ダブルループ学習とは?具体例や有効なフレームワークを紹介

2023.09.28
  • 学習法
    • PDCA

日々の業務を進めていくなかで、ロジックにもとづいて改善を続けているのに、あまり改善されず、効果が出ないと感じることはないでしょうか。

それは前提としている既存の取り組み方や目的自体に問題があるのかもしれません。そうはいっても「今までやってきたことだから」と長く続けていることや、「それしかできないから」と思い込んでいることほど、やめることは難しいものです。

しかし、そういった前提にとらわれず、根本から考え直すことで新しいアプローチを生み出すのがダブルループ学習です。ダブルループ学習を用いることで目の前の課題に対処できる、あるいは、そこに課題などなかったことに気づくことができるかもしれません。

本記事では、ダブルループ学習とはなにか、ダブルループ学習が必要な理由、ダブルループ学習を実施するメリット、有効なフレームワーク、成功させるポイントを解説します

 

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ダブルループ学習とは

ダブルループ学習とは、ハーバード大学の教授クリス・アージリスが提唱した概念で、問題が発生したとき、既存の方法や仕組みを捨て、新しいアプローチをしながら問題解決をすることです。発生した問題を対処するだけではなく、これまで正しいと思っていた根本的なところにも目を向け、改革をおこなうことともいえます。

例として「夜間のタスクが終わらない」という問題に対して、「夜更かしをして、時間を費やして終わらせる」という対応方法が挙げられます。しかし、これはあまりに直接的で、効率のよい解決方法とはいえないでしょう。

これをもう少し俯瞰すると「夜間は疲れているので効率が上がらない」と分析でき、「夕方に長めの休憩を入れることで夜間の集中力を高める」という対応方法も挙げられるかもしれません。ただし、これも対処療法的であり、根本的な解決には至っていません。

ダブルループ学習では根本的なところから考えていきます。そもそも「夜間は疲れている」という事実があるのであれば、そもそも本当に夜間にやらなければいけない作業なのか、夜間である必要性はあるのか、といった前提の部分に問いかける必要があります。その結果、「夜間の作業は昔からおこなっているなんとなくの慣習だった」など、必要性が感じられないことがわかれば「能率が悪いため夜間の作業はなくし、代わりに早朝に作業をする」という改革をおこなうことができます。

こうした、ひとつの認識にとらわれず、広い視野で考えることができるのがダブルループ学習の特徴です。

ダブルループ学習の進め方

ダブルループ学習は以下のようなステップで進めていきます。

  1. 問題を明確にし、現状を把握すること。この段階では事実にもとづいた情報を集めるだけでよい。
  2. 前提となる部分に疑問を働きかける。既存の概念にとらわれずに、あるいは棄却して、問題を解決するための新しいアプローチを考える。
  3. 考えたアプローチを実行し、どのような結果が得られたのかフィードバックをおこなう。

これにより、現状の問題点を把握し、根本的な部分から解決することができます。

シングルループ学習との関係

シングルループ学習とは、過去の成功体験に沿って問題解決をすることですダブルループ学習の主題が「適切な課題に取り組めているか」だとすると、シングルループ学習の主題は「課題に適切に取り組めているか」になります。

例として「PDCAサイクル」がシングルループ学習に属します

「PDCAサイクル」とは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)という4つのフェーズを繰り返すことで業務改善をおこなうものです。現在あるものに対し、改善を繰り返すため、質は自然と高まっていきます。

その反面で、根本が変わるわけではありません。問題に対して原因追及することは大事ですが、対処療法的になりやすいことが懸念点になります。先の例でいうと「夜間の作業をやめる」といった方向には向かわないため、根本に問題を抱えている場合は効果が高まりづらく、改革も起きづらいです。

ただし、ダブルループ学習はシングルループ学習を否定するものではなく、この2つを用いていく必要があるとしています。ダブルループ学習により選択肢の幅を広げ、シングルループ学習で質を高めていくことが重要です

ダブルループ学習が必要な理由

「過去にはこれでうまくいっていたから」、「今までおこなってきたことだから」、「決められているから」などの思い込みが強いほど、根本的な問題に目を向けることは難しいものです。

根本を変えることができれば表面的な問題が全て解決できるとしても、根本を変えるということは今後のやり方も変える必要があるため、コストが高く、不安が生じるなど、気軽にはおこないづらいものです。そのため、表面的な問題を取り除くことにとらわれてしまい、改善をすることの繰り返しになってしまいがちです。

しかし、根本はそのままにどれだけの改善を続けたとしても、それらは「効率の悪い構造」に合わせたものにすぎないため、改善幅は徐々に小さくなり、やがて改善自体も難しくなるなど、構造としての限界も早いでしょう。

そうした現状を変え、より新しく、よりよい手法に改革をおこなうためにもダブルループ学習は必要になります

ビジネスにおいてもダブルループ学習を取り入れることで、最初は組織内で変化に対する困惑をまねくこともあるでしょう。しかし、大きな変化への葛藤や心理的な抵抗も必要なものであり、組織の柔軟性、効率性を高め、各人が主体的に意見交換をすることで当事者意識を高めることにもつながります。そうした変化を組織全体で受け入れ、実行できたときに組織としての成長が見込める可能性は高いでしょう。

具体的には、大きな変化を組織一丸となっておこなうことでチームビルディングにつながり、当事者意識が高まることで社員エンゲージメントの向上も期待できます

先行きが見えず、変化の多い現代において企業が柔軟に立ち回るためにも、ダブルループ学習は重要な位置づけにあります

ダブルループ学習のメリット

ダブルループ学習を実践することで得られるメリットを紹介します。

新しい成長につながる

今ある問題点に対して現状を改善していくことはさほど難しいことではありません。しかし、「改善」とは「解決」ではないことは念頭に置かないといけません。先にも述べたように改善だけを続けていても徐々に効果は小さくなってしまうでしょう。

今までおこなっていたものを捨てるのが難しく、固執しがちになるのは一種の思考の癖とも呼べるものです。ダブルループ学習を実践することで、思考の癖の把握と、より現実を認識する力が高まり、意思決定の質も向上します

根本的な部分を見直すということは新しいことへのチャレンジであり、可能性を広げるものです。これまでにない大きな変化を生み出す可能性があり、組織や自分自身に急成長をもたらすこともあるでしょう。

問題に対して臨機応変に対応できる

ダブルループ学習を実践することで視野が広くなり、さまざまな問題に臨機応変に対応できるようになります

定石や過去の成功体験など、既存の方法にとらわれないため、幅広い解決策を考えることにつながるでしょう。

視野が広がることで、見落としも減るため、問題そのものを未然に防ぐことにもつながります。

ダブルループ学習に有効なフレームワーク

ダブルループ学習を円滑におこなうためには視野を広げることが重要です。ここでは視野を広げることに有効なフレームワークを紹介します。

1. リフレーミング

リフレーミングとは、物事に対する見方や考え方を変えることです。このような見方や考え方などの「枠組み」=「フレーム」を変えるため、「リフレーミング」と呼ばれます。

人の体験そのものに意味をもつことはなく、人のもつ感じ方が体験に意味を与えます。わかりやすくいえば「感じ方は人それぞれ」ということです。

たとえば、「締め切りまであと2日」といった状況において、ネガティブに見れば「あと2日しかない」と感じますが、ポジティブに見れば「まだ2日もある」ととらえられます。ほかにも感じ方によって差異が出る例として下記が挙げられます。

  • 失敗した経験を「よくない結果」ととらえるか、「成長するための経験」ととらえるか
  • 目標に達しなかったことを「うまくいかない」ととらえるか、「実現したいことはなにか」と振り返るか
  • 自分の欠点を「短所」ととらえるか、「長所となる部分はないか」と視点を変えて探すか

このように感じ方によって意味が変わるということは、意味を自由に決めることも可能ということです。リフレーミングは、物事に対して自分が感じている以外のとらえ方を探すことともいえます。

リフレーミングの考え方が身につくことで、ダブルループ学習において、根本の部分を疑うスキルにもつながり、リフレーミングによって複数の考え方が見えるようになると選択肢も増えます。正しいと思っていたものも解釈次第で「実はよくないものだった」など認識が変わるケースが見つかるかもしれません。

なお、リフレーミングにおいて、「今ある枠組みをポジティブな意味に変換する」、「リフレーミングで答えを探す」などは主な目的はなく、あくまでも選択肢と可能性の幅を広げることが目的です。

2. 知覚位置の把握

知覚位置とは、物事に対する見方や考え方は眺める位置によって異なることを示すものです

今まであった前提を疑おうとしても、「これは正しいことだ」と思ってしまっていると難しいものです。しかし、それは「自分」という視点を通した価値観であり、ほかの視点であれば「正しさ」が変わることもあります。たとえば、「自分自身」「相手」「第三者」といった三つの立ち位置があれば、それぞれ見える光景は異なるはずです。

たとえば、自分の視点では一生懸命仕事をして、残業もして頑張っていると思っていても、周囲の視点では「残業までして効率が悪い」と悪い評価を受けている可能性があります。また、業績を上げるために全員の業務時間を伸ばすことは組織全体の視点で見れば正しいかもしれませんが、個々の視点で見れば業務時間の増加によって生じる疲労や、プライベートの時間の減少を不満に感じているかもしれません。

このように複数の視点をもつことができれば、視点の数だけ選択肢は増え、正しいと思っていることも別の見方や考え方ができる可能性が高まります。

ここで大事なのは「いずれかの視点が大事なのではなく等価値である」ということです。私たちはこれらの視点のいずれで考えるかを自由に選択できる多角的な視点をもちあわせているという点が大事なのです。

ダブルループ学習を成功させるポイント

ダブルループ学習を成功させるポイントを紹介します。

適応課題と技術課題を切り分ける

ダブルループ学習に取り組むにあたって、根本的な部分に目を向ける必要がありますが、この際に課題の性質を正しく捉えることが重要です。まずは抱えている課題が適応課題であるか、技術課題であるかを切り分けることからはじめましょう。

適応課題とは、自身の物事のとらえ方や周囲との関係性を変えないと解決できない課題を指します。そして、適応課題と対で語られるのは技術課題であり、これは知識やスキルを身につけることで解決できる課題を指します。

この二つの課題を混同してしまうと、根本的な問題を取り違えてしまい、ちゃんと取り組んでいるつもりでも問題解決に向かっていないということも起こり得ます。とくに問題なのが、適応課題であるにも関わらず、技術課題だととらえてしまうことです。

たとえば、「仕事量が多くて捌くのに苦労しているが、周囲の同僚にはその様子がない」といったケースでは本人は「自分の技量の問題である」と技術課題ととらえるケースがあります。しかし、本人の技量だけが問題なのではなく、そもそも仕事の量と適性といった割り振りに問題がある可能性があります。そのため、自分だけで解決しようとするのではなく、仕事を割り振っている上司に相談するなど、本来は周囲を巻き込んで解決すべき適応課題です。

このように技術課題と適応課題を切り分けることで根本的な課題を見つける精度を高めることができ、根本を捉えるというダブルループ学習の思考方法を鍛えるのにも役立ちます

これまでにない目標を設定してみる

ダブルループ学習を実践しようとしても、なかなか既存の方法から脱せないことも多いものです。そのような場合には今ある目標を見直してみることも有効です

既存の目標にとらわれていると新しい意見や考えも出づらくなってしまうほか、そもそもの目標自体に誤りがある可能性もあることは視野に入れておかなければなりません。

そこで、これまでにない目標を設定してみることを考えてみましょう

たとえば、「売上を5倍にする」という目標にすると少しの努力や工夫では難しく、根本から見直す必要が出てきます。また、「多くの同僚から声をかけてもらう」「誰かの仕事を月に10回手伝う」など、売上といった枠組みから外して、より柔軟な目標を立てることで新しい視点を得ることができるでしょう。

意見が交わしやすい環境を作る

組織など複数人で作業をする場合、根本を変えるような意見は提案しづらいこともあるでしょう。今まで組織でおこなっていたことをやめるのは組織全体のリスクにもなり、実行はおろか、提案すらできない雰囲気に陥ることもあります。

そのため、まずは風通しをよく、意見を交わしやすい環境を作ることが重要です

外部の刺激に触れる

組織で動いている、あるいは自分自身だけで考えていると内内で完結してしまい、その気はなくても考えが凝り固まってしまったりして、新たな考えが生まれにくくなるものです。

そのような場合は外部の研修に参加する、他部署と意見を交わすなど、外との交流で刺激をもらうのもよいでしょう。新鮮な経験であれば新しい発想につながり、意見が活発になる可能性が高まります。

まとめ

ここまでダブルループ学習について解説してきました。

どれだけ真剣に目の前の問題に取り組んでいても、どれだけ理屈で問題を片付けようとしても、根本的なところに問題が隠れていれば解決は難しくなります。

ダブルループ学習を実施する際には視野を広げることを重点に置きましょう。視野が狭ければ目の前の壁はとてつもなく大きく感じるかもしれません。しかし、そこから一歩下がってみて視野を広げることで壁は小さくなり、脇から通り抜けられるものになるかもしれません。

意外と目の前の壁を作っているのは自分自身ということもありえます。

ぜひ、ダブルループ学習を実践して、新しい道を見つけていきましょう。

 

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この記事の著者

湯川 貴史

1989年生まれ。趣味でゲームを作ったり、文章を綴ったりの日々。前職はゲーム開発関連に携わる。現在は素敵な妻と、可愛い二人の子どもと共にフリーランス生活を謳歌。

湯川 貴史

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