相互依存とは?言葉の意味、実現までのステップを解説

  • 組織・人材開発

人は、一人では生きていけません。しかし、何か(誰か)に頼りすぎると、自分一人では何もできなくなったり、精神的に不安定になったりすることがあります。家族や恋人、友人、仕事仲間などあらゆる関係において理想的なのは、「相互依存」の関係といえます。

本記事では、まず相互依存とはどのような状態を指すのか、依存や自立、共依存との意味の違いにも触れながら、わかりやすく説明します。そして、相互依存の関係を築くメリット、相互依存へ成長するための『7つの習慣』、相互依存に達するために大切なことについても解説します。

※『7つの習慣』は、フランクリン・コヴィー・ジャパン社(FCJ社)の登録商標です。

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相互依存とは

「相互依存」とは、文字通り「お互いに依存している状態(お互いがいないと成り立たない状態)」を意味する言葉です。しかし、「自立した人同士が協力し合い、一人では生み出せないような相乗効果を生み出せる状態」と説明されることもあります。本記事では、後者の意味を持つ言葉として扱います。

「依存」と「自立」の意味

相互依存について深く理解するために、まずは「依存」と「自立」について詳しく解説します。

依存

「依存」とは、ある人やモノがなければ、または特定の行為をしなければいられない、成り立たないような状態を意味します。「やめたくてもやめられない」ほどの状態になると、「依存症」と呼ばれるようになります。代表的なものに、アルコール依存症、ギャンブル依存症などがあります。そのため、「依存」と聞くとネガティブな印象を持つ人も多いのではないでしょうか。

参考:依存症についてもっと知りたい方へ |厚生労働省

何か(誰か)に「依存」するほどのめりこんだことなんてない、と思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、子どもの頃を思い出してみてください。人は誰でも、子どもの頃は経済的にも物理的にも、また精神的にも、保護者に依存しています。そして成長とともに、その状態から脱して自立していくのです。

しかし、大人になっても精神的に何か(誰か)に依存している人もいます。たとえば、思うような結果が出なかったときに、「あなたのせいでこのような結果になった」と責めるような思考・発言をしてしまう場合は、「あなた」に精神的に依存している可能性があるでしょう。

自立

「自立」とは、簡単にいうと「独り立ちすること」を意味します。誰にも支配されたり助けてもらったりすることなく、自分一人で身を立てることです。具体的には、

  • 保護者の元を離れて、経済的な支援も受けることなく一人で生活する
  • 先輩社員のサポートなく、一人で仕事を進められるようになる

などの状態を、「自立」と表現します。

大人になると、物理的にも、経済的にも、精神的にも自立することが求められます。物理的・経済的には自立できていても、前項で挙げた例のように人のせいにしてばかりの人は、精神的に自立できていないと考えられます。

また、福祉分野では、「自ら判断・決定したことに基づいて主体的に生活を営むこと」、「障害があっても自分の能力を活用して社会活動に参加すること」などの意味として、「自立」という言葉が用いられることもあります。

参考:自立の概念等について – 厚生労働省

相互依存と共依存の違い

「相互依存」という言葉から、「お互いがいないと生きていけない・成り立たない状態」をイメージする人もいるでしょう。冒頭でお伝えしたように、これも間違いではありませんが、このような状態は「共依存」とも呼ばれます。お互いが相手に寄りかかっていて、自分一人では立てないような状態です。

夫婦や恋人、親子でも、共依存の状態に陥ってしまうことがあります。共依存の状態に陥ると、相手を支配しようとしたり、自分を犠牲にしてまで相手に尽くそうとしたりするようになります。本当の相手・本当の自分がわからなくなってしまうこともあります。また、その状態から脱して自立することも、なかなか難しくなります。

これに対して、「相互依存」は、それぞれが一人でも立っていられる(自立している)が、お互いに協力し合うことで、より大きなパワーを生み出せるような状態にあることを意味します。

相互依存の関係を築くメリット

では、周りの人と相互依存の関係を築けるようになると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

自分を含め、周りの人が何か(誰か)に「依存」している場合、仕事で何かミスやトラブルが起きたときに、「〇〇さんがやってくれなかったからできなかった」「〇〇さんのせい」などと、責任を押し付け合うようになるかもしれません。これでは、物事が前に進まないばかりか、職場の雰囲気も悪くなってしまいます。

自分が誰かと「共依存」の状態にある場合、その相手がいないと立てなくなってしまいます。それぞれが自分を犠牲にして、共倒れになってしまう可能性もあります。

自分を含め、周りの人が全員「自立」している場合は、一人ひとりがきちんと仕事をこなし、成果も上げられるでしょう。しかし、自立ばかりを重視すると、自分の範囲外の仕事をしようしなくなったり、協力してやったほうがよい仕事も一人でやってしまったりするようになる可能性があります。これでは、チームワークは生まれません。

人は、誰でも長所・短所があります。周りの人と「相互依存」の関係を築けるようになると、短所を補い合って、一人では難しかったことも実行できるようになります。得られる成果も大きくなるでしょう。また、承認欲求が満たされ、自分に価値を感じられるようになるというメリットもあります。

相互依存へ成長するための『7つの習慣』

スティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』では、人は「依存」から脱して「自立」し、「自立」のさらに先に「相互依存」があるとされています。そして、相互依存に達するために身につけるべき習慣が紹介されています。その習慣が、以下の7つです。

  • 1の習慣:主体性を発揮する
  • 2の習慣:目的を持って始める
  • 3の習慣:重要事項を優先する
  • 4の習慣:Win-Winを考える
  • 5の習慣:理解してから理解される
  • 6の習慣:相乗効果を発揮する
  • 7の習慣:刀を研ぐ

13の習慣は、自分の人生に責任を持ち、求める成果に向けて自分の力を発揮できるようになるためのものです。これが身につくと、「依存」から「自立」へと成長することができます。書籍ではこれらを身につけていくことを、「私的成功」と呼んでいます。

46の習慣は、周りの人と信頼関係を築き、意図的に相乗効果を発揮できるようになるためのものです。書籍では、「公的成功」と呼んでいます。この状態が、「相互依存」にあたります。

そして、第16までの習慣をより高い次元で実践できるように、自分を改善し続けていくのが第7の習慣である「刀を研ぐ」とされています。

相互依存へと成長するために大切なこと

相互依存に達するためには、まずは自立すること、そして周りから信頼を得ることが大切です。それぞれについて、詳しく解説します。

まずは自立する

書籍『7つの習慣』では、依存からいきなり相互依存を実現することはできず、まず第13の習慣を身につけて自立し、そのうえで第46の習慣に進むことが大切だとされています。

たとえば、あなたが忙しくしているときに、同僚から「仕事を手伝いましょうか?」といわれたとします。その同僚が自分の役割もきちんとこなせていないような人であった場合、「この人に任せるのは不安」「まずは自分のことを優先すべき」などと感じてしまいませんか? このように、自立できていないと、人から信頼を得たり、人の役に立ったりすることが難しくなります。相互依存の関係を築くには、まずは自立して、土台を固める必要があるのです。

仕事であれば、まず自分の仕事に責任を持つこと、一人で判断してこなせるようになること、主体的に考えて動けるようになることを目指しましょう。

周りから信頼を得る

信頼できない人と協力し合うというのは、なかなか難しいものです。相互依存への成長を目指すなら、周りから信頼される人になりましょう。

スティーブン・R・コヴィー博士は、お金を銀行に預けてためていくように、信頼もためていくことが大切であると述べています(書籍では、「信頼口座」と呼んでいます)。何かトラブルや誤解が生じても、信頼の残高が十分にあれば、すぐに相手との関係が壊れることはないという考え方です。

信頼の増やし方

では、信頼の残高を増やすにはどうすればいいのでしょうか。どのような言動に対して「この人は信頼できる」と感じるかは人によって違うため、信頼の残高を増やすためには、まずは相手に対する理解を深めることが大切です。相手を理解できていないと、「親切」のつもりで言ったこと・行ったことが、「おせっかい」と感じられてしまうこともあります。

そのうえで、以下のことを普段から意識してみましょう。

  • Win-Win(自分にとっても相手にとっても良い結果)を考える。
  • 誠実な態度で、礼儀正しく接する。
  • 約束は必ず守る。
  • 期待を明確にして、それに応える。
  • 相手がミスや失敗をしたときは、それを許す。
  • 自分がミスや失敗をしたときは、それを認めて心から謝罪する。

また、これとは逆の行為をすると、信頼の残高が減ってしまいます(自分にとってのメリットばかりを考える、約束を破るなど)。せっかく獲得した信頼を失うような言動をしないことも、普段から意識してみてください。

まとめ

7つの習慣』において相互依存は、依存から脱して自立した人が行くことができる、さらに上の段階とされています。それぞれが自立しながらも協力し合うことで、相乗効果が生まれ、より大きな成果が得られるようになるでしょう。相互依存や『7つの習慣』について詳しく知りたい人は、スティーブン・R・コヴィー博士の書籍を手に取ってみてください。

この記事の著者

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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