アンコンシャスバイアスとは?具体例や解消法を紹介

  • 組織・人材開発

人は、誰しも「アンコンシャスバイアス」を持っています。これにより、気づかないうちに相手を傷つけてしまったり、企業にも良くない影響を与えてしまったりすることがあります。

本記事では、アンコンシャスバイアスとは何か、代表的な例と、アンコンシャスバイアスがもたらす影響、アンコンシャスバイアスを解消するために個人と企業ができることを、わかりやすく解説します

 

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アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアス(unconscious bias)を直訳すると、「無意識の偏見」となります。ほかにも、「無意識の思い込み」や「無意識のバイアス」などと表現される場合もあります。

たとえば、次のようなことを自分で思ったり、誰かに言われたりした経験はありませんか?

  • 血液型がA型の人は、真面目で几帳面な性格だ。
  • 男性は外で働き、女性は家庭を守るべきだ。
  • 最近の若い人は仕事よりもプライベートを重視する。
  • お年寄りは頭が固い。
  • 日本の製品は品質が良い。

私たちは自分でも気がつかないうちに、人やモノなど特定の対象に対して、このような偏った見方や考え方をしてしまうことがあります。これが、アンコンシャスバイアスです。

誰もがアンコンシャスバイアスを持っている

アンコンシャスバイアスは、誰のなかにでも存在しています人の脳が、そのようなつくりになっているからです

人の脳は、無意識と意識の2つの思考パターンで情報を処理しています。無意識の思考パターンとは、いわゆる直感で判断するようなパターンです。情報の99%は、この無意識の思考パターンで処理されているといわれています。意識の思考パターンとは、情報をじっくり分析して、論理的に判断するようなパターンです。これにより処理される情報は、わずか1%ほどだといわれています。

そして、人は多くの情報を素早くかつ効率よく処理するために、持っている知識や経験を基に判断を下すことがあります。これが、バイアス(偏見)です。

バイアスがあると、多くの情報をスピーディーに処理することができますが、判断の「質」はどうしても低くなります。時には、間違った判断をしてしまうこともあるかもしれません。しかし、バイアスがまったくないと、情報に溢れる現代社会のなかを生き抜いていくことは難しいでしょう。

このように、アンコンシャスバイアスは誰もが持っているものであり、それ自体は良いものでも悪いものでもありません。バイアスに委ねて良い状況もありますが、無意識のバイアスに気づけないままだと、さまざまなネガティブな影響がもたらされる可能性もあります。まずはアンコンシャスバイアスへの理解を深め、自分のなかのアンコンシャスバイアスに気づけるようになりましょう。

アンコンシャスバイアスが注目されている理由

近年、アンコンシャスバイアスの注目度が高まっている理由としては、「日本企業にもダイバーシティが求められるようになってきたこと」が挙げられるでしょう

ダイバーシティ(diversity)は、「多様性」を意味する英単語です。経済産業省は、「多様な人材を生かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」をダイバーシティ経営と定義し、これを推進しています。

参考:ダイバーシティ経営の推進 (METI/経済産業省)

アメリカでは、古くからダイバーシティを推進してきましたが、2000年前後からその進捗が鈍化していきます。この要因を明らかにするために、さまざまな研究が行われました。そして、アンコンシャスバイアスがダイバーシティ推進の阻害要因の1つになっていることがわかったのです。

多様な人材を集めても、アンコンシャスバイアスが存在していては、ダイバーシティは実現できません。そのため、日本においても、ダイバーシティを実現するために、アンコンシャスバイアスの解消に取り組む企業が増えているようです。

参考:「アンコンシャス・バイアス—無意識の偏見— とは何か」(著者:パク・スックチャ / 出版社:インプレス / 発売:2021年)

アンコンシャスバイアスの代表的な例

人が持つアンコンシャスバイアスの種類は200以上もあるといわれています。そのなかから、代表的な例を紹介しましょう。

確証バイアス

確証バイアスとは、無意識に自分が持つ偏見や思い込みを肯定する情報ばかりを見てしまう、集めてしまうというバイアスのことです

たとえば、「血液型がO型の人=おおざっぱな性格」というイメージを持っており、相手のおおざっぱな面ばかりに目が行ってしまうというようなケースです。

確証バイアスが働くと、無意識に「自分は正しい」という確信を持ってしまいます。すると、自分と異なる考えや意見を聞こうとしなくなったり、自分の考えが間違っていることを示す情報が出てきても、考えを変えることができなくなったりする可能性があります。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、周りの状況が変わったり、自分に危機が迫っていたりしても、「正常の範囲内だから大丈夫だろう」と思い込んでしまうバイアスのことです

たとえば、災害が発生して自分が住んでいる地域に避難指示が出されているのに、「うちはきっと大丈夫」と、状況を過小評価してしまったり、根拠もないのに自分を過信してしまったりするケースが該当します。

正常性バイアスが働くと、状況が変わっているのに危機感が持てず、対処が遅れてしまうかもしれません。また、問題を「自分ごと」に感じられず、他人のせいにしてしまうこともあります。

ダニング・クルーガー効果

ダニング・クルーガー効果とは、能力や経験値が低い人が、自分のことを正しく評価できず、過大評価してしまうことをいいます

たとえば、新しいことを少し勉強しただけですべてを理解した気になってしまう、自分の能力を過信して能力以上の仕事を引き受けてしまうといったケースです。

ダニング・クルーガー効果が生じると、周りの人からの意見やアドバイスを謙虚に受け止められなくなります。また、本当の自分に目を向けられないため、成長することもできません。

さらに、ダニング・クルーガー効果により、自分だけでなく周りにも間違った評価を与えてしまうことがあります。過大評価した自分と比較して周りを過小評価してしまったり、逆に自分と同じく過大評価してしまったりする恐れがあるのです。

インポスター症候群

インポスター症候群とは、ダニング・クルーガー効果の逆で、高い能力を持っているのにもかかわらず、自分のことを過小評価してしまうことをいいます。この状態に陥ると、能力が高いことを示す十分な根拠があるのに、「今回はたまたま成果につながっただけ」「自分が優秀なのではなく、周りの人が助けてくれたおかげ」などと考えてしまうのです。

英単語のインポスター(imposter)には、「詐欺師」の意味があります。インポスター症候群に陥ると、自分のことを評価してくれる人がいても、その人のことを詐欺師のように感じてしまいます。さらに、チャンスを与えられても、自分はそれに挑戦できるレベルに達していない、条件がそろっていないなどと感じて、せっかくのチャンスを逃してしまうこともあります。

このインポスター症候群は、女性が陥りやすい傾向があるといわれています。

ステレオタイプ

ステレオタイプとは、「性別」や「国籍」といった属性や、ある対象の特徴的な一部分に対する先入観や固定観念のことです。ステレオタイプによるバイアスが働くと、先入観や固定観念で、その対象全体を判断してしまいます。

たとえば、冒頭で挙げた「男性は外で働き、女性は家庭を守るべきだ」というのは、性別の役割に関するステレオタイプです。日本では、未だにこのような性別の役割に関するステレオタイプが社会全体に存在しており、これが男女共同参画の取り組みの進展を妨げる1つの要因になっているといわれています。

職場のなかにステレオタイプが存在していると、従業員の成長やキャリアにも影響を及ぼす可能性があります。

ステレオタイプ脅威

ステレオタイプ脅威とは、自分の属性に対する偏見や固定観念を意識するあまり、ステレオタイプどおりに変化してしまうという現象です

たとえば、親から「女性なら理系より文系に進むべき」と言われているうちに、実際に理系よりも文系の成績が良くなっていくというようなケースです。

ステレオタイプ脅威が生じると、無意識のうちに自分にブレーキをかけてしまい、本来のパフォーマンスが発揮できなくなってしまう可能性があります。

集団同調性バイアス

集団同調性バイアスとは、無意識に周りの意見に合わせてしまう、周りと同じように行動してしまうというバイアスです

たとえば、チームの自分以外のメンバーが「YES」と言っているので、自分もなんとなく「YES」と言ってしまうというケースです。また、周りのメンバーが間違った行動をしているのに、自分も同じ行動をとってしまったり、間違った行動をしていることにすら気づけていなかったりすることもあります。

集団同調性バイアスが働くと、これが圧力となって、自分で物事を考えられなくなったり、すぐに判断・行動できなくなったりする恐れがあります。

アンコンシャスバイアスがもたらす影響

ここからは、アンコンシャスバイアスが企業にもたらす可能性がある「悪い影響」にはどのようなものがあるのか、詳しく解説していきます。

ダイバーシティ推進が阻害される

先ほどお伝えしたように、アンコンシャスバイアスはダイバーシティ推進の阻害要因の1つであることが、さまざまな研究により明らかになっています

ダイバーシティとは、多様な人材をただ集めれば良いというわけではありません。それぞれの考え方や能力を最大限生かすことで、イノベーションが生まれやすくなり、これが企業の競争力を強化することにつながるのです。多様な人材を集めても、アンコンシャスバイアスがあるままでは、イノベーションを生み出すことは難しいでしょう。

公正な評価や判断ができなくなる

たとえば、採用面接においては、面接官が自分と共通点がある人(出身校が同じなど)に好感を持つ、候補者の特定の部分だけを見て「こういう性格だろう」と判断するなど、バイアスが採否に影響を与えることがあります

また、人事評価でバイアスが働くと、評価が低い部下の「悪いところ」や「できないこと」を証明するような情報ばかりを集め、その部下の評価がどんどん下がるといった事態になりかねません。

これらの結果として、採用ミスマッチにより定着率が下がる、人材が育たなくなるといった影響が出る恐れがあります。

職場の人間関係が悪くなる

アンコンシャスバイアスは、言葉や態度にあらわれるものです。自分のなかのアンコンシャスバイアスに気づけないままでいると、無意識に相手を傷つけてしまうことがあるかもしれません

職場内のアンコンシャスバイアスを放置すれば、人間関係が悪化する恐れがあります。すると、従業員の仕事に対するモチベーションが下がったり、十分なパフォーマンスを発揮できなくなったりすることもあるでしょう。さらに、無自覚のハラスメントが発生し、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすリスクもあります。

企業イメージが低下する

ダイバーシティ推進の取り組みが、企業のイメージや評価につながる時代となっています。職場内のアンコンシャスバイアスの存在に気づけないでいると、思わぬ形でそれが外部に伝わり、企業イメージに悪影響を及ぼす恐れがあります。「コンプライアンス意識が低い企業」というイメージを持たれてしまわないよう、アンコンシャスバイアスの解消に取り組んでいきましょう。

アンコンシャスバイアスを解消する方法

では、アンコンシャスバイアスを減らすためにはどうすればよいのでしょうか。最後に、従業員個人と企業、それぞれができる取り組みを紹介します。

従業員個人ができること

まずは、一人ひとりが自分のなかにあるアンコンシャスバイアスに気づくことが大切です。自分のモノの見方や考え方の癖・偏りを知るために、12週間気づいたことをメモしてみてはいかがでしょうか。

たとえば、アンコンシャスバイアスが働くと、決めつける・押しつけるような言い方になりやすいです。「普通は〇〇でしょう」「絶対〇〇に決まっています」などの言い方をしてしまったら、メモをとり、自分のなかのアンコンシャスバイアスの存在を疑ってみましょう。

それから、相手の表情や態度の変化も、注意したいポイントです。コミュニケーションをとるなかで、急に相手の表情が暗くなった、声のトーンが低くなったなどの変化が見られれば、アンコンシャスバイアスにより相手を傷つけてしまった可能性があります。このような場合も、自分のなかのアンコンシャスバイアスの存在を疑いましょう。そして、相手に対するフォローも忘れないようにしてください。

ほかにも、自分の意見に反論されてイライラしたのなら、無意識のうちに「自分が正しい」と思い込んでいるのかもしれません。「Z世代の人は〇〇という特徴がある」というようにカテゴライズしている場合も、アンコンシャスバイアスの存在が疑われます。

アンコンシャスバイアスは、無意識に言葉や態度にあらわれます。まずはそれぞれが、気づこうと意識することが重要です。

参考:UNCONSCIOUS BIAS – 内閣府男女共同参画局(PDF)

企業ができること

アンコンシャスバイアスを減らすために、研修を実施しているものの、あまり効果が得られていないというケースも少なくありません。それは、研修がアンコンシャスバイアスについての知識の習得と、自分のアンコンシャスバイアスに気づく方法を学ぶだけの内容になっているためです。アンコンシャスバイアスを減らすためには、そこからさらに行動を変える方法を知り、実際に行動を変えていく必要があります。アンコンシャスバイアスの知識や気づき方を伝えるだけでなく、どのように行動を変えられるか話し合う機会をつくる、最適な対応を紹介するなど、研修の内容も工夫してみましょう。

また、行動変容を促すには、研修を実施するだけでなく、仕組みや環境を整えることも大切です。具体的には、全社的な戦略を設定してダイバーシティ推進にコミットする、データや情報を集めて現状を可視化し、取り組みの効果を検証するなどの対応も必要です。

参考:令和4年度産業経済研究委託事業(ダイバーシティ経営推進に向けたアンコンシャス・バイアス研修のあり方と効果測定指標等に関する調査)|経済産業省(PDF)

まとめ

アンコンシャスバイアスは、誰もが持っているものであり、それ自体は良いものでも悪いものでもありません。しかし、自分のなかのアンコンシャスバイアスの存在に気づけないままでいると、個人にも企業にも、悪い影響がもたらされることがあります。

アンコンシャスバイアスを解消するには、まずは一人ひとりが、自分のなかのアンコンシャスバイアスに気づくことが大切です。しかしそれだけでは、職場のなかからアンコンシャスバイアスを減らすことはできません。全社的にダイバーシティを推進してく体制を整え、研修を実施するなら、行動変容につながるよう、内容を工夫してみてください。

 

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この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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