた育成を行うようにしましょう。専門的な知識・スキルや業界の最新動向、他社の事例などを学んでほしい時は、外部研修の利用もおすすめです。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

経営者を支える役割を担う経営幹部は、企業が成長し続けていくために欠かせない存在です。経営幹部の育成には、とても長い期間が必要になります。そのため、世代交代を行うよりもかなり前から、取り組みを始める必要があります。きちんと計画を立てて、戦略的に育成を進めていきましょう。

 

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アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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