コーポレートユニバーシティ(CU)とは?その特徴や企業の事例について解説

  • 組織・人材開発

近年、さまざまな企業が人材育成への取り組みを強化しています。特に、次世代を担うリーダーの育成や、従業員の専門的なスキルアップなどを課題とする企業は少なくないでしょう。

人材育成に注力する企業のなかで、注目を浴びている取り組みが「コーポレートユニバーシティ(CU)」(企業内大学)です。従来の社内研修制度とは一線を画す「コーポレートユニバーシティ」は、戦略的な人材育成のプラットフォームとして大きな期待が寄せられており、さまざまな企業が取り組みを始めています。

そこで、本記事では、「コーポレートユニバーシティ」の特徴や社内研修制度との違い、企業の取り組み事例について解説します

 

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コーポレートユニバーシティ(CU)とは?

コーポレートユニバーシティとは、企業が人材育成のために設置した研修プラットフォームのことであり、企業内大学とも呼ばれることがありますコーポレートユニバーシティは、1950年代に始めてアメリカで実施された制度であり、アメリカを中心として世界に広がり始めました。コーポレートユニバーシティ研究の先駆者であるMeisterによると、コーポレートユニバーシティは以下のように定義されています。

  • 「ビジネス上のニーズを満たす教育手段すべてを統合・企画・開発・実施する戦略的な中核機関」

また、アメリカにおけるコーポレートユニバーシティは、社員の研修プラットフォームといった形だけでなく、バリューチェーンのメンバーをも対象とし発展してきました。

コーポレートユニバーシティでは、以下を目的とした学習を行うことで、従業員のキャリアアップをサポートしています。

  • 次世代リーダーの育成
  • 社員全体のスキル底上げ
  • 経営理念・ビジョンの浸透

また、コーポレートユニバーシティの学習システムは、大学の講義のように必修科目や選択科目を設け、社員一人ひとりが目的や立場に合った履修計画を立てられるシステムを採用している傾向にあるのが特徴です。

日本におけるコーポレートユニバーシティ普及の背景

日本では、2000年過ぎから、大企業を中心としてコーポレートユニバーシティが普及し始めました。以前から日本には、製造業などを中心とした研修センターの人材育成機関がありましたが、その内容はOJT型のものが多く、コーポレートユニバーシティとは、全く違う人材育成への取り組みであったといえるでしょう。

高度経済成長期には、このような人材育成機関への取り組みが盛んに行われていましたが、バブルが崩壊したことで、人材育成への費用を抑える流れが生まれ、取り組みは縮小しました。しかし、バブル崩壊後の企業経営に、アメリカの先進企業の施策を取り入れる傾向が高まったことで、その1つとして人材育成への取り組みである「コーポレートユニバーシティ」が注目され始め、設立が増加しました

前述の通り、2000年を第1次ブームとして始まったコーポレートユニバーシティは、2005年に第2次ブームを迎え、大企業だけでなく中小企業においても増加し続けています。正確な設立数を示すデータはありませんが、さまざまな調査から日本で運営されている企業の5~10%程度の割合で、コーポレートユニバーシティ制度が導入されていると考えられています。

参考:コーポレートユニバーシティによる戦略的人材育成の現状と課題(PDF)

 

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コーポレートユニバーシティと社内研修制度の違い

コーポレートユニバーシティは、「経営理念やビジョンの浸透」「次世代リーダーの育成」など、人材面から企業の抱える課題にアプローチしていくといった大きな特徴を有しています。また、従来の社内研修で行われていた、知識やスキルの教育や階層別教育とは違い、従業員のキャリアデザインを支援するといった点も、コーポレートユニバーシティと社内研究制度の違いであるといえるでしょう。

社員の参加スタイルや講座の内容も、コーポレートユニバーシティと社内研修制度とでは大きく異なります。従来の社内研修制度では、人事部や上司などが、研修の内容や実施日を決定し、従業員の受講指示を行うといった、受動的な参加スタイルが取られています。しかし、コーポレートユニバーシティでは、従業員が、自身のキャリアプランに基づいて、多くの講座のなかから必要なスキルや知識を選択し、自主的に講義を受講します。このように、従業員の「自ら学ぶ姿勢」を高めるといった点も、コーポレートユニバーシティの大きな特徴です。

参考:コーポレートユニバーシティ(CU)は必要か? | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

コーポレートユニバーシティを成功させるポイント

企業がコーポレートユニバーシティの導入を成功させるためには、いくつかのポイントを抑えることが大切です。アメリカのコーポレートユニバーシティ導入の成功事例の研究では、以下のような7つのポイントが成功要因として挙げられています。

  1. 経営層のコミットメント
  2. 組織のおける明確な位置づけ
  3. 計画的なビジネスプラン
  4. 最新の学習理論
  5. 効率的な資金戦略
  6. 適切なトレーニングカリキュラム
  7. ラーニングパートナーとの連携

これらの成功要因の他にも、「インフラ整備とITの活用」に取り組むことで、コーポレートユニバーシティの導入を成功させる可能性が高まります。企業がコーポレートユニバーシティを導入する際には、すべての成功要因を必ず取り入れる必要はなく、より多くの要因を達成し、成功率を高めるといった認識で取り組むとよいでしょう

また、前述の7つの成功要因は、あくまで人材育成面でコーポレートユニバーシティを成功させるためのポイントであり、企業が戦略目標を達成するためにコーポレートユニバーシティを活用するためには不十分です。戦略レベルでコーポレートユニバーシティを成功させるためには、以下の2つのポイントに取り組む必要があります。

人事制度との連携

コーポレートユニバーシティを導入することで、自社の従業員はさまざまな知識やスキルを習得できるでしょう。しかし、従業員の知識レベルやスキルが向上していても、それを評価に結びつけておかなければ、学習を継続させることが困難です。従業員の学習意識を高め、維持するためには、コーポレートユニバーシティにおける学習実績を直接従業員のキャリアアップにつなげる人事制度を採用しましょう。

このように、コーポレートユニバーシティに取り組む成果を明確にしておくことで、従業員が自発的に学習に取り組む環境づくりが行え、企業の業績向上が見込めます。

企業文化の醸成

コーポレートユニバーシティを導入することで、従業員は自社の「経営理念やビジョン」を理解することができます。そのため、コーポレートユニバーシティを導入する際には、事前に「学習に取り組み成長する」などといった内容を経営理念に取り入れておくことで、学習を促進する企業文化が醸成できるでしょう。

また、トップやリーダーは、各階層の従業員に向けて、継続的な学習への取り組みを行うよう働きかけ続けることが重要です。社員だけでなくトップも含めた全員が、学習文化を促進することで「学習を続け、成果をあげられる組織づくり」を実現できるでしょう。

参考:「コーポレートユニバーシティ論」序説(PDF)

コーポレートユニバーシティへの取り組み事例

従来の社内研修制度とは異なり、多くのメリットが存在するコーポレートユニバーシティは、企業の成長につながる新たな人材育成制度として、世界中の企業から注目を浴びています。日本においても、さまざまな企業がコーポレートユニバーシティへの取り組みを始めており、導入数が年々増加しています。ここでは、実際に企業が実施している、コーポレートユニバーシティの具体的な取り組み事例を見ていきましょう。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクユニバーシティ」

ソフトバンク株式会社では、「経営理念の実現に貢献する人材の育成」を目的として、20109月に「ソフトバンクユニバーシティ」を設立しました。「ソフトバンクユニバーシティ」は、グループの持続的成長の源泉となる多様性を尊重し、個性豊かな人材の育成を目指し、2つのプログラムを用意しています。

1.      ビジネスプログラム(約80コース)

「常に変化をし続けるソフトバンクを楽しみながら、何事もチャンスと捉え、挑戦する人の能力開発を支援する」ことを目的としたプログラムで、主に以下の3項目への学習に取り組みます。

  • コア能力スキルの向上
  • テクニカルスキルの強化
  • キャリア/ブランドへの理解

2.      階層別プログラム

「階層別プログラム」では、ソフトバンクユニバーシティが定めた、以下の4つの階層ごとに求められる、知識やスキルを身につけるための講習が用意されています。

  • 新入社員向け
  • 若手社員向け
  • 新任課長向け
  • 新任部長向け

また、ソフトバンクユニバーシティでは、さまざまな分野で活躍している、ソフトバンクの社員自らが手を挙げ、講師を務めている点が大きな特徴です。講師の約8割が、実際に業務を行っている自社社員であるため、自身の経験やノウハウを活かした講習を実施することが可能であり、より効果的な人材育成が実現できています。

参考:ソフトバンクユニバーシティ | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp)

東芝ソリューション株式会社「Toshiba e-University

東芝ソリューション株式会社は、「企業目標に合致し、世界に通用する人材育成の場と学習機会を提供する」ことを目的とした、コーポレートユニバーシティである「Toshiba e-University」を設立しています。「Toshiba e-University」では、「自立・自律型の人材育成」や、「東芝の良きDNAの伝承」と「新しい風土・文化創出」などを目指し、以下のような社員の育成支援活動を行っています。

社員の育成のための個人別サイト『My Study Room』の運営

Toshiba e-University」では、社員一人ひとりに育成責任者を定めています。各社員のデータは、個人別サイトである「My Study Room」から確認が行えるため、育成責任者は自身の受け持つ社員の能力を正しく把握することができ、一人ひとりに見合った、スキルアップ、パフォーマンスの向上への指導を行うことが可能です。

コンピテンシー強化施策

コンピテンシーとは、「好成績者(ハイパフォーマー)が、継続的に成果を生み出すための行動特性」を指す言葉です。「Toshiba e-University」では、「コンピテンシー評価」「強化育成」「改善効果測定」の3つのサイクルを回すことで、社内全体のコンピテンシー強化に努めています。

パフォーマンス支援

Toshiba e-University」では、一人ひとりのスキル到達レベルに関わる履歴を人材データとして管理しています。この人材データに基づき、実践から得たノウハウやソリューションを共有しやすい環境づくりを支援することで、社員一人ひとりが、能力や可能性を最大限に発揮できる職場を実現します。

参考:東芝デジタルソリューションズ|Toshiba e-Unversity (toshiba-sol.co.jp)

富士通株式会社「FUJITSUユニバーシティ」

富士通株式会社は、「プロフェッショナル人材の層を強化・拡充するとともに、将来に向け富士通グループならびに業界をリードするビジネスリーダーなど高度人材の育成」を目的とした「FUJITSUユニバーシティ」を20024月に設立しました。「FUJITSUユニバーシティ」では、人材育成のフレームワークとして、以下のような取り組みを実施しています。

  • 選抜教育・サクセッションプラン:次世代ビジネスリーダーの育成向け、選抜教育と実践経験を組み合わせた計画的な育成の実施
  • プロフェッショナル認定制度:コンサルタント・プロジェクトマネジャーなどのプロフェッショナル認定制度を設立
  • 人事制度との連動 :「FUJITSUユニバーシティ」での研修を、等級昇級や目標管理と連動させる
  • キャリアマネジメントサービスの強化:社員自身の持つキャリアプランを支援するため、キャリアマネジメントサービス(キャリアデザイン、キャリアカウンセリング、職場マネジメント支援)を拡充

参考:「FUJITSUユニバーシティ」の設立- FUJITSU Japan

日本マクドナルドホールディングス株式会社「ハンバーガー⼤学」

マクドナルドの運営するコーポレートユニバーシティである「ハンバーガー大学」は、世界9ヵ所に設立されており、その内の1つが東京にあります。東京にある「ハンバーガー大学」では、年間1万人以上の社員とクルー(パート・アルバイト)が、「リーダーシップ」や「チームビルディング」「マネジメント」を学ぶ以下のような授業を受講しています。

  • シフトリーダーシップトランジション(SLT):基本的なリーダーシップスキルを学ぶコース
  • イントロダクショントゥデパートメントマネジメント(IDM):役割と責任を担うリーダーシップスキルを学ぶコース
  • レストランオペレーションリーダーシッププラクティスコース(RLP):リーダーシップ、チームビルディング、総合マネジメントを学ぶコース

また、上記のコースをすべて受講した後にも、さまざまな教育コースが用意されており、常に学び続ける環境が提供されています。

参考:人材育成(ハンバーガー大学) | 仕事/キャリアを知る | 日本マクドナルド株式会社

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン(CCUJ)

コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、20207月にコーポレートユニバーシティである「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン」を設立しました。「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン」では、「持続的な成長に向け、変革を強力に推進するリーダーを育成し、飲料ビジネスに新たな価値を生み出すことで、コカ・コーラシステムの価値を高めること」を目的として、「部門長級」「所属長級」「一般職リーダー級」の3つの各階層に応じたプログラムを提供しています。研修プログラムでは、「イノベーション」「戦略的思考」「ピープルマネジメント」「エフェクティブコミュニケーション」「グロースマインドセット」の5つのリーダーシップスキルを学ぶことで、変革リーダーとしての成長を促します。

参考:キャリア開発・研修|キャリア採用サイト|コカ・コーラ ボトラーズジャパン

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あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.リーダーシップ研修

リーダーシップ研修のアクティビティ「グレートチーム」では、チームの運営を疑似体験することでリーダーシップやマネジメントを学びます。

学びのポイント

  • メンバーのリソース管理や育成、リーダーとしての決断を繰り返すことで、いろいろなリーダーシップの型を知ることができる
  • 現代に合わせたリーダーシップの発揮の必要性を知り、⾃分らしいリーダーシップを学べる

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2.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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3.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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4.OODA LOOP研修

OODA LOOP研修では、瞬間的な判断力が求められる運動系のアクティビティである「サバイバルゲーム」または「チャンバラ合戦」を実施することで、意思決定のフレームワークである「OODA LOOP」を実践的に習得することを目指します。

学びのポイント

  • 敵チームをよく観察して作戦を練り、状況に応じた行動を素早く判断しながら、チームで共有して一体となって行動する
  • ミッションの勝利条件をもとに、観察、判断、行動を繰り返すことで、本当にすべき行動が何なのか、行動の最適化を行う

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まとめ

人材不足が懸念される今後の社会において、コーポレートユニバーシティは、優秀な社員を確保するために非常に有用な取り組みです。また、コーポレートユニバーシティの導入は、企業だけにメリットがある取り組みではなく、従業員にとっても、自身のキャリアアップやモチベーション向上などにつながるメリットが存在しています。

コーポレートユニバーシティの設立は、多大なコストが掛かるといったデメリットも存在しますが、「従業員全体のスキル向上」や「次世代リーダー育成」など、大きなメリットを生み出す可能性を秘めています。今後の企業における長期的な成長には、コーポレートユニバーシティを活用した戦略的な人材育成が重要なポイントとなっていくでしょう。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。
アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。
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この記事の著者

あそぶ社員研修編集部

あそぶ社員研修は、企業の研修担当者向けのお役立ち情報を発信するメディアです。研修に関するノウハウ、組織・人材開発の手法、ビジネススキルなどをわかりやすく紹介します。

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