アクションラーニングとは?アクティブラーニングとの違いや実施手順を紹介

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アクションラーニングとは、現実の問題の解決に取り組みながら、個人のスキルや組織の問題解決力の向上を図る学習法です。

仕事を進めていると、さまざまな問題が発生します。アクションラーニングを実施することで、現在直面している問題を解決できるだけでなく、同時に社員個人の問題解決力やリーダーシップ力の向上といった効果も期待できます。

本記事では、アクションラーニングとは何か、注目されている背景や、得られる効果、アクションラーニングの6つの要素と実施手順、実施する際の注意点について、わかりやすく解説します

 

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アクションラーニングとは

アクションラーニングとは、グループで現実の問題に対する解決策を考え、実際の行動とリフレクション(振り返り)を通じて、個人・組織の学習する力を向上させるという学習法です

特定非営利活動法人日本アクションラーニング協会は、アクションラーニングを、少人数のグループで現実の問題解決に取り組み、内省することで学習していく「プロセス」であり、そのプロセスが生じる場を生み出す「プログラム」でもあると定義づけています。

参考:アクションラーニングとは | NPO法人 日本アクションラーニング協会

アクションラーニングを実施することで、現在抱えている問題の解決と、個人および組織の成長を同時に実現することができます。

レグ・レバンスの考え方

アクションラーニングを考案したのは、イギリスの物理学者であるレグ・レバンスという人物です。1930年代に、アクションラーニングの雛形を作ったといわれています。

レグ・レバンスは、「学習(Learning)=プログラムされた知識(Programmed knowledge)+洞察力を伴う質問(’insightful’ Questions)」であると述べています。

プログラムされた知識(P)とは、本や講義などの体系的な学習を通じて伝達されるものを指し、洞察力を伴う質問(Q)とは、適切なタイミングでなされる現実の問題に関する質問のことをいいます。プログラムされた知識(P)だけでは、問題の本質を見極めるのに時間がかかることもあります。また、学習のニーズを満たすのにも不十分です。しかし、マネジメント学習においては、知識の獲得に重きが置かれすぎているとレグ・レバンスは主張しました。

レグ・レバンスが考えるアクションラーニングの学習プロセスは、洞察力を伴う質問(Q)が中心です。自分の行動を深く考えることができなければ、プログラムされた知識(P)から得られる学びは少なく、単に行動を起こすだけでなく行動から学ぶことが重要であると、レグ・レバンスは述べています。

参考:レグ・レバンスアクションラーニング | 世界のビジネスプロフェッショナル 思想家編 | ダイヤモンド・オンライン

アクションラーニングはアクティブラーニングの一つ

アクティブラーニングとは、一方向的な講義形式の教育ではなく、受講者も「話を聞く」以上の形で参加しながら学ぶ学習法のことで、日本語では「能動的学習」と呼ばれていますアクションラーニングも、このアクティブラーニングの技法の一つです。

参考:筑紫女学園大学リポジトリ – アクションラーニングの有効性(大橋健治)

アクティブラーニングは、2020年度からスタートした学習指導要領に盛り込まれたことで注目度が高まっており、学校の授業だけでなく企業研修にも取り入れられるようになってきています。

 

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アクションラーニングが注目される背景

グローバル化やIT化により、ビジネス環境は速いスピードで変化し続けており、組織が抱える問題も複雑になってきています。これからのリーダーには、目まぐるしく変化する環境に対応しながら、組織の問題を解決できる力が必要です。現実の問題を扱うアクションラーニングは、リーダーに求められる対応力や問題解決力を養うのに効果的であるため、次世代リーダーを育成するための方法として注目されています

リーダーシップを開発する方法の一つにケーススタディがありますが、ケーススタディは過去の事例から最適な答えを見つけるというものです。対してアクションラーニングは、組織が現在直面している課題や問題を扱うため、未来の答えを導き出す力が身につきます

さらに、アクションラーニングはグループで問題の解決に取り組むものなので、コミュニケーションスキルや協調性といったソフトスキルも伸ばすことができるでしょう。

アクションラーニングの効果

ここからは、アクションラーニングを実践することで、具体的にどのような効果が得られるのかを解説します。

個人の成長につながる

アクションラーニングは、グループでの話し合いやリフレクションを重視するため、メンバー同士のコミュニケーションが欠かせません。アクションラーニングを通して、社員個人の質問力、聴く力、情報共有力、共感力といったコミュニケーションスキルの向上が期待できるでしょう。また、メンバーの意見をヒントに自分一人では浮かばなかったアイデアが浮かぶこともあるかもしれません。問題に対する解決策を考える中で、発想力や思考力なども磨かれます

このように、アクションラーニングを実施することで、社員個人の能力を伸ばすことができます。先ほどもお伝えしたとおり、リーダーシップの開発にも有効です。

さらに、アクションラーニングで実際に問題が解決できれば、大きな達成感が得られます。結果、仕事に対するモチベーションも向上し、さらなる成長が期待できます。

組織の問題を解決できる

アクションラーニングは現実の問題を扱うため、人材育成をしながら実際に問題を解決することができるというのが大きなメリットです。グループで協力してさまざまな視点から解決策を考え、問題にアプローチしていく中で、チームにまとまりが生まれます。すると、実際の業務で新たな問題に直面したときも、社員同士で協力して解決できるようになるでしょう。

また、アクションラーニングに繰り返し取り組んでいくことで、社員が自ら問題を見つけ、自発的に解決に取り組めるようになるといった効果も期待できます。このように、アクションラーニングを実施することで、個人だけでなくチームや組織全体の問題解決力も向上するでしょう。

チームビルディングにつながる

チームビルディングとは、一人ひとりが能力を十分に発揮しながら全員で目標を達成できるような、強いチームをつくるための取り組みのことです。ただ複数人が集められた「グループ(集団)」から、共通の目標に向かって進む「チーム(組織)」へ変えていく取り組みともいえるでしょう。

アクションラーニングを実践することで、「メンバーと協力して一つの問題を解決する」ということを体験できます。アクションラーニングのプロセスを通して、団結力や心理的安全性が高まり、グループからチームへ変えていくことができるでしょう。

また、アクションラーニングでは、同じチームや部署のメンバーだけでなく、問題解決のために他部署の社員ともコミュニケーションをとる必要が出てきます。アクションラーニングを実施することで、部署間のコミュニケーションが円滑になる、組織全体にまとまりが生まれるといった効果も期待できるでしょう。

アクションラーニングの6つの要素

アクションラーニングには6つの要素があり、これらの要素が揃っていないと効果は半減するともいわれています。アクションラーニングを実施する際は、以下の6つの要素がうまく組み込まれたプログラムを設計することが重要です。

  1. 問題(組織にとって重要で、かつ緊急度が高い問題を選ぶ。)
  2. チームまたはグループ(1グループの人数は48人、できるだけ多様なメンバーを集める。)
  3. 質問とリフレクションのプロセス(話し合いは質問を中心に進める。)
  4. 問題解決に向けた行動(問題の解決策を考え、実際に行動に移す。)
  5. 学習へのコミットメント(問題の解決と、個人・組織の成長の両方を重視する。)
  6. アクションラーニングコーチ(指導および学習の場をつくるサポート役を置く。)

アクションラーニングコーチとは

アクティブラーニングで、メンバーに学習と問題解決を同時に促すために置かれるのがアクションラーニングコーチです「ALコーチ」や「ALC」と呼ばれることもあります。アクションラーニングコーチは、プロセスを観察し、セッションに適切に介入しながら、問題解決をサポートする存在です。

アクションラーニングコーチには、質問スキルやリフレクションスキルなど多くのスキルが求められます。これらは、次世代のリーダーに求められるスキルでもあります。

アクティブラーニングを実施する際は、必ずアクションラーニングコーチを配置しましょう。この存在がなければ、一般的な問題解決手法と変わらなくなってしまいます。

アクションラーニングの実施手順

ここからは、アクションラーニングの実施手順を詳しく紹介していきます。アクションラーニングは、以下の流れを繰り返し実施していきます。

  1. 事前準備
  2. アクションラーニング開始
  3. 問題の再定義
  4. 目標設定と行動計画作成
  5. 振り返り

プロセスごとに、やるべきことを詳しく解説します。

1.事前準備

まずはグループ分けです。1グループあたりの人数が多すぎると、発言できないメンバーが出てきたり、意見がなかなかまとまらず話し合いが進まなくなったりする可能性がありますので、1グループは4~8人程度としましょう。また、さまざまな視点から問題にアプローチできるように、できるだけ多様なメンバーを集めるのが望ましいです。

そして、全員が「チーム」として取り組むための意識づけのとして、以下の3つのことを行います。

(1) 役割分担

参加者を以下のいずれかに分けます。社内にアクションラーニングコーチに適した人物がいなければ、外部にコーチを依頼することもできます。

  • アクションラーニングコーチ
  • 問題を提示する人
  • それ以外のメンバー

(2) 2つの基本ルールの確認

アクションラーニングには、2つの基本ルールがあります。アクションラーニングを始める前に、参加者全員にこの基本ルールを伝え、共有できたか確認しましょう。

  • 質問を中心に進める
    意見を述べるのは、基本的には質問に回答するときに限ります。
  • 振り返りの時間を設ける
    振り返りの時間を設け、アクションラーニングコーチはいつでもセッション(議論)に介入できることとします。

(3) 規範の設定

グループ内での規範を設定します。たとえば、セッションの守秘義務やコミットメント、基本姿勢などです。グループの規範はセッションごとに独自に設定できますが、必ずメンバー全員の同意を得たうえで決定しましょう。

2.アクションラーニング開始

準備が完了したら、いよいよアクションラーニングスタートです。まずは、問題提示者がメンバーに対して問題を23分で説明します。

とはいえ、いきなり「23分で問題を説明して」といわれても、難しく感じてしまう人が多いと思います。ここで、アクションラーニングコーチの介入が欠かせません。アクションラーニングコーチは、問題提示者に「問題を一言で表すとどうなりますか?」のような質問を投げかけ、メンバーが提示された問題を理解できるようにサポートします。

そして次は、問題を明確にするための質問タイムに移ります。メンバーが問題提示者に質問をする時間です。良い質問が出れば、アクションラーニングコーチは振り返りを促します。

3.問題の再定義

問題を明確にするための質問がある程度出たあとは、メンバー全員で問題の再定義を行います。この段階でも、質問と振り返りを繰り返します。メンバー全員が納得したうえで再定義することが重要です。

4.目標設定と行動計画作成

問題を再定義できたら、その問題の本質を解決するために、目標と設定して、それを達成するための行動計画を作成します。この段階でも、重要なのはやはり質問です。アクションラーニングの考案者であるレグ・レバンスは、アクションラーニングに参加するメンバーは以下のような質問を意識すべきであると提案しています。

  • 自分たちは何を実現しようとしているのか。
  • 自分たちが実現しようとしていることに対して、障害になっているものは何か。
  • その障害に対して、自分たちは何ができるのか。
  • この問題についてよく理解している人は誰か。
  • この問題を心から解決したいと思っている人は誰か。
  • この問題に対応する力があるのは誰か。

5.振り返り

最後に、アクションラーニングコーチが中心となり、510分かけてセッション全体の振り返りを行います。振り返りまで終了したら、次回グループで集まる日程を決め、メンバーはそれまでに行動計画で決めたことを実行します。

この5つのプロセスを繰り返していくというのが、アクションラーニングの基本的な進め方です。次回のセッションは、行動の報告からスタートすることになります。

アクションラーニングを実施する際の注意点

アクションラーニングは現実の問題を扱うため、どうしても初めは責任の追及になりがちです。アクションラーニングでは、「誰のせいでこの問題が発生しているのか」ではなく、問題を明確にしたうえで、「解決するにはどうすればいいのか」という話し合いをすることが大切です。そのために、アクションラーニングを実施する際は、アクションラーニングコーチを必ず配置しましょう。話し合いの中で責任の追及が始まってしまったとしても、アクションラーニングコーチがいれば、速やかに話を軌道修正してくれます。

そして、そのアクションラーニングコーチには、質問スキル、リフレクションスキル、論理的思考力など、さまざまなスキルが求められます。アクションラーニングコーチの養成講座や研修などを行っている研修会社もありますので、社員には必要なスキルを身につけてもらってからアクションラーニングコーチを任せるようにしましょう。アクションラーニングコーチに適した人材が社内にいない場合は、外部の研修会社から派遣してもらうのも一つの方法です。

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あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティ・振り返り・講義をブリッジすることで学びを最大化させ、翌日から業務で活かせる知識・スキルが身につく講義・アクティビティ一体型の研修プログラムです。

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以下では、講義・アクティビティ一体型の研修テーマの例を紹介します。

1.PDCA研修

PDCA研修のアクティビティ「ロケットPDCAチャレンジ」では、パーツを組み合わせてロケットを制作し打ち上げ結果から原因を考えて、より良く飛ぶロケットに改善していき、目標の達成を目指します。

学びのポイント

  • 計画を立ててロケットを飛ばし、その結果から組み合わせの誤り・部品の不足・不良部品の有無を推察し、それを繰り返すことで組み合わせの精度を上げていく
  • 資金稼ぎ・パーツの選択・打ち上げの準備を繰り返し、作戦タイム振返りを経て行動を改善していくことで、最適化されていく

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2.ロジカルシンキング研修

ロジカルシンキング研修のアクティビティ「リアル探偵チームビルティング」では、チームに配られた断片的な情報を取捨選択し、論理パズルを完成させ、全問正解を目指します。

学びのポイント

  • 小グループで得られた情報を論理的に整理し、確定情報・曖昧情報・不要な情報を選り分ける
  • 大グループで全体に必要な情報を論理的に判断・共有することや、自分たちに足りない情報を聞き出すことが求められる。

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3.クリティカルシンキング研修

クリティカルシンキング研修のアクティビティ「混乱する捜査会議からの脱出」では、推理ゲームで論理的に情報を整理するなかで証拠の違和感に気づき、仮説立てや検証を行って目標を達成します。

学びのポイント

  • 証拠品や証言など多くの情報を手分けして読み、組み合わせて論理的に結論を導き出す
  • フェーズが進むごとに情報が増え、複雑になっていくなかで必要な情報を取捨選択する
  • 出た結論に満足せず、常に新しい情報と照らし合わせて再検証する

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4.合意形成・アサーティブコミュニケーション研修

合意形成・アサーティブコミュニケーション研修のアクティビティ「コンセンサスゲーム」では、危機的な状況下でどの物資を優先して確保すべきかをチーム内で議論し、最適な結論を導きます。

学びのポイント

  • 各々が個人ワークで考えた答えを聞くことで、チームメンバーの状況に対する認識や物資の重み付けの違いを受講者が理解する
  • 話し手は自分の答えにいたった理由を論理的・説得的に説明する
  • より良い根拠を導き出すための比較検討をして、チーム全員が納得する結論を出す

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まとめ

グループで現実の問題解決に取り組む、アクションラーニングという学習法について解説しました。アクションラーニングは、話し合いやリフレクションに重きを置いているため、社員同士のコミュニケーションも自然と活発になります。また、「メンバーと協力して一つの問題を解決する」ということを体験できるため、チームビルディングにもつながります。過去の事例を扱うケーススタディとは違い、現実の問題解決に取り組むことで未来の答えを導き出す力が養えるため、リーダーシップを開発するための方法としても注目を集めています。

アクションラーニングを実施することで、組織が抱えている問題の解決と、社員個人と組織の成長を同時に実現できます。変化の激しい時代を勝ち抜いていくため、アクションラーニングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

あそぶ社員研修」は、受講者全員が没入して取り組むアクティビティと専門講師の講義・振り返りをブリッジすることで、翌日から業務で活用できる知識・スキルが身につく研修プログラムです。

アクティビティが受講者の主体性を高めてコミュニケーションを促進させ、スキルアップやチームビルディングをはかれます。

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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